パンシリーズ3年ぶり復活で、女子アナ王国フジの再建なるか

パンシリーズ3年ぶり復活で、女子アナ王国フジの再建なるか

『クジパン』に抜擢された久慈アナ(フジテレビのHPより)

 フジテレビの久慈暁子アナ(22)の冠番組『クジパン』が7月3日スタートする。起用された久慈アナは今年4月に入社したばかりの新人アナとあって俄然、注目を集めている。フジテレビが新人アナの抜擢でパンシリーズを復活させた狙いとは? コラムニストでテレビ解説者の木村隆志さんが解説する。

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 パンシリーズの復活は3年ぶりであり、新人研修を終えた入社3か月での抜てきは過去最速。異例のスピード起用から「いかに即戦力として期待されているか」が分かります。

 久慈アナは元IBC岩手放送アナウンサーの母を持ち、ファッション誌『non-no』(集英社)の専属モデルや『旭化成グループ2014年キャンペーンモデル』として活躍したほか、プロ野球・大谷翔平選手との熱愛報道もあった文句なしの大器。それだけに、『アヤパン』の高島彩さん、『ショーパン』の生野陽子さん、『カトパン』の加藤綾子さんらのような局の顔となることが求められています。

 しかし、フジテレビがパンシリーズを復活させた理由は、久慈アナという大器の登場だけではないでしょう。同局を取り巻くさまざまな状況に、その理由が見え隠れしています。

◆スター女子アナを生むルートが消滅

 フジテレビの全盛期とも言える1980~90年代には、多くのスター女子アナが誕生しました。中井美穂さん、有賀さつきさん、河野景子さん、八木亜希子さん、小島奈津子さん、内田恭子さん、中野美奈子さん、平井理央さんらは、タレント以上の知名度で、好感度も抜群。局の人気を象徴する存在として、幅広い世代から好かれていました。

 これらのスター女子アナがスキルを養い、人気を獲得する上で大きかったのは、『笑っていいとも!』か『すぽると!』(または前身の『プロ野球ニュース』)への出演。出演者の中でもまれながらも、明るく気さくな姿で人気を獲得した結果、フジテレビはいわゆる“女子アナ王国”として認知されるようになりました。

 しかし、2014年3月春に『笑っていいとも!』、2016年に『すぽると!』が終了したことで、女子アナが人気者になるルートが、「パンシリーズからの『めざましテレビ』出演」だけになってしまったのです。

 次は記念すべき10代目の「〇〇パン」だったにも関わらず、3年間放送されなかったのは、マンネリと視聴率の低下によるところが大きかったと聞いています。実際、2010年前後から新シリーズが発表されるたびに、「今さら?」「まだやるの?」という声が飛び交っていました。

 さらにこの3年間で、女子アナをタレント扱いするテレビ局への嫌悪感を示す声が大きくなり、『好きな女子アナランキング』で30~40代の中堅・ベテランアナがトップ10を独占するなど、若手女子アナを取り巻く状況が変わりました。新人女子アナをフィーチャーするパンシリーズに対するハードルが以前よりも上がっているのです。

◆『好きな女子アナ』へのランクインなし

 それでも10代目に久慈アナを起用した理由は、やはり低迷が続く状況を変える看板アナが必要だからでしょう。フジテレビはかつて女子アナ王国と呼ばれていましたが、加藤綾子さん以来、全国区の知名度を持ち、『好きなアナウンサー』ランキング上位に入る女子アナは現れていません。

 もともとパンシリーズの目的は、新人アナの売り出しだけでなく、実践経験を積ませて育成すること。これまでのシリーズでは、新人アナの未熟ながらも一生懸命な進行と、一歩ずつ成長していく姿が魅力となっていました。

 高島彩さんや加藤綾子さん、あるいは、現在人気絶頂の日本テレビ・水卜麻美アナも含め、スター女子アナになる人は、単にアナウンスが上手いだけでなく、反応の良さと親しみやすい人柄を持ち合わせています。

 毎回ゲストを迎えてトークを行うパンシリーズは、反応の良さを身につけ、親しみやすい人柄を見せる絶好機。久慈アナには、さまざまなゲストから、気づかわれ、アドバイスされ、イジられることで、スキルと人柄が磨かれるチャンスがあるのです。

◆無難よりも、やり切るインパクトを

 フジテレビは2008~2012年の間、パンシリーズに加えて『アナ★バン!』という新人女子アナ育成番組を放送していました。これは「パンシリーズに起用されなかったもう1人の新人アナが、子ども番組のお姉さんキャラに扮してMCを務める」というもの。当時、入社した女子アナたちは、「私はどっちの番組に起用されるんだろう」とドキドキしていたそうです。

 ただ、両番組で切磋琢磨したものの、スター女子アナを生み出すことはできませんでした。先に『アナ★バン!』が終了し、3年後にパンシリーズも終了。「新人女子アナ育成番組をやるとしても、別の企画だろう」と言われていた中、パンシリーズの復活に踏み切ったのです。

 前述した通り、若手女子アナに対する世間の目は冷めつつあるだけに、久慈アナが人気者になるためには、「無難にこなそう」「カッコよくやりたい」ではなく、失敗しても「ひたすら明るく」「とことん真面目」な姿を見せるくらいのインパクトが必要ではないでしょうか。

 初回ゲストの加藤綾子さんは「クジパンらしさを前面に出して、楽しむのが一番」とアドバイスしていましたが、5分のミニ番組とは言え、パンシリーズ初となる月~金曜の週5日放送となるだけに、大いなる挑戦になるのは間違いありません。

【木村隆志】
コラムニスト、芸能・テレビ・ドラマ解説者。雑誌やウェブに月20本前後のコラムを提供するほか、『新・週刊フジテレビ批評』『TBSレビュー』などの批評番組に出演。タレント専門インタビュアーや人間関係コンサルタントとしても活動している。著書に『トップ・インタビュアーの「聴き技」84』『話しかけなくていい!会話術』『独身40男の歩き方』など。


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