真矢ミキ 「勉強を如何に必要としているか」を実感する

真矢ミキ 「勉強を如何に必要としているか」を実感する

受験生生活を回想する真矢ミキ

 女優として活動するとともにTBS系の情報番組『ビビット』のMCを務める真矢ミキ。そんな彼女は、つい最近まで受験生だったという。真矢が振り返る。

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 私、八月まで受験生していました。今年の初めから朝の番組OA後、せっせと塾に通い、“オスマン帝国の最盛期を築いたスルタンは”…スレイマン1世。…ヨシッ。なんて暗記して。

 何を受験したかというと、“高卒認定試験”(少し前まで大検と呼ばれていました)。高校受験できなかった人や、高校を中退した人に向けて、文部科学省が実施している試験だ。私は中学を出てすぐに宝塚音楽学校に入ったが、学歴として音楽学校はカウントされず中卒だ(※今の音楽学校は考慮され、当時とは違うそう)。

 勿論、音楽学校では普通の高校や大学で学ぶような勉強はしていない。知識が一部ガサッと抜けている感じで大人になった気分なのだ。そしてその穴の部分を、いつか埋めたいと常々思っていた。そんな私は皮肉な事に高学歴な役柄をいただく事が多い。今まで、東大、京大ほか名門大学がほとんど。台本をいただき、またですかと言わんばかりの確率。

 私自身も何だか、大学を卒業した気にもなっているから、最早、受験しなくても良いのでは? と思う事も…(冗談です)。

“真矢さん=高学歴”。そんな間違った観念をもたれている事は得しているような、虚しいような感覚に陥る。しかし、私は今回思った。50代は学びどきである。知的好奇心が明らかに深く、本物だからだ。

 とはいえ、記憶力は著しく、どうなのだろう(笑い)。記憶力はあるが、やる気がついてこない、若き日。そして、やる気があるのに記憶力がおぼつかない大人。…結局、勉強の本当のしどきはいつなのだろう。

 そんな訳で、私は自分の脳内にあるブラックホールと日々闘ってきた。だけど、年齢のせいだけにして良いのだろうか? そんな淋しい思考は、ただ自分の人生の先細りを作り上げるだけではないか。だから私はいつも、塾の先生のこの言葉を胸に刻んでいる。

「大丈夫です。忘れたら、また調べればいいんです。何度も、若い頃の何倍も何十倍も見直せばいいんです。ただそれだけです。必ず知識として吸収されますから」──自分より遥かに若い先生に何度もそう励まされたっけ(笑い)。

 うん、確かにそうだ。知識の細胞と筋肉は、いくつになっても増え、鍛えられるというから、自分を年齢の殻に閉じ込めてはいけない。と強く言い聞かせる。

 余談ですが、勉強のときとセリフを覚えるときでは使う脳が違うような気がする。セリフの場合、何度も書いて覚える人、何百回も読んで覚える人など、役者によって違うようで、私の場合は目で見て覚えるタイプ。台本をじーっと眺めて視覚から吸収するタイプ。

 早い話、コピー人間だ。かつて『SMAP×SMAP』で木村拓哉さんと夫婦役で共演したとき、彼はその場で5~6ページの台本に目を通し、ほんの5分くらいで「はいOK」って、驚愕のスピードで覚えたのを間近に見たっけ。

 職人芸とはこの事か!と感激したもの。私はといえば、その台本を前日にいただいても四苦八苦だった。

 面白い事に、覚えたセリフは、たいてい次のドラマがくると、ところてん式に忘れてしまう。凄いときは、そのシーンを撮り終わると同時に忘れる。

 以前、「もう一回、撮りなおします!!」と言われ、もう一度衣装に着替えたはいいものの、全くセリフが出てこなかった事も。脳の仕組みに驚いた。

 しかし、珍しい経験では、男装の麗人・川島芳子役で、全編中国語のセリフ。目で見ても漢文でわからないので、テープを作っていただき、兎に角時間があれば聴いた。

 結果、今でも一言一句そのセリフが言えるのだ。それも流暢に。聴覚コピーは、昔の歌謡曲が今でも歌えるように、脳に刻み込まれるのだろうか。今度脳科学者のお友達、中野信子ちゃんに聞いてみよう。

 話を戻し、今回の受験科目は、日本史、世界史、現代国語、現代社会、英語。ドラマの仕事が入り時間配分に追われ、どうしよう…と思い悩むほど苦しい事もしばしばあったが、睡眠時間をけずり何とか生きのびた。そして兎に角勉強に浸かった。

 頭は熱を帯び、私は役者だ!二度と勉強なんかするもんか!と苦し紛れに逃げそうになった日もあるけれど、ドラマの時代背景を知るのに日本史、世界史は役立ち、また情報番組では、現代社会、そしてやはり日本史をしっかり知ってこそ理解が深まるのだ。

 現実の私の生活には不要なようで、実は如何に必要としているかがわかった学び。

 試験が全て終わって、会場だった明治大学の校門を出るとき思った事は、また早く勉強がしたい、だった。大人になって目覚めた知的好奇心は、今まさに、どんどん膨らんでいるようだ。ん? テストの結果ですか? それはもはや、あまり関係ないのかもしれません。…なんてね。

撮影/渡辺達生

※女性セブン2017年10月12日号

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