俳優からフレームアウトする斎藤工 監督、作家、写真家も

俳優からフレームアウトする斎藤工 監督、作家、写真家も

多才ぶりを発揮している斎藤工

 斎藤工(36才)の活躍がめざましい。俳優業にとどまらず、各方面で多才な才能を発揮しているのだ。コラムニストでテレビ解説者の木村隆志さんがその魅力に迫る。

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 一般的な斎藤工さんのイメージといえば、やはり『昼顔~平日午後3時の恋人たち~』(フジテレビ)で見せたセクシーさでしょうか。しかし、近年はさまざまな活動で「面白い」、さらに「何をするか分からない変わった人」というイメージを与えています。

「面白い」のきっかけは、2016年大みそかの『絶対に笑ってはいけない科学博士24時!』(日本テレビ系)。サンシャイン池崎さんのネタを絶叫で演じ切って爆笑を集めました。その後も同じ姓のトレンディエンジェル・斎藤司さんの「斎藤さんだぞ」を全力で演じるなど、振り切った姿を披露。つい先日も、『行列のできる法律相談所』(日本テレビ系)でプチブレイク中のピン芸人・ひょっこりはんのネタをコピーしていました。

 一方で、昨年はモデルとしてパリコレに出演し、映画『昼顔』が公開されるなど、再びイメージ通りのセクシーな路線も。しかし、直後に映画『蟲毒 ミートボールマシン』で全身グリーンの宇宙人を演じたほか、『Y!mobile』のCMでは、にゃんこスターのスーパー3助さんになり切るなど変幻自在です。

 さらに極め付けは、今年1月のドラマ出演。当初は『BG ~身辺警護人』(テレビ朝日系)のみの出演と思われていましたが、深夜ドラマ『MASKMEN』にも出演していたのです。

 同作は野生爆弾・くっきーさんプロデュースの覆面芸人・人印(ピットイン)をフィーチャーしたドキュメンタリードラマですが、スタート後に覆面の中身が斎藤さんであることが分かると、各所で驚きの声があがりました。

 本気で芸人を目指す姿や、くっきーさんならではのシュールな芸風に、「サンシャイン池崎やスーパー3助のときも驚いたけど、これは異次元すぎる」という声が続出。しかし、斎藤さんには一切照れがなく、シリアスに演じているため、「もしかしたら本気か?」「この人ならやりかねない」と感じている人も多いようです。

◆芸人へのリスペクトと「一日一生」

 一部で「なぜ仕事を選ばないのか」「どこへ向かっているんだ」という声もありますが、先週監督を務めた初の長編映画『blank13』が全国公開されました。斎藤さんは少年時代から大の映画好きであり、コラムも執筆する識者。つまり、最もやりたいであろう仕事にも真正面から挑んでいるのです。

 ただ、斎藤さんが凄いのは、その姿勢がどんな仕事でも変わらないこと。これまで何度となく「なぜ芸人絡みの仕事を受けるのか?」という質問を受けてきましたが、斎藤さんは決まって「芸人さんたちって凄いじゃないですか」とリスペクトを隠しません。どの撮影現場でも全力で挑む芸人たちを尊敬しているからこそ、斎藤さんも芸人絡みの仕事に全力で挑んでいるのでしょう。

 そもそも斎藤さんの座右の銘は、「今日一日を一生と思い全力で過ごす」という意味の“一日一生”。過去に同名のオリジナルお香をプロデュースしたほど、この気持ちを大切にしているのです。

 過去を振り返ってみても、今の活躍が信じられないほど苦労の連続でした。20代中盤には、午前の情報番組『ラジかる!!』(日本テレビ系)で人妻タレントと入浴する「人妻温泉」というコーナーに出演するなど、イロモノ的なキャスティングも真摯にこなし、30代に入ってようやくブレイクのときを迎えた遅咲きなのです。

◆固定化されたイメージは邪魔になるだけ

 だから斎藤さんはブレイク後も一貫して、「僕は一発屋」「いつか飽きられる」「俳優に向いていない」などのネガティブなコメントを連発。その言葉に嘘はなく、下積み期間が長かったからこそ、「見たことがない自分に出会えるから」という理由でさまざまな仕事に挑んでいるようです。

 最近、「斎藤工は攻めている」という声を聞きますが、本人にとってはこれまで通り。学生時代からバックパッカーとして世界各国を旅した経験からも、リスクより未知のものに引かれるギャンブラー気質のところもあるのでしょう。それどころか、「落ち着きはじめた僕」「無難にこなすようになった自分」になることを拒んでいるようにも見えるのです。

 もともと斎藤さんは、俳優に加えて、美声を生かしたナレーション、長身を生かしたモデル、さらに写真家、コラムニストとしても活動するなど、多才の極み。才能や好奇心はもちろんのこと、かつて「俳優の固定されたイメージは邪魔になるだけ」と語っていたことから、フレーム(枠)に収まらないようにしている様子がうかがえます。

 俳優というフレーム(枠)から飛び出してさまざまな仕事に挑むことは、「イメージの固定化を防ぐ」ほか、「その経験を芝居に還元できる」というメリットもあるだけに、現在のスタンスはちょうどいいのかもしれません。

◆国産野菜を食べるよう邦画を観てほしい

 幼いころから映画を見続けてきただけあって、演じる側だけでなく、作る側の視点を持ち合わせているのも斎藤さんの強み。だからバラエティー番組やイベントなどへの出演時も、演出として効果的であれば、セクシーからバカまで、何でも期待以上の結果を残そうとするのでしょう。

 ただ、かつて「国産の野菜を食べる様 邦画を観てください」と語っていたように、映画への思いは相当なもの。どんな芸能活動も斎藤さんにとっては、映画に還元できる大切な経験だけに、今後も俳優からフレームアウトした活躍を見せてくれるでしょう。

【木村隆志】
コラムニスト、芸能・テレビ・ドラマ解説者。雑誌やウェブに月20本前後のコラムを提供するほか、『新・週刊フジテレビ批評』『TBSレビュー』などの批評番組に出演。タレント専門インタビュアーや人間関係コンサルタントとしても活動している。著書に『トップ・インタビュアーの「聴き技」84』『話しかけなくていい!会話術』『独身40男の歩き方』など。

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