伊藤英明、「面白い」を徹底的にやる姿勢 過去モジモジくんも

伊藤英明、「面白い」を徹底的にやる姿勢 過去モジモジくんも

『麒麟がくる』に出演している伊藤英明

 NHK大河ドラマ『麒麟がくる』には多くの実力派俳優が出演しているが、伊藤英明も演技力が光る1人だ。伊藤はこれまで数多くのドラマ、映画で幅広い役柄を演じ、その実力を発揮してきた。そんな伊藤の魅力についてコラムニストのペリー荻野さんが解説する。

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 大河ドラマ『麒麟がくる』では、斎藤道三(本木雅弘)が、ついに息子の高政(義龍・伊藤英明)に討たれてしまった。これまで邪魔者を毒殺したり、追放したり、嫌な空気と妖気まで感じさせてきた本木“マムシ”道三。いい役だ。

 だが、マムシパパを殺すことになる高政(義龍)も、ドラマとしてはとても面白い役というのも忘れちゃいけない。油売り商人の子から成り上がった父に対するコンプレックス、母がもともと土岐家の頼芸の側室だったという過去、父は頼芸だと信じたい自分、弟たちも暗殺した自分、屈折屈折また屈折。のんきな若殿とは一味違う苦悩を表現できるおいしい役といっていい。

 今後、高政は、妹の帰蝶(川口春奈)の夫である織田信長(染谷将太)と対決することになる。伊藤英明VS染谷将太といえば、2012年の映画『悪の教典』や2014年の映画『WOOD JOB!〜神去なあなあ日常〜』を思い出す人も多いはず。伊藤は『悪の教典』では殺人鬼、『WOOD〜』ではやる気もないのに林業研修に参加したチャラ男(染谷)をしごく林業の鬼のような教官。『麒麟』では染谷がどう逆襲するか? 見ものだ。

 もうひとつ興味深いのは、伊藤が、2005年の長編ドラマ『国盗り物語』で織田信長を演じていること。このドラマは、斎藤道三が北大路欣也、義龍・倉田てつを、光秀・渡部篤郎という配役だった。信長も母親から疎まれ、弟を誅殺するなど屈折アリアリ男。だが、スケールもタイプも違う信長、義龍両方を演じたという俳優は珍しい。

 思えば、今年はドラマ『病室で念仏を唱えないでください』で、僧侶にして救急救命医と大忙しの松本照円(照之)を演じていた。彼もまた小学生時代に友人を目の前で亡くした過去を持つ。さらに公開延期となった新作映画『燃えよ剣』では、「死に損なった」と挫折感を抱え、暴れまわる芹沢鴨。「ヒジカタ〜!」とわめきながら大胆な剣さばきで土方歳三(岡田准一)らと対立する。なお、伊藤はドラマ『輪違屋糸里』では、土方歳三を演じている。芹沢と土方両方というのもなかなかすごい。

 なぜ、伊藤がこれほど「面白い役」を独占できるのか? それはおそらく本人が「面白い」と思ったことは徹底的にやる性格だからだろう。もともと二枚目だが、繊細な表現とか、微妙なニュアンスを求められる恋愛ドラマよりは、友情や信頼、団結力がカギとなる『救命病棟24時』『ブサー・ビート〜崖っぷちのヒーロー』といった体育会系作品が多かった。代表作といえば『海猿』シリーズだ。

 びっくりしたのは、約10年前、突如、『とんねるずのみなさんのおかげでしたSP』の「モジモジくん」のコーナーで、「モジあきでーす!!」と、例の全身銀色のピタピタスーツ姿で登場したこと。「夢がかないました」とにこにこしながら、歌うわ踊るわ、カメラ目線で「さとみ、見てっか! お兄ちゃん、出たよ!! お兄ちゃん、やっと出た」と故郷の妹に喜びの声をぶつけたのだ。すごいな。やっとって。面白いことをやる性格というより先に、本人が「面白い」のだった。

 屈折した役を演じても、底にはこの明るさがある。伊藤英明ならば体当たりでやってくれる。こんな期待感を抱かせるのも俳優の才能なのだ。それがよくわかった。

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