再開『エール』の見どころはコロナ禍を癒やす「音楽の力」

再開『エール』の見どころはコロナ禍を癒やす「音楽の力」

主人公の作曲家を熱演(時事通信フォト)

 新型コロナウイルス感染拡大の影響により新作の放送が休止していたNHK連続テレビ小説『エール』が、いよいよ9月14日より放送を再開する。連続テレビ小説の第102作にあたる同ドラマは、作曲家・古関裕而と妻・金子をモデルとしたフィクションだ。

 主人公・古山裕一役に抜てきされたのは、窪田正孝。その妻であるヒロイン・関内音役は、二階堂ふみ。実力派の若手俳優として知られるふたりが、昭和という激動の時代を二人三脚で生き、音楽を通して人々に元気を与えようとした夫婦の姿を演じている。

 第13週が放送されて以降は再放送に入っていたが、この間の再放送を目にして、『エール』に新たに興味を持った人もいたかもしれない。同ドラマの魅力はどこにあるのか? 朝ドラを長年ウォッチし、著書に『みんなの朝ドラ』(講談社現代新書)があるライターの木俣冬氏は、こう分析する。

「朝ドラ『エール』の見どころは、古関の作品を始めとした数々の昭和のヒット曲が登場することと、それを第一線で活躍するミュージカル俳優たちが歌うことです。山崎育三郎や古川雄大といった俳優は、『エール』で披露した歌声をきっかけに一層注目を集めました。ミュージカル俳優ではないですが、森山直太朗や柴咲コウ、野田洋次郎なども歌や演奏を披露しました」

 木俣氏が指摘する通り、『エール』は朝から良質な音楽を流してくれる。「船頭可愛や」、「影を慕いて」「六甲おろし」、「福島行進曲」といった楽曲の他、クラシック音楽などもふんだんに盛り込まれており、ただテレビをつけて音を聴いているだけでも楽しめるはずだ。

 とくに注目されているひとりが、今回が朝ドラ初出演にあたるロックバンド・RADWIMPSのボーカリスト・野田洋次郎。野田は、「酒は涙か溜息か」などを手がけた昭和を代表する作曲家・古賀政男をモデルとした木枯正人役を演じている。劇中には弾き語りするシーンもあり、さらにRADWIMPSが音楽を手がけた大ヒット映画『君の名は。』を彷彿させる「君の名前は?」というセリフも話題になった。普段はロックバンドで活動する野田が昭和歌謡を弾き語る貴重さがファンを喜ばせているようだ。

 とはいえ、現時点で『エール』で描かれているのは、まだ主人公が作曲家として若手の時代だ。劇中で古山夫妻がさらに深く音楽業界に関わっていくにつれて、また新たな音楽家と、その楽曲が次々登場することだろう。

 木俣氏は、他にも『エール』の見どころを挙げる。

「モデルの古関夫妻の史実と、創作部分の違いも話題のひとつ。どこが史実でどこが創作かを照らし合わせるマニアックな見方をする人もいます。放送再開後、時代は戦争へと進みます。自由に音楽を楽しめない状況下、音楽をこよなく愛する人々がどうなっていくか話題は尽きないでしょう」(木俣氏)

 もしかすると、“自由に音楽を楽しめない状況下”という意味では、コロナ禍の現在も通じるものがあるかもしれない。配信などで新しいライブの在り方を模索してはいるものの、多くのライブハウスが閉店に追い込まれ、音楽業界は未だ厳しい状況が続いている。そんな時代の中で、『エール』が人々に“音楽の力”を改めて感じさせてくれることに期待したい。

●取材・文/原田イチボ(HEW)

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