『半沢』を録画視聴にさせる狙い?生放送番組が急増の背景

『行列のできる法律相談所』など生放送番組が急増 『半沢直樹』対策とも

記事まとめ

  • 日本テレビ系『行列のできる法律相談所』は6日、ふだんとは異なる形で生放送された
  • 同日の同じ時間帯にはTBS系『生放送!!半沢直樹の恩返し』が緊急生放送されている
  • 生放送番組が増えている理由に『半沢直樹』対策とネットコンテンツ対策だという

『半沢』を録画視聴にさせる狙い?生放送番組が急増の背景

『半沢』を録画視聴にさせる狙い?生放送番組が急増の背景

最終回に注目が集まる『半沢直樹』

 コロナ禍で、テレビ番組も感染対策をしながら制作され、以前と同じような形で放送されるケースが増えてきた。そんななかでこの9月、顕著に増えているのが生放送の番組だ。その背景を探ってみると、あの絶好調ドラマ対策という一面も見えてきた。コラムニストでテレビ解説者の木村隆志さんが解説する。

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 この1か月あまり、明らかに生放送の番組が増えています。下記に今月放送された主な生放送番組を挙げていきましょう。

 6日の『行列のできる法律相談所』(日本テレビ系)は、「訳あって生放送!スペシャルMCにあの大物が登場!」と題してふだんとは異なる形で生放送。さらに同日の同じ時間帯には『生放送!!半沢直樹の恩返し』(TBS系)が緊急生放送されました。

 12日には8時間生放送の音楽特番『THE MUSIC DAY 人はなぜ歌うのか?』(日本テレビ系)、16日には2時間生放送のお笑い特番『歌ネタ王決定戦2020』(MBS、TBS系)。

 20日には2時間生放送のドッキリ特番『うわっ!ダマされた大賞2020』(日本テレビ系)と、2時間生放送のニュースバラエティ特番『池上彰スペシャル』(フジテレビ系)。

 21日には3時間生放送のバラエティ特番『キスマイ10周年でやれるかな? テレビ朝日人気番組の裏側に潜入しちゃった ほぼ3時間SP』(テレビ朝日系)と、4時間生放送の音楽特番『CDTVライブ!ライブ!』(TBS系)。23日には3時間生放送のクイズ特番『東大王vs全国の視聴者 生放送3時間SP』(TBS系)。

 また、26日に8時間生放送のお笑い特番『お笑いの日』(TBS系)、27日に2時間生放送の格闘技特番『RIZIN24』(フジテレビ系)、30日に4時間半生放送の音楽特番『テレ東音楽祭2020秋』(テレビ東京系)が予定されています。

『半沢直樹』を録画視聴にさせたい

 新型コロナウイルスの感染予防対策による制約がある中、スタッフの人数や労力がより必要な生放送番組が増えている理由は、主に下記の2つが考えられます。

 1つ目の理由は、『半沢直樹』対策。全話の世帯視聴率が20%を超える国民的ドラマの放送によって、各局のテレビマンは緊急対策を余儀なくされています。

 心の中では「勝てるわけがない」と思いながらも、何らかの策を講じなければいけないのが彼らの立場。その最善策として考えられたのが生放送だったのです。

 6日の『行列のできる法律相談所』は、明石家さんまさんをMCに迎えつつ、新婚ホヤホヤの丸山桂里奈・本並健治夫妻が登場して生ドッキリを敢行。さらに、さんまさんと縁のある剛力彩芽さんをゲスト出演させて、生のやり取りを見せることで盛り上げました。

 20日の『うわっ!ダマされた大賞2020』は、20回目にして初めての生放送に挑み、『池上彰スペシャル』もあえて緊急生放送を選択。27日の『RIZIN24』も「生放送の強みがはっきり表れるスポーツコンテンツを仕掛けよう」という戦略が見えます。

 通常放送の魅力に、「何が起きるかわからない」「ハプニングの可能性がある」という生放送の強みを加えることでリアルタイム視聴を狙い、「『半沢直樹』を録画視聴に回してもらおう」としているのです。

ネット上のライブコンテンツ対策

 2つ目の理由は、各局がネットコンテンツ対策に本腰を入れはじめたから。

 今春にビデオリサーチが行っている視聴率調査がリニューアルしたことで、各局がこれまでよりも広告訴求効果の高い10代から40代の視聴者層を重視した番組作りをするようになりました。この世代はネットの接触頻度が多く、使用時間が長いため、現実的な視聴者の奪い合いが激化しているのです。

 また、ネットでは毎日さまざまなアプリなどでライブ配信が行われているため、テレビは「ライブ感を共有して楽しむ」という点で勝てなくなりはじめていました。テレビにも年末の『M-1グランプリ』(ABC・テレビ朝日系)や『NHK紅白歌合戦』(NHK)、各競技の日本代表戦や箱根駅伝など生放送の人気番組はありますが、ごくわずかにすぎません。

 これまではリスク管理や密度の濃さを優先させて収録放送を選んでいましたが、「もっと生放送で勝負しなければいけない」という機運が出てきたのは間違いないでしょう。

 また、視聴率を獲得するのは当然のこととして、「ツイッターのトレンドランキングや、検索ワードランキングなどのネット指標が、社内外に向けたアピール材料になりはじめている」ことも変化の1つ。ランキングに入ることで社内の士気は高まり、スポンサーを喜ばせられるなどのメリットが得られるようになり、つぶやかれやすく、検索されやすい生放送が増えているようです。

 民放各局は平日の朝から夕方まで情報番組やワイドショーを生放送していますが、これらに多くの視聴者が求めているライブ感はありません。視聴者は「何が起きるかわからない」というドキドキワクワクを感じさせるバラエティ、スポーツ、音楽の生放送番組が見たいのであって、その意味で今月の傾向は歓迎されているのでしょう。

 今後も今月同様のペースで生放送番組を手がけることができれば、ネット中心の生活を送る若年層の支持をもっと集めることができるのではないでしょうか。

【木村隆志】
コラムニスト、芸能・テレビ・ドラマ解説者。雑誌やウェブに月20本超のコラムを提供するほか、『週刊フジテレビ批評』などの批評番組に出演。タレント専門インタビュアーや人間関係コンサルタントとしても活動している。著書に『トップ・インタビュアーの「聴き技」84』『話しかけなくていい!会話術』『独身40男の歩き方』など。

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