山里亮太妄想ドラマ『あの夢』で更なる「ハイスペック男」に

山里亮太妄想ドラマ『あの夢』で更なる「ハイスペック男」に

山ちゃんの“妄想小説”がドラマ化(時事通信フォト)

 南海キャンディーズ・山里亮太(43)の勢いが止まらない。昨年は女優・蒼井優との結婚が話題だったが、その後も数多くのテレビ番組にレギュラー出演し続け、ラジオでも相変わらず活躍中だ。そんな山ちゃんによる短編小説をドラマ化した『あのコの夢を見たんです。』(テレビ東京系、毎週金曜深夜)の見どころについて、ドラマオタクのエッセイスト・小林久乃氏が綴る。

 * * *
 テレビ東京のドラマは“攻め”の姿勢を感じられるので、昔から好きでよく見ている。例えば、良くも悪くも男女関係の深いところまで突いてきた『モテキ』(2008年)。2018年放送の『100万円の女たち』では、マンガ原作の世界観を軽く飛び越えて、借金、殺人、風俗……と放送できる限界ギリギリのドラマを制作していた。

 コロナ禍でさすがにテレ東も疲れてしまったのか、最近ぶっ飛んだ内容の作品が少なくて寂しい思いをしているところに飛び込んできたのが『あのコの夢を見たんです。』(以下、『あの夢』略)だ。

大人が真剣に遊ぶと楽しいドラマが生まれた

『あの夢』は南海キャンディーズの山里亮太(以下、敢えて、山ちゃん呼びもあり)が、テレビ誌『B.L.T.』で連載していた小説がドラマの原作だ。豪華で旬の若手女優が、彼の創り上げた妄想の世界で、一話ごとに本人役のヒロインを演じている。それがものすごくくだらないけど、楽しい。

 第一話のヒロインは、中条あやみ(23)だった。美しすぎる彼女は高校生活でモテすぎる自分に辟易していたところ、偶然フラれることができるアプリを知る。指示通りに男性に近づくと、中条は毎回男性にフラれる感動を覚えることができるという。なんとも凡人には理解し難い感覚が、山里ワールドの手に掛かると笑い……というよりは、視聴者に微笑が生まれる。

 第二話では田舎の病院の受付をしていた芳根京子(23)が、突然ドラクエ風の勇者になってこの世の危機を救う話。ドラクエパロディといえば、テレ東の十八番のようなもの。そこに小説とのコラボが誕生したというわけだ。

 第三話では悲劇のヒロイン願望を持つ女子高生として森七菜(19)が登場。幼なじみの山里(仲野太賀)を相手に、なんとか自分を悲しい設定へ持って行こうとくだらない努力を重ねる姿が可愛らしかった。

 全編が山里の妄想と言っても決して卑猥なものではなく、どこか青春の甘酸っぱい雰囲気がドラマから伝わってくる。山ちゃんが真剣に筆と向き合って、妄想をしたためた結果がちょっとしたファンタジーということか。大人が真剣に遊びにかかってくると、ものすごく楽しい要素が生まれるのだと改めて考えさせられた。

山里のいい男っぷりがさらにジャンプアップ

 ドラマには作者である山ちゃんも必ず登場してくる。見事な再現性で作品に深みを与えているのが、山ちゃん役の仲野太賀(27)だ。イケメン臭をしれっと消して、完全にモテないキャラを演じている。山ちゃん本人が愛用している赤縁のメガネを人差し指で正す仕草、話し方の抑揚など細部まで仲野が研究している様子が伺えるのだ。これもドラマ内でぜひ注目してほしいところ。

 ただ私がこの作品で改めて思ったのは、悔しいことに山里亮太の魅力がまた増してしまったということ。そもそもモテないキャラでブレイクしたはずなのに、その水面下では小説家としても力を築いて、ネタを作って、レギュラー番組を着々と増やしてモテ要素をきちんと自分で操縦していた山ちゃん。

 昨年には人気女優との結婚も果たした。その時に『山ちゃんがイケるなら俺だって……』というツイートを見かけたけど、それは違う。彼は努力の結果、芸能界でも随一の稼げる芸人のポジションに鎮座しているのだから、その辺に転がっている男性とは比較にならないほど高スペック男性なのである。しかも金を持っているだけではなく、話したら面白いことは各テレビ番組で立証済み。

 そこに、新しい“書く”という力がドラマを通して披露されたのである。原作が映像化されるのは、一生のうちに幾度もあるチャンスではない。それをいくつもの顔を持つ、一人の芸人が叶えてしまった。私が言うのもおこがましい話だけど、山ちゃんのような才能の塊は少しおとなしくしていて欲しいと、ジェラシーを感じてしまう。でも彼のような人がいないと、面白い文化は継承されていかないのだということも知っている。

 さて『あの夢』。一話完結ドラマで山里の妄想はまだまだ膨らんだり、しぼんだりしていく。金曜深夜にニヤニヤする時間が楽しみだ。そして今度書店に寄ったら、この原作本を買ってみよう。

【プロフィール】こばやし・ひさの/静岡県浜松市出身のエッセイスト、ライター、編集者、クリエイティブディレクター。これまでに企画、編集、執筆を手がけた単行本は100冊以上。女性の意識改革をライトに提案したエッセイ『結婚してもしなくてもうるわしきかな人生』(KKベストセラーズ刊)が好評発売中。

関連記事(外部サイト)