『鬼滅の刃』のLiSA かつてチケットノルマに苦しんだ日々も

『鬼滅の刃』のLiSA かつてチケットノルマに苦しんだ日々も

アマ時代からの苦労が報われた(Getty Images)

 もはや社会現象とすら言える『鬼滅の刃』の大ヒットにともない、アニメ版で主題歌を歌うLiSAの快進撃が止まらない。『紅蓮華』で昨年のNHK紅白歌合戦に初出場したことも話題になったが、公開中の映画『劇場版「鬼滅の刃」無限列車編』の主題歌『炎(ほむら)』でも、各音楽配信サイトのデイリーランキングで1位を獲得、55冠という驚異的な記録を達成した。

 地上波テレビの音楽番組などで歌唱する機会も激増し、10月24日23時〜のNHK『SONGS』では「LiSA特集」が放送される。いまやアニソン界を飛び出し、国民的な人気を獲得するに至った彼女だが、もともとはロックシンガーとして活動していた。インディーズバンドのボーカリストとして活動するも、なかなか芽が出ずにいたところにつかんだチャンスが、2010年に放送されたアニメ『Angel Beats!』だった。LiSAは、劇中バンド「Girls Dead Monster(ガールズ・デッド・モンスター)」のボーカル・ユイの歌唱パートに抜てきされたのだ。

 当時のブログでは、〈正直。アタシのやりたい事とちょっと違う気がして…〉(2009年10月30日の記事より)とオーディションを受けることに迷いもあったと告白しているが、この決断が彼女の運命を変えた。

「Girls Dead Monster」として全国ツアーを経験し、同バンドの活動終了後は、満を持してソロ歌手としての活動をスタートさせた。デビューまでの経緯が特殊でも「Girls Dead Monsterの人」で終わらず、人気アーティストへと成長したのは、やはりロック仕込みのパワフルな歌唱力が本物だったからだろう。これまで『Fate/Zero』、『ソードアート・オンライン』シリーズ、『魔法科高校の劣等生』など名だたる人気作とタイアップしており、『鬼滅の刃』放送前から、彼女の歌声を耳にしたことのないアニメファンは存在しなかったはずだ。

 また、LiSAは個性あふれるストリート系ファッションでも人気を集めている。若い世代に人気のファッションブランドとコラボした経験もあり、10月22日には、自身がプロデュースするアパレルブランド「ROY-reflect overjoy-」が始動した。

 アニメソング評論で知られる音楽評論家で、音楽プロデューサーの冨田明宏氏は、LiSAがアニメファンに支持された理由をこのように分析する。

「そもそもLiSAというシンガーの物語は、デビューを夢見て岐阜県から単身上京したところから始まっています。以前に私がパーソナリティを務めていたラジオ番組にゲスト出演した際、アマチュア時代にいくつものアルバイトを経験しながらライブのチケットノルマを達成するための苦労の日々を、涙ながらに語ってくれたことがありました。そんな彼女はいわばアニメ/アニソン業界に見つけてもらった存在。その感謝の念は深く、そのスタンスも多くのアニソンファンを惹きつけました」

 その上で、アニメファン以外からも支持を集めるスター性についても指摘する。

「2011年にソロアーティストとしてデビューを飾ると、今度は彼女のアニソンらしからぬロックな音楽性と個性的なファッション、そしてTwitterにおけるポジティブなメッセージ等がJ-ROCKリスナーや女性層にまで伝播。テレビ朝日『ミュージックステーション』への出演や、アニソンでは異例ともいえるロックフェスへの参戦も果たし、さらにはファッション誌などに登場する機会が増えると、瞬く間に若者世代を代表するポップアイコンとしての地位を築き上げました。

 オタク層も一般層も巻き込み不動の人気を勝ち得たアーティストは彼女だけ。さらにはアニソン=オタクの音楽のイメージを刷新したことも、彼女が成功した由縁かもしれません」(冨田氏)

 確かな歌唱力で、もともとJ-ROCK界からの評価も高いLiSA。アニメファン以外からも本格的に“発見”され、さらなるブレイクを遂げることだろう。

●取材・文/原田イチボ(HEW)

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