『知ってるワイフ』大倉忠義 “ダメ男”役がなぜ似合うのか

『知ってるワイフ』大倉忠義 “ダメ男”役がなぜ似合うのか

広瀬アリス演じる“鬼嫁”に悩まされ…(時事通信フォト)

 育児や家事に非協力的な夫に苛立つ妻、そんな妻の態度に悩む夫……。ドラマオタクのエッセイスト・小林久乃氏が、連続ドラマ『知ってるワイフ』(フジテレビ系、木曜夜10時〜)で大倉忠義(関ジャニ∞)が演じる役どころについて分析する。

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 関ジャニ∞の大倉忠義さんが主演する『知ってるワイフ』(フジテレビ系)が始まった。視聴率は一桁台(第二話は7%)と低調でも、放送中のSNSのトレンドワード入りは絶好調。1月7日の初回放送時は、夫(大倉)への不満を大爆発させる妻への共感ワードが溢れていた。日頃の家事、育児に忙しい主婦層が、猛烈な勢いでつぶやいているのがよーくわかった。

 ドラマで妻にやられっぱなしの大倉さんを見ながら「あれ……この雰囲気はどこかで見たような……?」と既視感を覚える。これまで見てきたドラマの記憶を掘り起こすと、彼はどうやら“ダメ男”を演じている回数が多いのだ。

妻に怒鳴られ、物を投げられる…イケメン臭はどこへ?

 今回の『知ってるワイフ』は韓国で放送されたドラマのリメイク版。銀行勤務、結婚5年目、二児の父親の剣崎元春(大倉)。ヒステリックな妻・澪(広瀬アリス)の罵声に怯えて、家庭では全く立場がない。そんな元春のところに「ある場所で使えば過去へ戻ることができる」という500円硬貨を手にした奇妙な男・小池良治(生瀬勝久)が現れる。元春は鬼嫁から離れて、新しい人生を進もうとタイムスリップを決行。こういう現実離れした設定は、いかにも韓流らしい。

 第一話で話題になったのは、出世できず家事もしない、家族への思いやりもない夫に向かって、不満を怒鳴り散らす澪の様子。これが主婦層には共感の嵐だったらしい。愛しているはずの旦那様のことを「おい!」と呼び、最終的にカニの足を元春にぶん投げていた澪。広瀬アリスの迫力ある鬼嫁ぶりは、夢でうなされそうなほどの剣幕だった。そんな妻に何も言い返すことができない夫は、ストレスを少しずつ自分の中に溜めていく。

「こ、これがジャニーズのトップアイドルか……」と見ながら笑ってしまう。大倉さんはグループ内で一番のイケメンと言われているうえに、身長も高い。しかもアイドルなのだから稼ぎも良し、と最優良の男性のはずなのに、元春役にはその影もなかった。でも彼の“ダメ男役歴”は、今作で始まったことではないのだ。

ムカつくほどではない、絶妙なダメ男ぶりは専売特許か

 古い記憶にあるのは『生まれる。』(TBS系・2011年)の林田太一役。気弱な性格で5人兄弟の長男であり、養子。デザイナーの仕事をしていたけれど、トラブルに見舞われて留置場に入れられてしまう。それでもなんとか家族愛のおかげで、普通の生活に戻っていたという、少し屈折した役。『どS刑事』(日本テレビ系・2015年)では、タイトル通りどSとバディを組まされる、ヘタレな刑事役。

 そして『モンテ・クリスト伯 ─華麗なる復讐─』(フジテレビ系・2018年)の南条幸男役で、ダメ男ぶりの最高値を極めた。警察に虚偽の通報をして、友人・柴門暖(ディーン・フジオカ)が捕まるように仕向ける。この時点で腐っているけれど、暖の彼女とちゃっかり結婚。劇中での職業は売れっ子俳優、でも下積み時代には香港マフィアから借金をしていたこともあった。最終的に警察に逮捕された南条は、大倉さんが演じた歴代ダメ男の中で、消化不良になるほど一番のクズだった気がする。

 大倉さんが演じるダメ男役の特徴は、最終的に「あいつ悪いやつじゃないんだよね」と憎めないことである。その絶妙な雰囲気を醸し出しているのが大倉さんであり、テレビを消すほどのムカつきぶりではない。これが定期的にダメ男役の巡ってくる理由なのかもしれない。

 そして歴史(?)は今回の剣崎元春へと続く。第二話の放送でタイムスリップをした彼が、理想としていたセレブリティな人生に進んでいく。ただ過去に戻っても元春には、以前の記憶がしっかりと残っている。逃げたつもりの嫁とも再会してしまい、さてこれからどうなる? というのが、今後の見どころ。思わぬ形でリスタートできた人生だけど、これが幸せなのかどうかを、これから彼がたどっていく。

 そんなドラマを見ていてふと思ってしまった。「自分なら何年前に戻って、人生をやり直すのか」。そんなことを妄想するあたり、私もダメ女かもしれない。元春よ、気づかせてくれてありがとう。第三話の放送を待ちわびております。

【プロフィール】こばやし・ひさの/静岡県浜松市出身のエッセイスト、ライター、編集者、クリエイティブディレクター。これまでに企画、編集、執筆を手がけた単行本は100冊以上。女性の意識改革をライトに提案したエッセイ『結婚してもしなくてもうるわしきかな人生』(KKベストセラーズ刊)が好評発売中。

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