お母ちゃんになった松本が宮迫とキスまでしちゃう「松本家の休日」

お母ちゃんになった松本が宮迫とキスまでしちゃう「松本家の休日」

(提供:リアルライブ)

 「たむけんで、ええよな…」。ダウンタウン・松本人志の鶴のひと声で、関西バラエティ界の歴史が動いた。

 2014年のある夜、場所は東京のおしゃれなシガーバー。深夜2時38分ごろ。複数の芸人で飲んでいたとき、松本が「もうそろそろ、大阪で番組やりたい思てんねん。誰とやったらええかなぁ」とつぶやいたあとにゆっくり見渡して、たむらけんじで視線を止めて、冒頭の言葉を口にした。

 松本、芸歴35年。単独出演初となる関西ローカルの冠番組『松本家の休日』(朝日放送)は、こんな形で産声をあげた。

 同番組は、朝日放送(ABCテレビ)で同年10月にスタート。先の深夜のシガーバーから、わずか2週間後に番組化された。松本の気が変わらぬうちにと、たむけんが所属するよしもとクリエイティブ・エージェンシーの幹部に、その場で電話。兵庫県尼崎市出身の松本が、週1ペースで帰省するという程度の軽いノリで、1本の番組がはじまってしまった。

 架空の家族である松本家は、“お母ちゃん”が松本、“お父ちゃん”が雨上がり決死隊・宮迫博之、“兄”がたむけん(呼称・けんじ)、“妹”が構成作家・さだ(呼称・さだ子)の4人。関西のなかで、1万円のおこづかいで遊びつくす内容だ。オープニングは、松本家のリビングでどこに行くかを家族会議。以降は、いわゆる街ブラに突入する。お金が余ると、ガラス瓶のなかに入れて貯金。次の遊びで足りなくなると、貯金でまかなう。

 私生活では金に余裕のある4人が、あえて家計が苦しい家庭に収まることで、贅沢よりも心の充足を満たしていく。1人前数百円のチキンライスを4人で分け合うこともある。600円程度のうどんで、破顔一笑することもある。きっと、“何を食うか”より“誰と食うか”に重きを置いているのだろう。

 “妹”は、唯一の素人。元芸人だが、作家転向後はダウンタウンでも、特に松本の良きブレーンだ。現在は『ワイドナショー』(フジテレビ系)、『ダウンタウンなう』(同)のスタッフだが、松本が「福岡で番組がしたい」といえば、福岡のローカル番組『福岡人志、松本×黒瀬アドリブドライブ』(福岡放送)を立ち上げ、「世に出てない芸人と話したい」といえば、不定期の深夜番組『芸人ドキュメンタリー 下がり上がり』(フジ系)を始動させている。

 出演者4人のうち、たむけんを除く3人が関東在住。それでも、あえて避けるようにして関東エリアの放映がない。ここには、最期まで東京人に心を売ることがなかったやしきたかじん(故人)に似た匂いがある。

 「東京の家族は見てへん」という安心感か、松本はかなりプライベートをオープンにしている。東京進出する直前まで住んでいた市内のマンションは、家賃が27〜28万円だったことを明かし、さかのぼって、学生時代の色恋沙汰も思いだす。尼崎市を再訪した回では、中学3年生のときに相方の浜田雅功とダブルデートしたこと、ファーストキスの場所は市民センターの体育館裏だったという。その場所を訪れて、宮迫を相手にキスを再現。視聴者は、暗い壁の前でおっさん2人が接吻する姿を見せられた格好だ。

 高校時代は、洋菓子チェーン店・タカラブネでバイトしていた女性と付き合っており、しょっちゅう迎えに行っていた。初体験は、大阪・梅田のラブホテル。安くて、ボロくて、裸電球にシャツをかぶせて室内を薄暗くすると、シャツに引火して、ボヤ騒ぎ寸前になったという。

 番組のBGMは、松本が学生時代に大好きだった山口百恵。インサートされる写真は“妹”が撮ったものか、街で見つけた犬や猫、金魚など。美しさより、懐かしさを醸しだしている。

 “お母ちゃん”が着用しているのは基本、センスのかけらもない服。原色、アニマル系、難解な柄、花模様、ゼブラ、縞、どどめ色など。世間が抱いているであろう大阪のオバハン像を崩すことなく、大阪のベッタベタな文化を、おっさんたちなりに再現している。

 脱力感たっぷりで、幼少期と故郷が恋しくなる“関西版『三丁目の夕日』”。土曜の深夜、な〜んとなく幸せになれてしまう昭和が、そこにある。

(伊藤雅奈子)

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