NHKがぬいぐるみに吐かせる社会の闇

NHKがぬいぐるみに吐かせる社会の闇

(提供:リアルライブ)

 ゲストは、ワケあり素人。だから、顔出しNG。そんな彼・彼女たちは、ブタ。聞き手は、モグラ。つまり、画面に出ているのは、ぬいぐるみオンリーだ。人間は1秒たりとも映らない。それがNHK Eテレで放映されているのが、ミソである。

 ゲストの話を“根掘り葉掘り”聞くから、番組名は『ねほりんぱほりん』。モグラとなっている聞き手の“ねほりん”は南海キャンディーズ・山里亮太、“ぱほりん”はYOU。ともに、性格や好物、趣味や苦手なものといったパーソナルな色付けまでされている。この番組は、2匹のモグラが1匹のブタの過去を聞きだす新感覚のトークバラエティ。Eテレお得意の人形劇が赤裸々トークと合体した格好だ。

 要となるのは、ゲストの選出。今年、シーズン1&2で登場したのは、情報番組やスキャンダル系雑誌などでその存在を知りはするものの、実態に詳しくない者ばかりだ。元薬物中毒者やプロ彼女、痴漢えん罪経験者やナンパ教室に通う男、パパ活女や地下アイドル、元子役、高額宝くじ当選者ほか。対話と実話は、パンチが効きすぎだ。

 単なるエピソードの羅列では、天下のNHKの名が廃る。チャラい実情の裏に秘められた悲哀までしっかりエグる。そのため、事前取材は綿密。先にトーク部分を収録し、それにブタ、モグラを1体につき2人の大人が椅子の下に入りこんで操演する。収録は単純に、2倍の時間がかかる。そのうえ、再現VTRまで作る。ほかの同業者にも取材する。わずか30分の着ぐるみトークだが、実に丹念に精巧に制作しているのだ。元薬物中毒者の経緯を振り返る際には、CHAGE&ASKA(当時)の大ヒットナンバー『YAH YAH YAH』がBGMで流れるなど、ポイントも突く。

 大学のサークルで7人の男性と次々関係を持った元サークルクラッシャーには、結婚・離婚、子どもとの悲しすぎる別れがあった。元子役は、声変わりした瞬間から仕事がゼロになった。50歳にもなって、3時間1万円のナンパ教室に通う男は、婚活パーティーで250回も失敗して、会社で好きだった部下にメール攻撃をすると、訴えられて、会社をクビになった。もちろん全部、実話である。そんなゲストの話を聞くにつれ、山里も自身の闇を放出したり、YOUも自身の離婚を語りだしたり。いい着地点となる。

 エンディングでは、「ニンゲンっておもしろい」という標語が映され、『ねほりんぱほりん人間予報』と題した次回の予告篇が流れる。このメロディは、NHKの子ども番組路線を踏襲したものだ。

 年内いっぱいはアンコール放送。ところが、年明け1月1日は午前0時10分から今年OA分が7本も放送。除夜の鐘が鳴り終わった直後から、濃すぎる一般ピーポーの話を聞けるというわけだ。安室奈美恵の“紅白出演”で虚脱したあと、Eテレでブタとモグラに感嘆するNHKの年末年始。それも、アリだろう。

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