「もう二度と、こんな精神状態までは行きたくない(笑)」マキタスポーツ、初の自伝的小説「雌伏三十年」執筆を振り返る

脳科学者の茂木健一郎がパーソナリティをつとめ、日本や世界を舞台に活躍しているゲストの“挑戦”に迫るTOKYO FMの番組「Dream HEART」(毎週土曜 22:00〜22:30)。
4月16日(土)、23日(土)の放送は、2週にわたって芸人、俳優、コラムニスト、作家として活動するマキタスポーツさんがゲスト出演。16日(土)の放送では、3月に自伝的小説「雌伏三十年」(文藝春秋)で作家デビューしたマキタスポーツさんが、同作について語りました。

茂木健一郎、マキタスポーツさん



1970年生まれ、山梨県出身のマキタスポーツさん。“音楽”と“笑い”を融合させた「オトネタ」を提唱し、各地で精力的にライブ活動をおこなっています。

独自の視点でのコラム・評論などの執筆活動も多く、著作には「越境芸人」「一億総ツッコミ時代」「すべてのJ-POPはパクリである」など。俳優としては、2012年に公開された映画「苦役列車」(山下敦弘監督)をきっかけに、第55回ブルーリボン賞新人賞、第22回東スポ映画大賞新人賞を受賞。その後も多くの出演作があり、近年では映画「前科者」「劇場版 きのう何食べた?」「面白南極料理人」などに出演。ジャンルを越えた幅広い活動をおこなっています。

◆人生で1本しか書けない小説

茂木:マキタスポーツさんはこの度、初の長編小説「雌伏三十年」(文藝春秋)を刊行されました。このあらすじをご紹介します。

「1988年、山梨から野望を抱いて上京した主人公・臼井圭次郎は、紆余曲折の末に仲間とバンドを結成。しかし、なかなか売れず、バンドは空中分解。おまけに女性関係や家族との間にもトラブル頻出。八方ふさがりの圭次郎に未来はあるのか……!?」

という青春漂流記になっています。“臼井圭次郎”という名前、実は意味があるんですよね?

マキタスポーツ:そうですね。臼井圭次郎……“薄い毛、イジろう”ということですね。そういう変わった名前を、親に付けられてしまったんですよね。本人がそれをすごくコンプレックスに思っていた。それで後々、ものの見事に薄い毛になっていく……というところまでは言ってもいいと思うんですけど。自分のアイデンティティとか、そういったものが元ネタになっているような。「(若い頃の自分に)イマイチ自信を持てなかった……」という意味で、“薄い毛、イジろう”という感じになったと、自分では思っています。

茂木:(笑)。「雌伏三十年」には、そのような自己批評とか、いろいろ心に残るとこがあったんですけど、バンド結成のところもすごく心打たれました。マキタスポーツさんは本当に音楽に造詣が深くて、実際に今やられているバンド「マキタ学級」は、ちょっとコミックバンドみたいな位置づけだとご自身でおっしゃっていますが。

マキタスポーツ:そうですね。(マキタ学級では)面白いことをやるのですが、実は比較的マジな歌も用意はしているんです。基本的にはコミックバンドですけどね。

茂木:(過去30年間のヒット曲から「ヒット曲の法則」を分析し、その法則に則って制作して)スマッシュヒットした「十年目のプロポーズ」も、物凄くいい楽曲だと思います。お出しになるときに、あえて「これはJ-POPのヒットの法則をやったんだ」という言い方をされるじゃないですか? あの発言は、(好きな物に対して)独特の距離感を置いているということですか?

マキタスポーツ:本当に鋭い指摘だと思います。僕なりの物事の接し方というのが、ちょっとトリッキーと言うか、おかしいんだと思うのですが、対象であるアーティストとか、そういうものを真っすぐ信仰して「大好きだ」という感じには、どうしてもなれなくて(笑)。

過去に好きだったものを並べて、似ているところの“法則”などを見つけて、「大体こんな感じでできているから素晴らしいんだ」というように、いちいち理屈を並べるんです。「それにならって作ってみたら、それっぽい曲ができるでしょ?」という。そういう屈折した愛し方と言うか、提示の仕方をしてしまうんですよ。

茂木:そういうネタバレを、普通のアーティストはきっと隠すものですよね。

マキタスポーツ:隠すし、たぶんそう言うところに興味がないんですよね。だから僕は、コード進行など「こういうパターンが多いよね」ということに気づくんですけど、純粋なミュージシャンとその話をしても、あまりピンと来ないみたいなんですよ。つまり、(楽曲は)自分が届けたいことを使うためのちょっとした道具とか、そういったものだとしか思っていない。

例えば、油絵を描く人が「使用する画材はこれでいきましょう」というのが、コード進行とか、そういったものぐらいに思っているのが彼らで、僕はそういうものがちょっと気になってしまうんですよね。

茂木:今、お話を伺っていて思ったのですが、「雌伏三十年」は、マキタスポーツさんがアーティストとして没入して書いてしまっているじゃないですか?

マキタスポーツ:あ、凄いです。そうですね、これは完全にそうだったと思います。テクニックとかそういうところは全然気にしていませんでした。

茂木:「こう書くと芥川賞いけるよ」とか「こう書くと直木賞いけるよ」という感じではないですもんね。

マキタスポーツ:そうですね(笑)。だからこれは1作限りだし、人生のうちに1本しか書けないものを書いた、という感じです。書いている間はすごく苦痛でしたし、大変でしたし、テクニックなんてところに(気持ちが)行くほど心にゆとりがあって書いていたわけではないですからね。

茂木:どこかで、「これは片道燃料だ」「1回しか書けない」とおっしゃっていましたね。

マキタスポーツ:そうですね。本当に1回しか書けないです。もう二度とこんな精神状態までは行きたくないですね(笑)。でもね、書きたいものとかはあるんですよ。できたら、これからも書いていきたいなとは思っています。

茂木:本当に思いの丈を込められた「雌伏三十年」を、ぜひ皆さんにもお読みいただきたいです。

次回4月23日(土)の放送も、引き続きマキタスポーツさんをお迎えしてお届けします。どうぞお楽しみに!

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聴取期限 2022年4月24日(日) AM 4:59 まで

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<番組概要>
番組名:Dream HEART
放送エリア:TOKYO FMをはじめとするJFN全国38局ネット
放送日時:毎週土曜22:00〜22:30
パーソナリティ:茂木健一郎
番組Webサイト:http://www.tfm.co.jp/dreamheart/

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