「W杯」で見えた日本代表の“足りない部分”…中西哲生が分析「今のままサッカーをやっていても未来はない」
2022年12月18日 20時30分TOKYO FM+
藤木直人、高見侑里がパーソナリティをつとめ、アスリートやスポーツに情熱を注ぐ人たちの挑戦、勝利にかける熱いビートに肉迫するTOKYO FMのラジオ番組「SPORTS BEAT supported by TOYOTA」(毎週土曜 10:00~10:50)。12月10日(土)の放送では、スポーツジャーナリスト/パーソナルコーチの中西哲生(なかにし・てつお)さんがゲストに登場。「W杯カタール大会」での日本代表の戦いを総括してくれました。

中西さんは、1969年生まれ、愛知県出身の53歳。大学卒業後の1992年にJリーグの名古屋グランパスに入団。2000年のシーズンをもって現役を引退し、その後はスポーツジャーナリストとしてさまざまなメディアで活躍。また、現在は久保建英(くぼ・たけふさ)選手、中井卓大(なかい・たくひろ)選手などのパーソナルコーチをつとめています。
◆決勝トーナメント1回戦・クロアチア戦を振り返る
藤木:日本代表の旅、終わっちゃいましたね。
中西:本当に残念でしたけど、選手たちは素晴らしいプレーを見せてくれました。僕は1982年からずっとワールドカップを見ているんですけど、今まで見てきたなかで一番心揺さぶられ、本当に感動した大会でした。日本の戦いぶりに関して言うと、本当に素晴らしかったと思います。
藤木:決勝トーナメント1回戦のクロアチア戦、今までと違って日本が先制しました。
中西:ここも、明らかに日本が成長した部分だと思います。それに、クロアチア戦は、試合の冒頭からセットプレーをけっこう工夫してやっていたんですよね。グループリーグでも、いろいろなセットプレーがあったんですけど、決勝トーナメント1回戦で見せたような形というのは、実は(ここまでの試合で)見せていなかったんです。そこも先制できた理由だと思います。
藤木:(セットプレーに)変化がありましたね。
中西:単純に“コーナーキックをなかに蹴る”というのではなくて、何人かにパスをつなぎながらクロスボールを入れる、みたいなことをやっていましたね。
藤木:これを(クロアチア戦まで)隠していた?
中西:隠していたと思います。
藤木:そして、ゴールを決めたのが前田大然(まえだ・だいぜん)選手。今まで、あれだけ献身的にチームに貢献してくれたので、うれしかったですよね。
中西:まず、堂安律(どうあん・りつ)選手からのボールを吉田麻也(よしだ・まや)選手が右のアウトに当てて折り返したんですけど、吉田選手が狙ってやったのか偶然落ちてきたのかはちょっと分かりませんが、ちゃんとこぼれてきた場所にいて、正確に決められた前田選手の素晴らしさだと思いますね。
藤木:でも、逆に先制してしまったことで、今まで(グループリーグで勝利した)ドイツ戦やスペイン戦では、ビハインドの状態でハーフタイムに入って、そこで戦略を変えたじゃないですか。(クロアチア戦での)日本代表は、延長もあったからか、(ハーフタイム後も戦略を)変えられなかったですよね?
中西:おっしゃる通りで、今回の日本代表は“背水の陣になったときに強くなる”と僕も理解はできていましたし、“1点取ったときにどうなるか”というのは僕もずっと考えていたことなんですけど、あのクロアチアのゴールは、(日本代表の何が)ダメとかではなくて、やっぱり決めたほうを称賛するべきですね。
◆ゴールキーパーのクオリティが明らかに上がっている

藤木:そして延長でも決着がつかず、PK戦に。やっぱりプレッシャーがかかるものなんですか?
中西:かなりかかりますね。試合中のPKは、もし外しても取り返す余地はあるんですけど……わかりやすい例で言うと、バスケットボールのフリースローに似ていると思いますね。“決めて当たり前”ということがネガティブに働くところですよね。
また近年は、ゴールキーパーのクオリティが明らかに上がってきています。あと、(キーパーの)サイズが大きくなっている。今までは、(キッカーは)速いボールをギリギリに蹴れば入るというイメージがあったんですけど、今は、速いボールをギリギリに蹴っても、止められちゃう可能性があるんですよ。
そうなると、よりギリギリを狙わなきゃいけなくなり、ポストに当たるなどして外してしまう可能性が高くなっている。キーパーの能力がかなり上がったことで、PKが決まる確率が少し下がってきている感はあると思いますね。
◆日本代表に足りなかった部分とは?
中西:今回、日本がクロアチアに敗れた理由の1つとして、クロアチアは“後出しじゃんけん”のように常に相手を見ながらやり方を変えられるチームだったんですよ。
藤木:うまさがあった?
中西:はい。それが、これからのワールドカップで勝つに必須になってくると思うんです。もちろん、日本がやったサッカーも素晴らしかったと思いますけど、今のままこのサッカーをやっていても未来はないと思います。
ちゃんとボールを握れるようにならなきゃいけないし、常に相手を見ながらやり方を変えられる、後出しじゃんけんができるチームにならなきゃいけない。こちらが(やり方を)変えたら、相手も変わるわけですよ。
だから、向こうが変わったら、またこちらも変わらなきゃいけないんです。つまり、試合中に何度も何往復しても、また違う勝ちの手を出せるようなチームにならなきゃいけない。
帰ってきたときの会見で、森保一(もりやす・はじめ)監督が、「ちゃんとその準備はしてきた」と言っていたんですね。「ちゃんとA、B、C……といろいろな手を用意してきたけど、それが足りなかった」と。だから、AからMぐらいまでのプランを立てないと勝てないのかもしれないし、それをチームとして、まず監督として持っていなきゃいけないんですけど、プラスアルファ、グループとして……。
藤木:ピッチ上の選手たちが対応しなきゃいけない部分?
中西:そう。ハーフタイムがなかったら、途中で(やり方を)変えられないわけです。だから、目の前で起こったことに対して瞬時に後出しジャンケンができる。これを、チームでも、グループでも、個人でもできなきゃいけないんですよ。となると、やるべきことは大体わかってきますよね?
藤木:……どうすればいいですか?
中西:ボールを握って、ちゃんと勝てるチームにしなきゃいけないし、今回のように守備でリズムを作って、そこからショートカウンターでゴールも獲らなきゃいけない。ありとあらゆるバリエーションを使えるようにならなきゃいけないし、それを、みんながあうんの呼吸でできないと厳しい。
あと、空気を読まない人も必要ですよね。それは三笘薫(みとま・かおる)選手みたいに“自分で行ける”ということ、そういう人がいると相手も読めなくなるので。その組み合わせ(を多く持つこと)ですね。それはみんな、今回の経験である程度わかったと思います。
藤木:それぞれが今回の悔しさをバネに成長したら、日本代表は相当強くなるんじゃないかと思います。
中西:今回の大会で何が起こったかというと、ワールドカップ本大会で、ワールドカップ優勝経験国にも勝てた。この結果は、ものすごく大きな自信を掴んだと思うんですよね。また、今回の経験によって、次回のワールドカップは、そのスタート地点が上がりますよね。それが非常に大きい。そこが、今回のワールドカップで一番大きく自信につながったところだと思います。
次回12月24日(土)は、”ミスターパーフェクト”こと槙原寛己さんをお迎えします。お楽しみに!
<番組概要>
番組名:SPORTS BEAT supported by TOYOTA
放送日時:毎週土曜 10:00~10:50
パーソナリティ:藤木直人、高見侑里
番組Webサイト:https://www.tfm.co.jp/beat/

(左から)藤木直人、中西哲生さん、高見侑里
中西さんは、1969年生まれ、愛知県出身の53歳。大学卒業後の1992年にJリーグの名古屋グランパスに入団。2000年のシーズンをもって現役を引退し、その後はスポーツジャーナリストとしてさまざまなメディアで活躍。また、現在は久保建英(くぼ・たけふさ)選手、中井卓大(なかい・たくひろ)選手などのパーソナルコーチをつとめています。
◆決勝トーナメント1回戦・クロアチア戦を振り返る
藤木:日本代表の旅、終わっちゃいましたね。
中西:本当に残念でしたけど、選手たちは素晴らしいプレーを見せてくれました。僕は1982年からずっとワールドカップを見ているんですけど、今まで見てきたなかで一番心揺さぶられ、本当に感動した大会でした。日本の戦いぶりに関して言うと、本当に素晴らしかったと思います。
藤木:決勝トーナメント1回戦のクロアチア戦、今までと違って日本が先制しました。
中西:ここも、明らかに日本が成長した部分だと思います。それに、クロアチア戦は、試合の冒頭からセットプレーをけっこう工夫してやっていたんですよね。グループリーグでも、いろいろなセットプレーがあったんですけど、決勝トーナメント1回戦で見せたような形というのは、実は(ここまでの試合で)見せていなかったんです。そこも先制できた理由だと思います。
藤木:(セットプレーに)変化がありましたね。
中西:単純に“コーナーキックをなかに蹴る”というのではなくて、何人かにパスをつなぎながらクロスボールを入れる、みたいなことをやっていましたね。
藤木:これを(クロアチア戦まで)隠していた?
中西:隠していたと思います。
藤木:そして、ゴールを決めたのが前田大然(まえだ・だいぜん)選手。今まで、あれだけ献身的にチームに貢献してくれたので、うれしかったですよね。
中西:まず、堂安律(どうあん・りつ)選手からのボールを吉田麻也(よしだ・まや)選手が右のアウトに当てて折り返したんですけど、吉田選手が狙ってやったのか偶然落ちてきたのかはちょっと分かりませんが、ちゃんとこぼれてきた場所にいて、正確に決められた前田選手の素晴らしさだと思いますね。
藤木:でも、逆に先制してしまったことで、今まで(グループリーグで勝利した)ドイツ戦やスペイン戦では、ビハインドの状態でハーフタイムに入って、そこで戦略を変えたじゃないですか。(クロアチア戦での)日本代表は、延長もあったからか、(ハーフタイム後も戦略を)変えられなかったですよね?
中西:おっしゃる通りで、今回の日本代表は“背水の陣になったときに強くなる”と僕も理解はできていましたし、“1点取ったときにどうなるか”というのは僕もずっと考えていたことなんですけど、あのクロアチアのゴールは、(日本代表の何が)ダメとかではなくて、やっぱり決めたほうを称賛するべきですね。
◆ゴールキーパーのクオリティが明らかに上がっている

日本代表について熱く語る中西哲生さん
藤木:そして延長でも決着がつかず、PK戦に。やっぱりプレッシャーがかかるものなんですか?
中西:かなりかかりますね。試合中のPKは、もし外しても取り返す余地はあるんですけど……わかりやすい例で言うと、バスケットボールのフリースローに似ていると思いますね。“決めて当たり前”ということがネガティブに働くところですよね。
また近年は、ゴールキーパーのクオリティが明らかに上がってきています。あと、(キーパーの)サイズが大きくなっている。今までは、(キッカーは)速いボールをギリギリに蹴れば入るというイメージがあったんですけど、今は、速いボールをギリギリに蹴っても、止められちゃう可能性があるんですよ。
そうなると、よりギリギリを狙わなきゃいけなくなり、ポストに当たるなどして外してしまう可能性が高くなっている。キーパーの能力がかなり上がったことで、PKが決まる確率が少し下がってきている感はあると思いますね。
◆日本代表に足りなかった部分とは?
中西:今回、日本がクロアチアに敗れた理由の1つとして、クロアチアは“後出しじゃんけん”のように常に相手を見ながらやり方を変えられるチームだったんですよ。
藤木:うまさがあった?
中西:はい。それが、これからのワールドカップで勝つに必須になってくると思うんです。もちろん、日本がやったサッカーも素晴らしかったと思いますけど、今のままこのサッカーをやっていても未来はないと思います。
ちゃんとボールを握れるようにならなきゃいけないし、常に相手を見ながらやり方を変えられる、後出しじゃんけんができるチームにならなきゃいけない。こちらが(やり方を)変えたら、相手も変わるわけですよ。
だから、向こうが変わったら、またこちらも変わらなきゃいけないんです。つまり、試合中に何度も何往復しても、また違う勝ちの手を出せるようなチームにならなきゃいけない。
帰ってきたときの会見で、森保一(もりやす・はじめ)監督が、「ちゃんとその準備はしてきた」と言っていたんですね。「ちゃんとA、B、C……といろいろな手を用意してきたけど、それが足りなかった」と。だから、AからMぐらいまでのプランを立てないと勝てないのかもしれないし、それをチームとして、まず監督として持っていなきゃいけないんですけど、プラスアルファ、グループとして……。
藤木:ピッチ上の選手たちが対応しなきゃいけない部分?
中西:そう。ハーフタイムがなかったら、途中で(やり方を)変えられないわけです。だから、目の前で起こったことに対して瞬時に後出しジャンケンができる。これを、チームでも、グループでも、個人でもできなきゃいけないんですよ。となると、やるべきことは大体わかってきますよね?
藤木:……どうすればいいですか?
中西:ボールを握って、ちゃんと勝てるチームにしなきゃいけないし、今回のように守備でリズムを作って、そこからショートカウンターでゴールも獲らなきゃいけない。ありとあらゆるバリエーションを使えるようにならなきゃいけないし、それを、みんながあうんの呼吸でできないと厳しい。
あと、空気を読まない人も必要ですよね。それは三笘薫(みとま・かおる)選手みたいに“自分で行ける”ということ、そういう人がいると相手も読めなくなるので。その組み合わせ(を多く持つこと)ですね。それはみんな、今回の経験である程度わかったと思います。
藤木:それぞれが今回の悔しさをバネに成長したら、日本代表は相当強くなるんじゃないかと思います。
中西:今回の大会で何が起こったかというと、ワールドカップ本大会で、ワールドカップ優勝経験国にも勝てた。この結果は、ものすごく大きな自信を掴んだと思うんですよね。また、今回の経験によって、次回のワールドカップは、そのスタート地点が上がりますよね。それが非常に大きい。そこが、今回のワールドカップで一番大きく自信につながったところだと思います。
次回12月24日(土)は、”ミスターパーフェクト”こと槙原寛己さんをお迎えします。お楽しみに!
<番組概要>
番組名:SPORTS BEAT supported by TOYOTA
放送日時:毎週土曜 10:00~10:50
パーソナリティ:藤木直人、高見侑里
番組Webサイト:https://www.tfm.co.jp/beat/
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