【漢字トリビア】「拝」の成り立ち物語

【漢字トリビア】「拝」の成り立ち物語

【漢字トリビア】「拝」の成り立ち物語

「漢字」、一文字一文字には、先人たちのどんな想いが込められているのか。時空を超えて、その成り立ちを探るTOKYO FMの「感じて、漢字の世界」。今回の漢字は「拝む」。「礼拝」「拝見する」の「拝(ハイ)」とも読む漢字です。
(TOKYO FM「感じて、漢字の世界」2019年3月9日(土)放送より)



「拝」という字は、まず「手」へんを書き、その右側に四本の横線と、それを貫く縦線を一本をひきます。
この部分は、一本の茎から花や葉っぱが生い茂る植物の様子を描いたもの。
そこに「手」を意味する手へんを添えて、人がかがみ、手でその草花を摘む様子を表しています。
その姿が、頭を下げて礼をし、おがむ姿勢に似ていることから、「おがむ」という意味をもつ漢字になりました。
そのほか「お辞儀をする」「たずねる」「受ける」という意味が派生し、また、相手に敬意を表すため、自分の動作の上につけて使うようになりました。
ちなみに、いにしえの中国において宮廷で働く人々は、任命式で頭を地につけて拝命するのが慣例だったといいます。

草木の息吹を感じ始める頃、いにしえの人たちは「野遊(のあそび)」に出かけるようになります。
それは、春の訪れを祝って野山で宴を開き、草花を摘む遊び。
芹、嫁菜、蕗の薹はかぐわしく、すみれ、れんげ、なずなは愛らしい。
人々は大地にひざまずき、そのかすかな温もりを感じながら、春の恵みを摘み取っていきます。
芽吹きをうながし育てる季節の訪れに、心からの感謝を。
彼らは頭を垂れて、神さまやご先祖さまを拝むのです。

ではここで、もう一度「拝」という字を感じてみてください。

作家で写真家の藤原新也は、その著書でこう記しています。
≪人は自らの人生の中で関わった人の死に対し、「おそらく心のいずこかにおいて残念があり」、その心残りを浄化することこそが、死者と自分自身の魂の供養だと思っているのである―。≫

仏壇やお墓に供えるのは、厳しい寒さや風雪に耐えて咲いた野の草花。
その姿は修行に耐え忍ぶ仏教の教えと重なり、精進することを誓う意味もあるといいます。
でも、何より草花の健気な美しさは、あの世とこの世の者たちを等しくなぐさめ、離れていても互いを想い、慈しむ心を呼び覚ますのです。
おだやかな心で手を合わせる人々に、春の光はやさしく、降り注ぎます。

漢字は、三千年以上前の人々からのメッセージ。
その想いを受けとって、感じてみたら……、
ほら、今日一日が違って見えるはず。

*参考文献
『常用字解 第二版』(白川静/著 平凡社)
『なにも願わない手を合わせる』(藤原新也/著 東京書籍)


3月16日(土)の放送では「感」に込められた物語を紹介します。お楽しみに。


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聴取期限 2019年3月17日(日) AM 4:59 まで

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<番組概要>
番組名:感じて、漢字の世界
放送エリア:TOKYO FMをはじめとする、JFN全国38局ネット
放送日時 :TOKYO FMは毎週土曜7:20〜7:30(JFN各局の放送時間は番組Webサイトでご確認ください)
パーソナリティ:山根基世
番組Webサイト:http://www.tfm.co.jp/kanji/

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