愛と経済の伝道師“宗さま”こと宗正彰「4月からの“生活変化”と2年連続上昇の“公示地価”」を解説

本部長・マンボウやしろと秘書・浜崎美保がパーソナリティをつとめるTOKYO FMのラジオ番組「Skyrocket Company」。毎月第2水曜日に、我々が知っているようでよく知らない「お金」や「経済」の仕組みなどを、専門家の方に詳しく解説してもらうコーナー「スカロケ資産運用部」をお届けしています。

4月12日(水)の放送では、愛と経済の伝道師“宗さま”こと三井住友DSアセットマネジメント株式会社フェローの宗正彰(むねまさ・あきら)さんに、「4月からの“生活変化”と2年連続上昇の“公示地価”」というテーマでお話を伺いました。

(左から)宗正彰さん、マンボウやしろ、浜崎美保



◆この春も食品の値上げラッシュ!

浜崎:宗さま、今回は「4月からの“生活変化”と2年連続上昇の“公示地価”」についてお話しいただけるということですが。

やしろ:新年度に入りました。1年前の2022年4月は食品の値上げラッシュがありましたが、今年2023年の4月はどんな感じでしょうか?

宗正:特に気になるのが食品ですよね。この4月の食品の値上げの数は5,100品目。なんと昨年4月の4倍です。長引く原材料高が主な理由なんですが、最近のトレンドとしては短い期間で小刻みな値上げが目立ちます。

一気に大幅な値上げをして消費者に多大な影響を与えるよりも、原材料が値上がりした分だけ、その都度価格に反映するというやり方です。食品メーカーからすれば、値段を一気に上げてしまうと、客離れも進んでしまいますからね。

今年の前半、1月~6月にかけて予想される食品値上げの品目数は1万7,000を超えそうです。昨年の同じ期間の2倍以上。昨年は1年間で2万5,000を超える食品の値上げがありましたが、今年は8月の時点で早くも2万品目に達しそうですね。

やしろ:今の値上がりは一時的なものではなくて、しばらくはちょっとずつ継続的に上がっていく傾向ですかね。

宗正:そうですね。(逆に)これまでが上がらなさ過ぎた、イレギュラーな期間が続いていたと思ったほうがいいですね。

やしろ:デフレが長引いて商品価格が変わらなさ過ぎたと。今はちょっとずつ物価は上がっていますが、あとは賃金の上昇が必要ですね。

宗正:はい。景気の改善サイクルには欠かせない要素です。

やしろ:どのような食品が、この4月以降に値上がりするのでしょうか。

宗正:例えば、みんな大好きマヨネーズ。値上げは2021年以降で4回目なんですが、原材料が食用油、お酢、卵ですからね。最近、値上がりしているものばかりです。特に外食大手では、卵メニューの提供を止めるお店も出てきているくらいですからね。

他には、おつまみやお弁当には欠かせないハム・ソーセージ。値上げ幅は5%から20%と種類によって幅があります。

やしろ:それは、でかい。

宗正:最も影響が大きいと思われるのが、小麦がまた値上がりします。海外から輸入された小麦は、一旦政府が買い取って、製粉会社に売り渡す、これが日本の小麦流通の仕組みです。

この売渡価格が4月から、その前の半年間と比べて、平均で約6%程度の値上がりです。食パンやパスタなど小麦由来の食品は、夏場辺りからタイムラグを置いて値上がりしそうです。

◆マイナ保険証、デジタル給与支払いも加速

やしろ:値上げ以外にも、この4月から私たちの生活に影響を与えそうな変化はありますか?

宗正:マイナンバーカードを保険証として使う「マイナ保険証」。2021年10月からスタートしましたが、この4月からはさらなる普及を目指して、「マイナ保険証」で医療費を支払わない場合の支払額が上乗せされます。

一般的な3割負担の場合、窓口での支払額が6円ほど上乗せになります。ただ、このシステムの導入率が全国の医療機関の6割程度なので、当然システムが導入されていない残りの4割の医療機関での上乗せはありません。それから、給与のスマホ決済払いが可能になります。

やしろ:新たなルールとして、デジタル給与支払いがOKになるということですね?

宗正:はい。これまでの給与の支払いは銀行振込が主体ですが、スマホの決済アプリでも可能になるということです。ただ、スマホの決済業者が厚生労働省に申請ができるようになるのが4月からなので、「決済アプリで給料を受け取り始めた」なんて声が聞こえ始めるのは、年末くらいからかなと。

やしろ:これは大きなお金の流れの変化ですね。

宗正:メリットとしては、いちいち決済アプリなどに現金をチャージする手間も省けますし、ポイントが付きます。

やしろ:今までは手数料がかかっていたところが、逆にポイントが付くようになると。

宗正:受け取ったときにポイントが付くケースもあるでしょうし、それを使って買い物をするときもポイントが付くと。企業側のメリットとしては、給与振込の手数料が決済アプリのほうが安い場合も出てきます。

あとはデジタル化推進の観点から、企業イメージもアップします。ブランディングに好影響なんて効果もありますね。

◆土地の価格も上昇

やしろ:最近、また土地の価格が上昇しているそうですが、実際のところを詳しく教えてください。

宗正:今年の1月1日時点の公示地価が3月の下旬に発表されました。公示地価は、主に土地の売買の目安として利用されるもので、全国2万6,000もの調査地点があるんです。今年はその内の58%の地点で上昇しました。

昨年に続いて2年連続の上昇です。全国平均で前年比1.6%の上昇という今年の伸び幅は、リーマンショック前の2008年(リーマンショックはその年の秋)の1.7%上昇に次ぐ高い伸びです。

いかに新型コロナの影響が大きかったかということですよね。ちなみに、この公示地価は、住宅地や商業地など、用途別に数字が示されます。

やしろ:住宅地と商業地それぞれの公示地価の上昇で、特徴的なことは何かありましたか。

宗正:まずは住宅地ですが、前年比で1.4%の上昇です。都市部の上昇に加えて、郊外の住宅地の上昇が目立っていますね。テレワークが浸透したことに加えて、最近は原則出社に戻している企業も増えています。

やしろ:多いですよね。リスナーのみなさんの声を聞いても、そう思います。

宗正:その影響でしょうね、交通利便性の高い郊外の地価が上昇しています。距離というよりは、通勤時間重視なのかもしれません。それから主立ったところでは、東京・大阪・名古屋の3大都市圏の地価が上がっているのはもちろんなのですが、3大都市圏以外の札幌・仙台・広島・福岡といった4都市、地方の政令指定都市で地価の上昇が目立ちます。

やしろ:これはどういった動きなんですか?

宗正:総じて交通インフラがこのところ整備されたり、大型の再開発が進んでいたりするケースが多いですね。例えば北海道の北広島市。札幌近郊のこの辺りはプロ野球の新球場の開業で、複数の住宅地の調査地点で地価が3割も上昇しています。

やしろ・浜崎:3割はすごい。

宗正:それから商業地の方ですが、前年比で1.8%の上昇です。オフィスや店舗が集まる都市部が中心ですね。東京で言えば、ここ半蔵門スタジオがあるのは千代田区ですよね。千代田区に中央区と港区を足して、都心3区なんていった呼び方をしますが、都心3区が揃って上昇したのは3年ぶりのことなんです。

他には全国的に東京の浅草や京都の祇園といった観光地を中心に地価が上昇しています。外国人観光客が戻ってきた影響ですね。

やしろ:本当に戻ってきましたもんね。5月からコロナ規制が今よりも緩和される予定ですが、それによって土地の価格に影響はあるものなんでしょうか。

宗正:大いにあるでしょうね、人が集まる場所の地価は上昇しますから。コロナ禍前の都市部の地価は安定的に上昇していましたが、主な要因の1つは低い金利水準でした。

借入金利が低いので、購入した不動産を人に貸して得られる賃料収入を取得価額で割った「投資利回り」は高水準。人に貸すために資金を借りて不動産を買う、このサイクルが地価の上昇につながりました。つまり、ここから先は金利の動向も大きなポイントになります。

日本の不動産の投資総額に占める海外投資家の比率は、3割を超えると言われます。海外投資家の投資環境の変化も、ここから先の大きなポイントの1つです。

例えば先月3月にはアメリカのシリコンバレー銀行の破綻で、欧米を中心に金融システム不安が起きたり、マーケットもそれに伴って動揺しました。その他に経済の世界で言われているのは、昨年以降の欧米の急速な利上げと、それに伴う景気後退懸念。海外から日本の不動産に向かう投資資金が細る可能性も見え隠れしています。この辺りも、地価をはじめ日本の不動産価格に直結する動きになりそうです。

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<番組概要>
番組名:Skyrocket Company
放送日時:毎週月~木曜17:00~19:52(※コーナーは毎月第2水曜18:15ごろ~)
パーソナリティ:本部長・マンボウやしろ、秘書・浜崎美保
番組Webサイト:http://www.tfm.co.jp/sky/

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