【漢字トリビア】「庭」の成り立ち物語

【漢字トリビア】「庭」の成り立ち物語

【漢字トリビア】「庭」の成り立ち物語

「漢字」、一文字一文字には、先人たちのどんな想いが込められているのか。時空を超えて、その成り立ちを探るTOKYO FMの「感じて、漢字の世界」。今日の漢字は「庭」、「庭園」「校庭」の「庭(テイ)」です。庭で過ごすひとときが心地よい季節になりました。



「庭」という字は、高い崖に立つ家の形をかたどった「广(まだれ)」の下に、
「法廷」「宮廷」の「廷」という字を書きます。
この「廷」とは、「えんにょう」に音を表す「てい」と書きますが、
「えんにょう」は「足の動き」を意味し、
「てい」は、儀礼の場で正装する人の姿を描いたものです。
ここでは、祭壇にいる神さまにお神酒を注ぐしぐさを表しています。
その人を覆う「まだれ」は、神事を執り行う場所の屋根。
つまり「庭」という字はもともと、
儀礼を行う霊廟が立つ、広い場所を意味する漢字だったのです。

いにしえの日本でも、庭は祭祀を行う神聖な場所でした。
火を焚き、供物をささげ、巫女が踊る。
真摯な祈りが通じたそのとき、
青々と茂る庭の木々に、神が舞い降りてくるのです。

いつの世も、庭は、その広い懐へ人々を迎え入れてくれました。
仏教の世界観を表現する枯山水の庭園に、
苦しみのない安楽の世を再現した浄土式庭園。
貴族たちが宴を催し、歌を詠んだ寝殿造りの庭、
心の塵を散らし、客人を茶室へ導く茶庭(ちゃてい)や、
文豪が小説の構想を練った温泉宿の日本庭園。
庭とは、限りなく天国に近い現し世だったのです。

今日の漢字は「庭」、「庭園」「校庭」の「庭(テイ)」。
神聖な儀式を行う広い場所を意味する漢字で、
のちに、樹木を植えたり池を作ったりして集う憩いの庭や、
学校の運動場などを表すときにも使うようになりました。

ではここで、もう一度「庭」という字を感じてみてください。

―庭仕事とは、魂を解放する瞑想である。
これは、平和と自由を求め続けた作家、ヘルマン・ヘッセの言葉。
南スイスのモンテニョーラ村に構えた自宅の庭で過ごす時間が、
苦悩に満ちた彼の人生を救ったといわれています。

日差しに包まれ、木陰でまどろみ、夢をみる。
風に吹かれ、愛する人のために花を摘む。
世界的文豪が探し求めた幸福の形は、
私たちの想いとさして変わらないようです。

ヘッセは、こんな言葉も残しています。
―神の大きな庭の中で、
私たちは喜びとともに花咲いて、咲き終わろう。

漢字は、三千年以上前の人々からのメッセージ。
その想いを受けとって、感じてみたら・・・
ほら、今日一日が違って見えるはず。

*参考文献 『常用字解(第二版)』(白川静/平凡社) 

5月18日(土)の放送では「企」に込められた物語を紹介します。お楽しみに。


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聴取期限 2019年5月19日(日) AM 4:59 まで

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<番組概要>
番組名:感じて、漢字の世界
放送エリア:TOKYO FMをはじめとする、JFN全国38局ネット
放送日時 :TOKYO FMは毎週土曜8:20〜8:30(JFN各局の放送時間は番組Webサイトでご確認ください)
パーソナリティ:山根基世
番組Webサイト:http://www.tfm.co.jp/kanji/

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