村上春樹が語るビートルズとの出会い「これから新しい世界が始まるんだ」

村上春樹が語るビートルズとの出会い「これから新しい世界が始まるんだ」

村上春樹が語るビートルズとの出会い「これから新しい世界が始まるんだ」

作家・村上春樹さんがディスクジョッキーをつとめたラジオ番組「村上RADIO〜The Beatle Night〜」が、6月16日(日)にTOKYO FMにて放送されました。この番組では村上さん自らディレクターもつとめ、リスナーに“聴いてもらいたい曲”をかけています。
第6回の放送となる今回は、村上さんが選んださまざまなアーティストによる、ビートルズのカバー曲を紹介しました。本記事では、そのなかから前半の2曲についてお話しされた概要を紹介します。


◆「Madison Time」Donald Fagen with Jeff Young & the Youngesters
今夜はビートルズの初期ヒットソングのカバー特集です。The Beatle Night。どうして初期だけかっていうと、あまりにもヒットソングの数が多いからです。だから今回は範囲をぐっと絞って、アルバム『ラバー・ソウル』以前に発表されたものだけに限りました。素敵な曲ばかりですよ。

ビートルズは『ラバー・ソウル』以降の曲がだいたい高く評価されているし、それはそのとおりなんです。『ラバー・ソウル』以降のビートルズの曲は、歌詞の内容も深くなっているし、コード進行も洗練されています。でも、初期のビートルズの音楽には、“大きく息を吸い込んで吐いたら、それがそのまま素敵な音楽になっていた”みたいなナチュラルな感覚があります。今夜は、ドラッグ・カルチャーに足を踏み入れる以前のビートルズがつくった、若々しくオリジナルな音楽を、ひと味違うカバーで楽しんでください。

◆「Tu Perds Ton Temps(Please Please me)」Petula Clark
ペトゥラ・クラークがフランス語で歌う「プリーズ・プリーズ・ミー」。フランス語の題は“Tu Perds Ton Temps(チュ・ペル・トントン)”。この「チュ・ペル・トントン」という繰り返しは、気持ちよく耳に残って、僕は個人的にわりと好きです。
なんでまたフランス語で、と思われるかもしれませんが、ペトゥラ・クラークはカナダ人だから、フランス語でカバーしても、とくに不思議はないんです。“Tu Perds Ton Temps”は、英語で言えば“You are wasting your time”、「それは時間の無駄よ」ということです。初期のビートルズの曲は、みんな勝手な歌詞をつけて、適当に歌っていたんです。あとになると管理が厳しくなりますけど。

僕が同時代的に初めて聴いたビートルズの曲は、実はこの「プリーズ・プリーズ・ミー」。僕はこのとき14歳くらいだったんだけど、たしか米軍放送のFEN(Far East Network)で聴いて、「これはすごい」と一発で思いました。何がどうすごかったか? それはよくわかりません。
そのときもよくわからなかったし、今でもまだよくわからない。ただ「この音楽の響きはこれまでにはなかったものだ」ということだけは、きっぱりと確信できました。それが僕のビートルズの音楽に対する第一印象でした。「これから新しい世界が始まるんだ」みたいな、わくわくした気分がありました。それは、ビーチボーイズの「サーフィンUSA」を初めて聴いたときにも感じたことです。実際に時代が大きく動いていたんでしょうね。

◆「I Saw Her Standing There」Little Richard
リトル・リチャードが歌う「I Saw Her Standing There」。へえ、リトル・リチャードがこんな曲を歌うんだ、と意外に思うんだけど、しっかりシャウトして、ソウルしています。
ジョン・レノンはリトル・リチャードの音楽が大好きで、初期のビートルズは彼の曲をいくつかカバーしています。「カンザス・シティー」とか「ロング・トール・サリー」とか。だからリトル・リチャードがビートルズの曲を逆にカバーし返してくれたことは、彼らにとってはすごく嬉しかったと思います。「え、あのリトル・リチャードが僕らの曲をカバーしてくれるわけ?」みたいな感じで。

ジョン・レノンが少年時代、学校の帰りに友だちの家に寄って、初めて「ロング・トール・サリー」を聴いたとき、あまりの衝撃に声も出なかったということです。そういうのが彼の音楽の原体験になっています。この「I Saw Her Standing There」をつくったのは、ジョンではなくポールですが、ベースのリフ部分はチャック・ベリーのある曲から、そのままパクったんだと、あとになってポールは告白しています。

いいんです。みんなパクるんです、多かれ少なかれ、最初は。
そういえば、ビーチボーイズだって、チャック・ベリーからけっこうパクってますよね。

この記事で紹介できなかった選曲やほかの内容は、以下の記事よりチェックできます。
??村上春樹「ノルウェイの森」は、「ビートルズの音楽にインスパイアされて…」
??村上春樹 高校時代の女の子に「返せていないレコード」は…?
??村上春樹「もう一生聴かなくてもかまわない」と思ったビートルズの曲は?


----------------------------------------------------
【??この記事の放送回をradikoタイムフリーで聴く??】
聴取期限 2019年6月24日(月)AM 4:59 まで
スマートフォンは「radiko」アプリ(無料)が必要です。⇒詳しくはコチラ
※放送エリア外の方は、プレミアム会員の登録でご利用頂けます。
----------------------------------------------------

<番組概要>
番組名:村上RADIO〜The Beatle Night〜
放送日時:2019年6月16日(日)19:00〜19:55
放送局:TOKYO FMをはじめとするJFN系列全国38局ネット
パーソナリティ:村上春樹
番組Webサイト:http://www.tfm.co.jp/murakamiradio/

関連記事(外部サイト)