古典文学にも登場…カラスが“憎たらしい”と表現される理由とは?

古典文学にも登場…カラスが“憎たらしい”と表現される理由とは?

古典文学にも登場…カラスが“憎たらしい”と表現される理由とは?

さまざまな趣味と娯楽の奥深い世界をご紹介するTOKYO FMの番組「ピートのふしぎなガレージ」。10月19日(土)放送のテーマは「カラス」。今回は、慶應義塾大学 文学部教授の佐藤道生さんに「カラスが“憎たらしい”と表現される理由」について伺いました。
(TOKYO FM「ピートのふしぎなガレージ」2019年10月19日(土)放送より)

※写真はイメージです



── カラスは日本の古典文学にも登場するんですか?

普通、日本の古典文学に出てくる鳥は、春ならウグイス、秋なら雁など季節感を出すものとして登場します。でもカラスは昔からそこらじゅうにいたので、文学の題材にはならなかったんです。

でも江戸時代になると、松尾芭蕉がカラスの句をいくつも詠んでいます。「枯れ枝に 烏のとまりけり 秋の暮」「つね憎き烏も雪の朝(あした)哉」といった具合です。後者は「いつもは憎たらしいカラスも、雪の降った朝は白と黒のコントラストがとても趣深い」という意味ですね。

── 江戸時代もカラスはあまり好かれていなかったんですね

そうなんですが、現代的な“ゴミを撒き散らすから”みたいな意味とはちょっと違います。朝のカラスは「ギャーギャー」とうるさく鳴くので、恋人同士が迎えるロマンチックな朝を邪魔するものとして“憎たらしい”と表現されました。

そのルーツは中国の古典にあります。中国に唐代伝奇小説と呼ばれる通俗小説群があって、それが遣唐使のお土産として日本で非常に人気を博したんです。そして、そのなかに張?(ちょうさく)の「遊仙窟」という作品がありました。黄河の水源を極める旅の途中で仙郷に迷い込み、美人姉妹の妹と想いを遂げて再び旅に出る……というお話ですが、その2人の情事を中途半端に終わらせる憎たらしい役目をカラスが担います。

── それは恨まれても仕方ないですね(笑)

「遊仙窟」の「あな憎のやまめ烏の夜な夜なに人を驚かす」という有名なフレーズは、平安時代に「新撰朗詠集」という詩歌のアンソロジーに収められ、日本で語り継がれました。最初の芭蕉の句に出てくる「つね憎き烏」というのも「遊仙窟」を踏まえています。「遊仙窟」は岩波文庫にも入っているので、ぜひご一読ください。

高杉晋作の有名な都々逸「三千世界の烏を殺し 主と朝寝がしてみたい」も「遊仙窟」が背景にあります。さらにその都々逸を踏まえた落語が「三枚起請」です。3人の男が1人の遊女から「年が明けたら夫婦になる」という同じ起請文を貰っていたことに気づき、遊女を問い詰めます。すると遊女は「男を騙すのが商売だ」と開き直るんです。

「騙すのは仕方ないにしても熊野権現の起請文はやりすぎだ」と憤る男たち。起請文の約束を破ると、熊野でカラスが3羽死ぬと言われていたからです。それでも遊女は「起請文をどっさり書いて世界中のカラスを殺したいね」と悪びれる様子もない。男たちが「世界中のカラスを殺してどうするんだ」と問うと「勤めの身だもの、朝寝がしたいよ」というサゲの噺です。

TOKYO FMの「ピートのふしぎなガレージ」は、《サーフィン》《俳句》《ラジコン》《釣り》《バーベキュー》などなど、さまざまな趣味と娯楽の奥深い世界をご紹介している番組。案内役は、街のはずれの洋館に住む宇宙人(!)の博士。彼のガレージをたまたま訪れた今どきの若者・シンイチと、その飼い猫のピートを時空を超える「便利カー」に乗せて、専門家による最新情報や、歴史に残るシーンを紹介します。

<番組概要>
番組名:ピートのふしぎなガレージ
放送エリア:TOKYO FMをはじめとする、JFN全国37局ネット
放送日時:TOKYO FMは毎週土曜17:00〜17:50(JFN各局の放送時間は番組Webサイトでご確認ください)
番組Webサイト:https://www.tfm.co.jp/garage

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