【漢字トリビア】「交」の成り立ち物語

【漢字トリビア】「交」の成り立ち物語

【漢字トリビア】「交」の成り立ち物語

「漢字」、一文字一文字には、先人たちのどんな想いが込められているのか。時空を超えて、その成り立ちを探るTOKYO FMの「感じて、漢字の世界」。今回の漢字は「交通」「交流」の「交」。今年も九月二十一日から、秋の全国交通安全運動が実施されています。今回は「交」に込められた物語を紹介します。



「交」という字は、足を組んで立つ人を正面から見た形。
足を組むその姿から、ものが交差し入り混じる様子や、人間同士のまじわりを意味する漢字です。

いにしえの人々にとって唯一の交通手段、それはひたすら歩くこと。
地図も名前もない道を、自然の法則と交わりながら進んでゆきます。
天体の位置や鳥たちの群れをよみ、大地や風の香りをかぎわける。
五感をひらき、経験と知恵だけを頼りに狩猟へ出かけたのです。
やがて作物を生産し貯蔵できるようになると、物々交換のため馬や牛に荷物を乗せて運び、市での交易が始まります。

さらに、もっと遠くへ。
日本の場合は山が多く峠を超えることが難しいため、川や湖、海を使った水上交通が発達していきました。
そこから生まれたのが「津々浦々」ということば。
「津」とは港を「浦」とは入り江のことを表します。
日本全国を意味するこのことばに、海路が物流の主役を担ってきた歴史を感じます。

ではここで、もう一度「交」という字を感じてみてください。

島国ならではの海路を発展させ、街道を自らの足で歩き続けてきた日本。
文明開化以降、陸路を中心に交通機関はめざましい発展を遂げてきました。
明治時代に入るとすぐに鉄道の敷設計画が始まり、道路の整備が進められて自動車が走り出し、やがてマイカー時代へ。
一九六四年には、世界最速の新幹線を開業させ、現在、時速五○○キロで走るリニア中央新幹線の導入が進められています。
こうした交通機関の発達は多彩な文明を生み出し、暮らしを豊かにしてきました。
一方で、その原点には侵略の歴史があり、交流と融合によって生み出された新しい文化のその裏には、固有の文化の駆逐や画一化もおこりました。

事故が多発した交通戦争時代を受け、一九七三年に登場した標語があります。
せまい日本、そんなに急いでどこへ行く。
今こそこうつぶやきながら、自分の歩幅でゆったり歩いてみたいもの。
まずは、我が町ならではの文化を再発見するために、町並みや人と交わってみる。
今年の秋は、先人たちが長らく続けてきた旅の形を真似てみましょうか。

漢字は、三千年以上前の人々からのメッセージ。
その想いを受けとって、感じてみたら……、
ほら、今日一日が違って見えるはず。


*参考文献
『常用字解 第二版』(白川静/著 平凡社)
『「交通」が結ぶ文明と文化 〜歴史に学び、未来を語る〜』(国際交通安全学会編 技報堂出版)

9月24日の放送では「都」に込められた物語を紹介します。お楽しみに。


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<番組概要>
番組名:「感じて、漢字の世界」
放送エリア:TOKYO FMをはじめとする、JFN全国38局ネット
放送日時 :TOKYO FMは毎週土曜7:20〜7:30(JFN各局の放送時間は番組Webサイトでご確認ください)
パーソナリティ:山根基世
番組Webサイト:http://www.tfm.co.jp/kanji/

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