ジャーナリスト伊藤詩織「木村花さんの件は本当にショックでした」“誹謗中傷から、どうやって身を守るか”を考える

ジャーナリスト伊藤詩織「木村花さんの件は本当にショックでした」“誹謗中傷から、どうやって身を守るか”を考える

ジャーナリスト伊藤詩織「木村花さんの件は本当にショックでした」“誹謗中傷から、どうやって身を守るか”を考える

ライター・編集者の速水健朗がメインパーソナリティをつとめるTOKYO FMのニュース報道番組「TOKYO SLOW NEWS」。スローニュース株式会社協力のもと、ストレートニュースだけではなく、ジャーナリストが自ら足で稼いだ選りすぐりの調査報道(スローニュース)にフォーカス。独自の視点でニュースを深掘りします。毎週木曜日は週替わりパートナーが登場。6月4日(木)の放送は、ジャーナリスト・伊藤詩織さん(第1、第5木曜パートナー)とともに「ネットの誹謗中傷、規制で解決できるのか?」について考えました。本記事は、番組前編の内容をお届けします(※6月4日(木)放送当日の内容です)。

(左から)速水建朗、伊藤詩織



◆「ネットの誹謗中傷」から、どうやって身を守るか?

速水:今夜のテーマは「ネットの誹謗中傷」です。フジテレビのリアリティ番組「テラスハウス」の出演者・木村花さんが亡くなったことがきっかけとなっている部分も非常に大きいのですが、この事件の前にも、芸能人が政治発言をしたことに対して、ものすごい数の誹謗中傷が相次ぎました。今日は“誹謗中傷から、どうやって身を守るか”という議論です。その話を伊藤詩織さんと一緒に伺います。

伊藤:木村花さんの件は本当にショックでした。こういうことがあると「(SNSなどを)見なければいいじゃないか」という声もありますが、私たちが生活していくなかで、インターネットはとても重要なもので、SNSからくる文字が日常に現れるんですよね。

たとえば、“オンライン”は、私たちがいつも通っている通勤・通学路のようなものです。そこを“通るな”と言われても難しいんですよね。また、そのときは“通らない”“見ない”としても、その言葉というのはどんどん増えていって蓄積されていってしまいます。

私の場合は、やっぱりセカンドレイプ的な発言が多かったので、同じような境遇の方を見ていて、ものすごく苦しいものがあるんじゃないかなと思いました。そういったネガティブな言葉を、どのように消して、打ち勝っていけばいいのかというのは、本当に日々考えていることです。

速水:今日、僕たちが考えなければいけない問題は、個々に細かく切り分けていく必要があるかなと思います。

1つは、誹謗中傷をする人の話ですよね。特に問題になっているのは、匿名で投稿できるということ。もう1つは、それを発信するプラットフォームの問題です。SNSなどのサービス元がそれを放置しているということの問題もあります。

速水:本日6月4日(木)におこなわれた、インターネット上での匿名による誹謗中傷への対策を検討している総務省の有識者会議で、名誉毀損など権利侵害にあたる投稿があった場合に、SNS事業者などが被害者に開示できる情報に電話番号を加える方針を示しました。このポイントは、どこにあるのでしょうか?

伊藤:情報開示をしたとしても、例えばメールアドレスだけの場合、フリーメールアドレスだったりすると、なかなか本人特定に繋がりづらいことがあります。ここに電話番号が加わると本人確認がしやすくなります。

この情報開示というのは、1つの裁判です。本来の“名誉毀損の裁判”をする前に、“情報開示の裁判”をしなくてはいけない。実は、二重の裁判が待ち受けているのです。

速水:これは非常に重要なところで、誹謗中傷の問題というのは、それをした人と、された人の間で裁判で戦えばいいのですが、誹謗中傷した相手を特定するまでには、非常に高いハードルがあります。そのコストを引き下げるという意味では、電話番号の情報開示が制度としてできると随分変わるということですね。誹謗中傷した人が匿名の場合、“その人を訴えたい”と思ったら、どのようなハードルがあるのでしょうか?

伊藤:先ほどお話したように、まずは「情報開示請求の裁判」があります。そのあとに「名誉毀損の裁判」になるので、資金面でも2倍かかってしまうというハードルが1つあります。

2つ目は、時間のハードルです。情報開示の請求をする場合、たとえばTwitterの場合、本社がアメリカなので、まずは英語で問い合わせなくてはいけません。また、ログの保存期間は3ヵ月と言われているので、問い合わせ後、3ヵ月が経過してしまう可能性もあります。そうなると、誹謗中傷が発生してから1ヵ月以内のものでないと(情報開示の請求が)できないかもしれない……というハードルになります。

速水:単純に“3ヵ月はログが残っているじゃないか”ということではなく、誹謗中傷によりダメージを受け、そこから何かしらのアクションを起こすまでの時間も考えないといけないのですね。

伊藤:そうですね。ですので、ログの保存を長くすべきだと思います。あと情報開示のハードルがすごく高い。たとえば、“死ね”という言葉は情報開示請求に決定的ですが、そういった(ストレートな)ものでないと、なかなか情報開示が許されないのです。“明らかな侮辱があるのでは?”ということを証明しなくてはいけないというハードルがあります。

速水:そしてもう1つ、心理的ハードルですね。これが一番大きいハードルなのかなと思います。

伊藤:自分に向けられた苦しい言葉をまた見て、それについてアクションを起こさなくてはいけない。それが本当に一番つらい部分ですよね。

速水:誹謗中傷というのは不特定多数からくる場合もあり、それを1人で受け止めなければいけないということは、SNSの仕組み上そうなることが多いですよね。自分を誹謗中傷した人たちのメッセージを見るのって辛いですよね。

伊藤:実際に私もSNSを開くことすらつらくなっているので、それを第三者におこなってもらえるんだったらいいんですけれども、なかなか……。

<番組概要>
番組名:TOKYO SLOW NEWS
放送日時:毎週月曜〜水曜20:00〜21:00
パーソナリティ:速水健朗
週替わりパートナー(毎週木曜):伊藤詩織(1、5週目)、堤未果(2週目)、カリン西村(3週目)、浜田敬子(4週目)
番組Webサイト:https://www.tfm.co.jp/tokyoslownews/

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