地震が起きたら「日本一危ない」…水害と闘ってきた“海抜0メートル地帯”の防災教育最前線

本部長・マンボウやしろと秘書・浜崎美保がパーソナリティをつとめるTOKYO FMの生ワイド番組「Skyrocket Company」。9月1日(火)放送は、“防災の日”ということで、「大災害、そのときに……命を守る防災アクション」と題し、防災の知識や取り組みについて紹介。今回は手島千尋アナウンサーが、水害に詳しいリバーフロント研究所の土屋信行さんとともに海抜0メートル地帯を訪れた模様をお届けし、防災について考えました。

日本一危険な場所



◆地震や水害が起きたとき、日本一危ない東京のエリアとは?

手島:地震や水害が起きたときに、日本で最も危ない、災害に注意しないといけないと言われている地域があるのですが、東京のどのエリアかご存知ですか?

やしろ本部長:日本で最も災害に注意しないといけない地域が東京にあるってことですか!? 東陽町に住んでいたことがあるんですけど、東京の東部エリアは川の氾濫などがあると、まずいんじゃないかなって。江東区役所には、海抜の表記がありましたから。

手島:この時間は、“大人の防災社会科見学”と題して、水害に詳しいリバーフロント研究所の土屋信行さんが、地震が起きたときに「日本一危ない」と警鐘を鳴らしている地域を、実際に一緒に歩いてきました。本部長、秘書、リスナーのみなさんもどんな地域か、想像しながら聴いてみてください。

東京・江戸川区都営新宿線の船堀駅から都心の方向に5分ほど歩くと、荒川と中川が見えてきます。土屋さんは、海抜0メートル地帯である江東区、墨田区、江戸川区、葛飾区、足立区で(大きな)地震が起きると「“地震洪水”が発生する」と警鐘を鳴らしています。

地震が発生すると、荒川などの川の堤防が決壊して、川の水が住宅地を浸水させてしまうかもしれないというものです。それでは、どのあたりが危険なのでしょうか?

土屋さん:はっきり言って、ここが日本一危ない場所だと、よく地域の人たちにお話しているのですが、荒川の堤防がありますよね。荒川の堤防を挟んで、水面があって。実は今、この中川の水面は下がっている状態です。あと1メートルくらい上がります。(水面が)あと1メートル上がったことを想像して、ずっと視線を追っていただくと、3階の床が水没していますよね。ここが海抜0メートル地帯の、いわば「日常的に低平地であることの危険性」です。

阪神淡路大震災のときに淀川の堤防が2キロに渡って崩れました。その堤防とまったく同じ構造をしています。ここをちょっと見ていただくと、堤防の厚みが西のほうの荒川の右岸堤と言いますけど、厚みが半分くらいしかないんですね。それから高さも、明らかに低いとわかりますよね。堤防が薄くて低いので、地震で壊れてしまったらここに“ドドッ!”と大きな水が入ってきてしまいます。

手島:この地域は海抜0メートル地帯と言われていて、川のほうが住んでいるところよりも高いのです。ですから、このエリアに住んでいる人たちは、マンションですと3階くらいの水位があるということなのです。

◆地震、水害と闘い続けた歴史が生んだ防災教育とは?

手島:この地域では地震はもちろん、水害ともずっと闘ってきた地域なのです。今も住んでいる方たちがいますので、ハード面では「安全な高台作りをしてほしい」と区長や東京都に要請をしています。また、地域での連携も強化しています。この地域は、高い建物がとても少ないのですが、マンションや幼稚園や学校など、3階建て以上の建物と防災協定を結んでいて、「なにかあったらどなたでもそこに避難していい」という協定を結んでいます。

そのなかで、小中学校の防災教育にも力を入れていて、子どもたちの防災教育の場、そして“水を怖がらず、正しく恐れてほしい”という思いも込めて、整備されたのが荒川と中川から歩いて3分くらいのところにある“新川”という川です。

この新川は、江戸時代に徳川家康が水路整備の一環として開削した歴史ある川です。堤防がなくても隅田川が氾濫しないようにするために、荒川放水路事業が始まりました。また工業用水の汲み上げによる地盤沈下が大正時代から始まって、戦後の高度成長期まで続いて、現在4.5メートルほど地盤沈下が起きている地域なんです。危険な地域ではあるのですが、防災教育の場として整備を進めてきました。地盤沈下しているということは、高い堤防があってもいいはずだと思ったのですが、堤防がないんです。それでも、土屋さんは「安全だ」と話します。

土屋さん:実は(新川は)堤防を撤去してしまいました。水面が見えていて、私たちが立っているところよりも、いわゆる護岸の高さよりも60センチくらい低い水位になっています。今、この水面を維持するために、東側に水門、そして西側にはポンプ所を作って、そのポンプ所で強制的に水を汲み出して、強制的に水位を下げています。だから、東京湾の水位でいくとここは水没してしまうので、高いコンクリートのカミソリ護岸という堤防があったのですが、そのポンプで汲み出したおかげで、内水面水位低下事業、いわゆる大きな堤防で囲まれたなかの都市空間として、川を使ったり、楽しんだりできるように、わざと作ったまさに“江戸時代の風景”なのです。

江戸の街並みを再現した新川の橋



手島:もともとは、さまざまな物資を運ぶ運河だった新川は、塩を運ぶ“塩の道”として多くの人に親しまれてきました。この歴史ある文化を“再現するべきではないか”ということで、この川が整備されたのですね。

江戸時代の景観を取り戻すことによって、子どもたちに江戸時代から続く水との歴史を知って、今後の水害の学びの場として知ってほしいと、江戸川区が熱量を持って整備した川なのです。NHKの大河ドラマの時代考証に携わっている方に協力をいただいて、江戸の街並みを再現。火の見櫓(ひのみやぐら)を建てたり、その横の石垣は、熊本城の石垣を積み上げている穴太衆(あのうしゅう)の方にお願いして積み上げたり、橋もヒノキで作った橋がいくつもかかっていて、歩くとヒノキのいい香りがします。

◆危ない場所に住んでいることを日々意識させる景観

子どもたちは、日頃からここで学習していて、地域の歴史に触れているそうです。最後に土屋さんは、新川が持つ景観の役割について、このように話してくださいました。

土屋さん:僕たちが危ない場所にいるんだぞ、いざとなったら逃げなきゃいけないんだぞ、ということを、この景観がみなさんに対して日常的に危険情報として発信し続けています。その背景にある洪水と闘った地域、そこから暮らしという文化が生まれた水の持つ恵みと水の持つ脅威を知っていただくことが必要。両方の面でこういう整備をして、地域の人に水辺だというとこを忘れないでほしいですね。

手島:熊本で豪雨災害がありましたが、普段から球磨川の水位を見ていたから、川の近くに住んでいる人のほうが逃げるのが速かったという話を聞きました。川とともに住んでいる人たちだからこその防災知識というものもあると思います。

江戸川区は去年の台風19号のときに、避難した人は東京都で最も多かったということで、やはり防災知識がすごく高い印象です。防災知識を高めてもらうためには、自分の(住んでいる)地域を知ってもらうこと。この機会に自分が住んでいる地域のことをどのくらい知っているのか、考えてほしいと思います。そこから逃げ方や人とのコミュニケーションが生まれることによって、“防災の力”がさらに大きくなっていくのではないかと感じています。

<番組概要>
番組名:Skyrocket Company
放送日時:毎週月〜木曜 17:00〜19:48
パーソナリティ:本部長・マンボウやしろ、秘書・浜崎美保
番組Webサイト:https://www.tfm.co.jp/sky/