美術評論家・伊東順二「日常をいかに大事にするか」これからのキーワードに言及

TOKYO FMで月曜から木曜の深夜1時に放送の“ラジオの中のBAR”「TOKYO SPEAKEASY」。8月27日(木)のお客様は、美術評論家の伊東順二さんとファッションデザイナーの舘鼻則孝さんです。

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(左から)舘鼻則孝さん、伊東順二さん



◆バスキア初の展覧会の思い出

伊東:(番組でかける)曲を持ってきてくれたんでしょ?

舘鼻:はい。持ってきましたよ。秘密のバーで2人で聴くということで。ちょっと先に曲を聴いていただこうかなと思うんですけど。アラバマ・シェイクスというバンドの「オールウェイズ・オールライト」という曲なんですけど。

ーーアラバマ・シェイクス「オールウェイズ・オールライト」がオンエア中。

伊東:舘鼻さんって、頭の中にいっぱいプレイリストがあるでしょ?

舘鼻:いや、そんなことはないですけど(笑)。僕が好きな『世界にひとつのプレイブック』という映画があって、アカデミー賞を取りましたけど。ジェニファー・ローレンスの日常を描いているような映画ではあるんですけど、映画って総合的な芸術の作品としてもそうだし、音楽であったり映像であったり、いろいろな要素が含まれているわけじゃないですか。そういう要素がセットで、自分の頭のなかで記憶に残るというか。

自分の日常のなかでも、そういう日々の場面があると思うんですけど、断片的に1つの要素だけで記憶に残るわけじゃなくて、例えば匂いを嗅いだら思い出すみたいな。そういうものが芸術的な感覚としては、人間にすごく結びついているんだなっていうふうに思っていて。僕はこの曲を聴くと、何だかちょっとその映画のことを思い出して、幸せな気持ちになれるんです。

伊東:今の言葉のなかで日常という言葉がありましたけど、“日常をいかに大事にするか”ということは、今のキーワードじゃないかなと思うんですよね。何か特別なことじゃなくて、日常を見つめて、日常自体を豊かにしていくこと。それが日々大事になってきているんじゃないかと思うんです。音楽というのは、いつもそこに寄り添っているものなので。僕は昔から造形芸術と音楽とを別に考えたことがなかったんですよね。

例えば80年代の初めにニューヨークやパリに住んでいて、その頃(ジャン=ミシェル・)バスキアたちが登場してきました。ジャンルミックスなクラブカルチャーがちょうど出てきたころで。今でも思い出すんですけど、ダウンタウンのクラブに行くときが怖かったんですよね。バスキアの初めての展覧会に行った時はアベニューAの「ファンギャラリー」という場所でおこなわれたんですけど。その後、彼を交えた展覧会を日本に持ってくることになったりもしたんですが。

舘鼻:その当時のアベニューAと言えば……。

伊東:泊まっているホテルからタクシーに乗ったら、「お前は死にに行くのか?」「やめろ」って言われて。

舘鼻:そういうレベルでしたよね、本当に。

伊東:「お前、日本人だろ? カメラを持っているだろ? 今日は殺されるぞ」って説教されて、近くまでは乗せてくれたんですけど。ようやく辿り着いて、そこの近くにも「ダンステリア」というライブハウスがあって、バスキアたちが普通に絵を描いているわけです。その頃は、1枚15万円とかでしたね。

舘鼻:今や100倍じゃ利かないですよね。

伊東:そこではマドンナも売れる前にライブをやっていたんですよ。

舘鼻:(バスキアと)付き合っていましたからね。

伊東:本当にいろいろな人たちがいて。でも、音楽の仲間とアートの仲間、造形芸術の仲間が現場に一緒にいたというのが、80年代の良さだったな。

舘鼻:そういう意味では、特にその時代はパフォーマンス寄りでしたよね。ハプニングというか。アートの本質的な部分は、そこかもしれないですよね。

伊東:そう。そこで、もう1回最初の「アートワクチン」のオーディションの話に戻りますけど、だからこそ分野を隔てずに皆さんにオーディションをしてもらおうと。今のカルチャーって、結構それに近づいてきているんじゃないかなって。

もう7、8年前になるのかな? 坂本龍一さんに何十年ぶりかに来ていただいて藝大で講義をしてもらったときに、奏楽堂(上野公園にある日本最古の西洋式音楽ホール)に続く長い道で2人で歩いて、久しぶりにお話をしていたんですよ。「伊東さん、僕らが若い頃にやってきたことの意味が、60を過ぎてようやく分かると思わない?」って言われて。その言葉がすごく強く残っていて。

舘鼻:それは感慨深い。

伊東:そうしたら今、舘鼻さんとお話して、アラバマ・シェイクスのサウンドもそうですけど、80年代と今が結び付いて面白いことができるんじゃないかなと今思うんですけど、どうですか?

舘鼻:僕も60歳を超えたときに、そう思えるんですかね。

伊東:いや、もっと思うよ。いろいろなことを。

舘鼻:今は35歳ですけど、正直がむしゃらじゃないですか。がむしゃらという言葉は、若い頃しか使えない言葉かもしれないですけど。それが本当に、後30年くらい経ったときに、時代ももちろん変わってはいるんだけど、自分がどう感じているのかなというのは、ひとつ楽しみではありますね。

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来週の「TOKYO SPEAKEASY」のお客様は……

10月5日(月)大槻ケンヂさん×人間椅子・和嶋慎治さん
10月6日(火)森山直太朗さん×柄本佑さん
10月7日(水)石橋貴明さん×後藤次利さん
10月8日(木)湯川れい子さん×西寺郷太さん
がご来店。一体どんな話が飛び出すのか……!? お楽しみに!

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<番組概要>
番組名:TOKYO SPEAKEASY
放送日時:毎週月-木曜 25:00〜26:00
番組Webサイト:https://www.tfm.co.jp/speakeasy/