村上春樹「もし僕が猿だったら…」霊長類学者・山極壽一と短編小説「品川猿」を語る

作家・村上春樹さんと坂本美雨さんがディスクジョッキーをつとめるTOKYO FM/JFN全国38局フルネットの年越し生特番「村上RADIO年越しスペシャル〜牛坂21〜」が、2020年12月31日(木)23:00から2021年1月1日(金・祝)1:00まで放送されました。この記事では、京都大学前総長、日本学術会議の前会長をつとめた霊長類学者・山極壽一先生とのスペシャル対談(後編A)の概要を紹介します。


村上RADIO



番組初・村上さん初の生放送となった「村上RADIO年越しスペシャル〜牛坂21〜」。いろいろあった2020年を締めくくり、明るい気持ちで新年を迎えるべく、大晦日の京都のスタジオから2時間の生放送でお届けしました。今回は、村上さんによる「明るい2021年を迎えるための選曲」や、ゲストに京都大学iPS細胞研究所所長の山中伸弥教授、霊長類学者の山極壽一京都大学前総長を迎えたスペシャル対談をオンエア。また、メッセージテーマ「2020年で一番よかったこと」を募集し、メッセージが採用されたリスナーには、村上さんから特製ラジオネームの“お年玉”がプレゼントされました。

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山極:今日は、ちょっと春樹さんにお訊きしたいと思っていたことがあります。「品川猿」「品川猿の告白」という短編小説をお書きになりましたね。僕は猿の研究者でもありますが、われわれは猿に名前を付けて猿の世界に入っていくんです。

村上:1匹、1匹に名前を付けるんですか?

山極:そうです。それぞれに名前を付けないと、彼らの世界の動きを理解できないんです。「品川猿」は人間の名前を盗む猿ですよね。名前を盗んで、人間と親しくなる。人間の世界に踏み入ってくるんです。これを読んで、僕は猿と人間の「鏡の表と裏」みたいな感じがしたんです。あれは、なんで名前を盗むということにしたんですか?

村上:もし僕が猿だったら、人間のアイデンティティの一部を盗みたいという気持ちになるんじゃないかと思いまして。つまり、「もし僕が猿だったら」という仮定がある。普通の人はあまりそんな風に思わないかもしれないけど。

山極:たしかに、われわれ研究者も猿に名前を付けることで彼らのアイデンティティが分かってきます。

村上:ゴリラは15頭ぐらいだから名前を付ければ覚えられそうですが、ニホンザルの猿山なんかは大変ですよね。

山極:いえ、全員覚えてますよ、僕は。

村上:え、そうなんですか!

山極:100頭から200頭ぐらいの群れでも、ちゃんとすべての顔と名前を一致させることができます。猿が夢のなかにも出てくるんですよ。後ろ姿、しっぽの形でも分かる。こいつは、あれだとか。われわれ人間は、それだけ違う生物にも同化できる能力を持っているんです。猿は人間の名前を覚えられないと思いますが。

村上:山極さんは、全部記憶しているわけですか。

山極:覚えています。この家系は植物の名前とか、名付け方が系統立っているから記憶できるんですね。

村上:自分で言うのもなんですが、「品川猿」という作品は割と人を惹きつけるみたいで、外国でも質問されることが多いんです。

山極:長野県の地獄谷という所に猿の温泉があって、今やそこはヨーロッパ人に大人気で観光客の半分以上はヨーロッパ人なんです。猿が温泉に入る、人間も温泉に入る。僕もあそこの猿を研究したときは、夕方、猿の温泉を掃除したあとに入っていました。「品川猿」は、温泉で主人公の背中を流してくれるじゃないですか。いやあ、これはそっくりだと思ってね。

村上:突然、猿が温泉に入ってきて、「背中を流しましょう」と言われたらちょっと断れないですよね(笑)。断ったら気を悪くするだろうなあと思うと、つい「お願いします」と言っちゃいそうで。

山極:たしかに目に浮かぶようですよ。

村上:今度機会があれば、もっとゴリラの話を聞かせてください。なかなか興味深いですね、ゴリラの世界は。

山極:ゴリラの世界は手ごわいし、まだまだ面白い。

村上:コロナが早く収束して、アフリカに行けるといいですね。そうでないと、山極さんが人間の世界に同化しちゃいそうですから。

山極:ははは(笑)。

村上:今日はどうもありがとうございました。

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▼2月14日(日)開催! 村上春樹さんのイベント「MURAKAMI JAM」オンライン配信チケット好評発売中▼

「MURAKAMI JAM」は、村上春樹さんがTOKYO FMをはじめとするJFN38局で隔月放送している番組「村上RADIO」から生まれた音楽イベントで、初回は2018年6月に開催。その際は完全招待制で、150名の招待枠に対して、12,000通を超える応募が集まるプレミアイベントとなりました。

音楽監督・大西順子さんを中心にジャズ界の一流ミュージシャンが集い、村上さんとの豪華競演が実現し、大盛況となりました。

そして今回、TOKYO FM開局50周年の記念事業として、村上さんとのタッグのもと、「MURAKAMI JAM〜いけないボサノヴァ Blame it on the Bossa Nova〜 supported by Salesforce」と題して、2月14日(日)にボサノヴァのライブイベントを開催、オンラインで配信します(100席限定の会場チケットはすでに完売)。開局50周年の節目は奇しくもコロナ禍と重なり、今回が記念事業として開催する唯一のライブイベントとなります。

今回のテーマは「ボサノヴァ」。音楽監督には前回に引き続き、大西順子さんを迎えるほか、小野リサさん、村治佳織さん、坂本美雨さん、さらにスペシャルゲストのピアニスト・山下洋輔さんを始め豪華アーティストが多数出演し、ラグジュアリーな時間をお届けします。もちろん、DJ村上春樹さんによるライブ・トークもたっぷりと予定しています。

このような時期だからこそ、「“愛”を持ち寄って、素敵な音楽を楽しむ喜びを分かち合いたい」という想いのもと、バレンタインデーに開催する1日限りの豪華スペシャルセッションに、どうぞご期待ください!

「MURAKAMI JAM〜いけないボサノヴァ Blame it on the Bossa Nova〜 supported by Salesforce」オンライン配信チケットは現在発売中。配信時間は2021年2月14日(日)19:00から。



■前売り券:3,500円(税別)(※2月13日(土)23:59まで販売)
■当日券:4,000円(税別)(※2月14日(日)0時以降<日本時間>)

英語字幕付きオンライン配信チケットは、
■前売り券:4,000円(税別)(※2月16日(火)23:59まで販売)
■当日券:4,500円(税別)(※2月17日(水)0時以降<日本時間>)

配信時間は2021年2月14日(日)19:00から予定(※変更可能性あり)。
配信後1週間アーカイブ視聴が可能です。

チケット販売については、こちらの公式ページもご覧ください。

<ライブ概要>
公演名:「MURAKAMI JAM〜いけないボサノヴァ Blame it on the Bossa Nova〜 supported by Salesforce」
配信日時:2月14日(日)19:00〜
司会:村上春樹、坂本美雨
ゲスト:大西順子(音楽監督)、小野リサ、村治佳織 ほか
スペシャルゲスト:山下洋輔
主催:TOKYO FM
特別協力:Salesforce
制作協力:DNP大日本印刷
公式サイト:https://www.tfm.co.jp/murakamiradio/jam/

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