【漢字トリビア】「明」の成り立ち物語

【漢字トリビア】「明」の成り立ち物語

【漢字トリビア】「明」の成り立ち物語

「漢字」、一文字一文字には、先人たちのどんな想いが込められているのか。時空を超えて、その成り立ちを探るTOKYO FMの「感じて、漢字の世界」。今回の漢字は「明」。「照明」の「明(メイ)」、「光明」の「明(ミョウ)」。澄みわたる秋の夜空に、月が輝く季節です。



「明」という字は、「日」という字に「月」と書きますが、この「日」の形は、窓を表しているといいます(ケイ「?」)。
その横に「月」を添えて、窓から月明かりが入りこむ様子を示しています。
そこから「明るい」という字は、「あかり、あかるい、あきらか、あける」という意味になったのです。

かつて、中国北部の黄土地帯には半地下式の住まいが多かったといいます。
ここは雨が少なく乾燥した気候で、家屋を作る樹木も手に入りません。
そこで人々は台地などの地形を利用し、土を掘って家を作ったのです。
電気などなかった頃、生活に必要な光は小さな明りとりと、ひとつきりの窓から取り入れます。
夜になると、数本のろうそくを頼りに、暗闇の中で過ごしていました。
そんな暮らしの中で、窓から差し込む満月の光の、なんと明るいこと。
人々はその様子を神の訪れとみたて、窓のそばに神を祀ったといいます。

農耕を中心とした集団の定住生活がもたらす、安定した暮らし。
それとひきかえに失われた自由。
ここではないどこかへの憧れを持て余すいにしえの人は、夜の世界を徘徊します。
青白く輝く稲穂のさざなみ。
森の奥深くで銀色のきらめきを放つ苔。
おだやかな海にまっすぐ浮かびあがる金色の道。
満月の夜の明るさは、見慣れた風景に妖しい魔法をかけて、さまよう心をひきとめて、静かな慰めを与えます。

ではここで、もう一度「明」という字を感じてみてください。

暗闇にうずくまって身動きできないときにこそ、人は、射し込んできたほんの少しの明かりに気づきます。
小さなその光に照らされて、見失っていた世界がゆっくりと、目の前に立ち上がってくるのです。
明恵正人は「月の歌人」の異名をもつ僧侶。
彼は、くもりのない月の明るさに胸を衝かれ、心のままにこんな短歌を残しました。
「あかあかや あかあかあかや あかあかや あかあかあかや あかあかや月」
今宵の月が、秋風にふさぐ誰かの心に、明るい光をもたらしますように。

漢字は、三千年以上前の人々からのメッセージ。
その想いを受けとって、感じてみたら……、
ほら、今日一日が違って見えるはず。


*参考文献
『常用字解 第二版』(白川静/著 平凡社)
『五感のチカラ』(山下柚実/著 福音社)

9月30日(土)の放送では「稲」に込められた物語を紹介します。お楽しみに。


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聴取期限 2017年10月1日(日) AM 4:59 まで

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<番組概要>
番組名:「感じて、漢字の世界」
放送エリア:TOKYO FMをはじめとする、JFN全国38局ネット
放送日時 :TOKYO FMは毎週土曜7:20〜7:30(JFN各局の放送時間は番組Webサイトでご確認ください)
パーソナリティ:山根基世
番組Webサイト:http://www.tfm.co.jp/kanji/

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