【漢字トリビア】「究」の成り立ち物語

【漢字トリビア】「究」の成り立ち物語

【漢字トリビア】「究」の成り立ち物語

「漢字」、一文字一文字には、先人たちのどんな想いが込められているのか。時空を超えて、その成り立ちを探るTOKYO FMの「感じて、漢字の世界」。今回の漢字は「究める」、「研究」の「究」。子どもの頃、億劫だった夏休みの宿題といえば「自由研究」。今思えば、なんと贅沢な時間であったことでしょう。



「究」という字は、穴冠(あなかんむり)に数字の「九」と書きます。
穴冠は、ほら穴や土で出来た室を意味する部首。
「九」の部分は、自分の身を折り曲げた竜の形を表しているといいます。
大きな身体を小さく丸め、穴の行き止まりまで入り込もうとする竜。
そこに気になる何かを見つけたら、とことんつきとめてみたい。
恐れずに対象の中へ入り込んでいく竜の姿を示したのが「究める」という漢字。
「きわめる、きわめつくす」という意味で使われるようになりました。

かつて、夏の子どもたちには、有り余るほどの時間がありました。
大人たちは働くことに忙しく、日々の生活のことで頭がいっぱい。
子どもたちを野山に放ち、夕暮れどきに元気で帰ってくればそれでよし。
学校のない夏休みは、毎日が自由研究のようなものでした。
子どもは大好きな遊びに没頭しながら、さまざまな不思議に出会います。
表面がつるつるの泥だんご、花びらをちぎって作る色水。
セミの抜け殻を集めたり、笹の葉で舟をつくって競争したり。
楽しい時間のその後にやってくる、もっとうまくやりたい気持ちや、新たな疑問。
「はてな」の穴を見つけた子どもはその奥深くへと入り込み、自分なりのやり方で真実を究めようとします。
文字通り、自分だけの研究に夢中で取り組んだ子どもたち。
彼らが大人になる頃にはきっと、目の前の課題に全力で立ち向かう力が身についていたはずです。

ではここで、もう一度「究」という字を感じてみてください。

大人になった私たちにとっても、実は毎日が自由研究のようなもの。
答えや正解のない事柄が起こるたび、最善の方法を選びとり、前へ進んでいかなければなりません。
そんなときに頼れるのは、興味をもった対象にとことん没頭した体験です。
遊び、仕事、恋愛、子育て、スポーツや趣味でも何でもいい。
穴にはまってしまったかのように寝食を忘れ、ただ一心に生きた時間が、確固たる「自分」を作ります。
「大事の義は、人に談合せず、一心に究めたるがよし」
戦国武将・伊達政宗は、家臣にこんな言葉を残したといいます。
大切なことは人に相談などせず、己自身で必死に考え抜いて決断せよ。
独眼竜正宗は、その名のとおり竜のごとく穴に入りこみ、鋭い眼力で戦国武将の極意を突き詰め、激動の時代を生き抜きました。
たとえどんな分野であれ、自分自身で究めて得た真理こそが、人生を支える軸になるのです。

漢字は、三千年以上前の人々からのメッセージ。
その想いを受けとって、感じてみたら……、
ほら、今日一日が違って見えるはず。


*参考文献
『常用字解 第二版』(白川静/著 平凡社)

8月26日の放送では「処」に込められた物語を紹介します。お楽しみに。


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聴取期限 2017年8月27日 AM 4:59 まで

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<番組概要>
番組名:「感じて、漢字の世界」
放送エリア:TOKYO FMをはじめとする、JFN全国38局ネット
放送日時 :TOKYO FMは毎週土曜7:20〜7:30(JFN各局の放送時間は番組Webサイトでご確認ください)
パーソナリティ:山根基世
番組Webサイト:http://www.tfm.co.jp/kanji/

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