【漢字トリビア】「心」の成り立ち物語

【漢字トリビア】「心」の成り立ち物語

【漢字トリビア】「心」の成り立ち物語

「漢字」、一文字一文字には、先人たちのどんな想いが込められているのか。時空を超えて、その成り立ちを探るTOKYO FMの「感じて、漢字の世界」。今日の漢字は「心」。「中心」「安心」の「心(しん)」です。



「心」という字は心臓の形を描いた象形文字。
漢字の起源となる甲骨文字には、まだ登場していません。
その頃記されていたのは、単純な線で正面から見た人の形を描き、胸の部分に入れ墨を施した絵でした。
人形(ヒトガタ)に魂を吹き込むようなイメージだったのでしょう。
三千年も前からすでに、心臓は生命活動の源であり、思考をする場所であると理解されていたことがうかがえます。
肉食の生活をしていた氏族は内臓の知識を早くからもっていたといわれ、命の営みを維持する臓器を認識していたのです。
「心」という文字が出現したのは、甲骨文字を作った殷王朝を倒して成立した周の時代。
青銅器に鋳込んだ金文に、心臓をかたどった文字が残されています。

古代エジプトにおいて、心は内臓にあるものとして大切に残され、脳は重要視されず、ミイラから取り除かれていたといいます。
その後、ヒポクラテスやプラトンは心が脳にあると説き、続くアリストテレスは心が心臓にあると主張。
十七世紀以降は、脳の研究が著しく進み、「心の活動」である「知・情・意」、知性や思考、感情、意思や記憶などは、すべて脳のはたらきである、という結論に達しました。
一方、「心」を意味する「りっしんべん」や「したごころ」といった部首を使って、漢字もまた、独自の進化を遂げていきます。
人の心をおしはかる「忖度」の「忖」、 “心ここにあらず”の状態になる「忙しい」。
「快い」「悩む」「恐れる」「忍ぶ」、そして「愛する」。
どれもがみな、人生の機微を示す漢字であり、心のこまやかな動きが形になって残されています。

ではここで、もう一度「心」という字を感じてみてください。

はじめてのひとり旅、見知らぬ街に降り立つ朝。
情熱を伝えるために、言葉を選ぶ面接の日。
愛する人を、静かに見送るとき。
胸の鼓動が早くなったり、心臓がのど元までせりあがってきたり、音をたてるようにしめつけられたり……。
それが脳の働きによる結果だとしても、心はからだのまんまん中、あなたの核となる場所にあります。
筋肉でできた心臓は、動いた分だけ鍛えられるし、強くなる。
その経験はいつかきっと、あなたの“心が指し示す”「志(こころざし)」を果たす力になるのです。

漢字は、三千年以上前の人々からのメッセージ。
その想いを受けとって、感じてみたら……、
ほら、今日一日が違って見えるはず。


*参考文献
『常用字解 第二版』(白川静/著 平凡社)
『心は何でできているのか 脳科学から心の哲学へ』(山鳥重/著 角川選書)
『大人のための図鑑 脳と心のしくみ』(池谷裕二/監修 新星出版社)

7月8日の放送では「雷」に込められた物語を紹介します。お楽しみに。


<番組概要>
番組名:「感じて、漢字の世界」
放送エリア:TOKYO FMをはじめとする、JFN全国38局ネット
放送日時 :TOKYO FMは毎週土曜7:20〜7:30(JFN各局の放送時間は番組Webサイトでご確認ください)
パーソナリティ:山根基世
番組Webサイト:http://www.tfm.co.jp/kanji/


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