【漢字トリビア】「潮」の成り立ち物語

【漢字トリビア】「潮」の成り立ち物語

【漢字トリビア】「潮」の成り立ち物語

「漢字」、一文字一文字には、先人たちのどんな想いが込められているのか。時空を超えて、その成り立ちを探るTOKYO FMの「感じて、漢字の世界」。今回の漢字は「潮(しお・うしお)」、「潮流」「満潮」の「潮(チョウ)」。さんずいに「朝」と書いて、海辺の朝の潮の満ち引きを意味します。



「潮」という字は、さんずいに「朝」と書きます。
「朝」は数字の十に「日」と書き、その下にもうひとつ十、を書きます。
十という漢字を横にふたつ並べた形は、草かんむり。
これは、草と草の間から日が昇る様子を描いたものといわれます。
右側に書く「月」は、振り返ると見える有明の月。
「朝」という字は、太陽と月が一緒に見える、早朝の風景を表しています。
そこに水辺を意味するさんずいを添え、朝の潮の満ち引きを示したのです。
さんずいに「夕方」の「夕」を書いて「汐」と読む漢字がありますが、こちらは、夕方の潮の満ち引きを意味しています。

月の動きや地球の自転に影響を受けて、上下に動く海水面。
そこへ太陽の動きが重なって、潮の満ち引きの大きさが決まります。
いにしえの人たちは天体の様子を観察し、潮まわりを読みときました。
彼らは、潮の満ち引きが大きくなる「大潮」の日を見計らい、貴重な食糧を得るために海へ出かけます。
潮が昼間に引いていく春先から初夏にかけては、潮干狩りに最適な季節。
お目当ては、アサリにハマグリ、アオヤギ、マテガイ。
ひき波でできた小さな砂山や海草の群れの間を狙って手を差し込みます。
じりじりと首の後ろを灼かれて潮干狩り。
うまみたっぷりのごちそうが、日焼けの痛みや疲れを忘れさせます。

ではここで、もう一度「潮」という字を感じてみてください。

貝の殻に刻まれた模様は、木の年輪と同じ。
一年ごとに輪が増えて、ひと潮ごとにこまかいすじが刻まれます。
貝殻は、水温の変化や潮の満ち引きの記憶をとどめているのです。

今から十年ほど前、大西洋アイスランド沖で、四百年以上生きたホンビノスガイが発見されて話題になりました。
十センチほどの殻に細かく刻まれた年輪から、世界最高齢の生物と認定され、中国の王朝にちなんで「明(ming・ミン)」と名づけられました。
ところが後日、その貝が採取されたとき、明はまだ生きていたことが判明。
老化や長寿の研究のためという名目で殻を開かれたことで、命を落としていたのです。
さらに、放射線炭素年代測定法で改めて年齢を測定すると、正確には享年五○七歳だったことが分かり、「明」は再び注目を集めました。
潮まわりをよみ、潮干狩りの危険を逃れて五○○年ものときを生きた貝。
自然の摂理や他の生物の命を軽んじる人間の愚かな歴史を知りながら、固く口を閉ざし、黙っているほかなかったのでしょう。
彼はただ、名もなき海の漂流者として、潮のまにまに自由な旅を、楽しんでいただけだったのに。

漢字は、三千年以上前の人々からのメッセージ。
その想いを受けとって、感じてみたら……、
ほら、今日一日が違って見えるはず。


*参考文献
『常用字解 第二版』(白川静/著 平凡社)
『潮干狩りの疑問77 みんなが知りたいシリーズ3』(原田知篤/著 成山堂書店)
『新装版 海遊びの極意』(西野弘章/著 つり人社)

6月3日の放送では「蛍」に込められた物語を紹介します。お楽しみに。


<番組概要>
番組名:「感じて、漢字の世界」
放送エリア:TOKYO FMをはじめとする、JFN全国38局ネット
放送日時 :TOKYO FMは毎週土曜7:20〜7:30(JFN各局の放送時間は番組Webサイトでご確認ください)
パーソナリティ:山根基世
番組Webサイト:http://www.tfm.co.jp/kanji/


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