【漢字トリビア】「真」の成り立ち物語

【漢字トリビア】「真」の成り立ち物語

【漢字トリビア】「真」の成り立ち物語

「漢字」、一文字一文字には、先人たちのどんな想いが込められているのか。時空を超えて、その成り立ちを探るTOKYO FMの「感じて、漢字の世界」。今回の漢字は「真実」「純真」の「真」。「まこと」とも読み、よい意味で使われることが多いのですが、実は、その成り立ちをひもといてゆくと、古代中国の人々が思い描いた「死後の世界」へとたどり着きます。



「真」という字の旧字体(「眞」)は、漢数字の「七」、あるいはカタカナの「ヒ」と似た字(「匕」)を書き、その下に県庁所在地の「県」という字を書きます。
上の部分は人を逆さまにした形で、死んだ人間を表しているといいます。
一方の「県」という字は、人の首が木の枝などに逆さまに懸けられた形。
そこから「真(眞)」という漢字は、不慮の災難にあって行き倒れた死者を意味しているというのです。
死んだ者は、肉体は滅びたとしても、魂はもはや変化しません。
「死」とは「永遠のもの、真の存在」になること。
そうした考えに基づいて、この漢字に「まこと」という意味がもたらされたのです。

人の一生はほんのひととき、かりそめの世に宿るようなもの。
短い時間をあくせく生きて年をとれば、肉体も精神も変化していきます。
そうした「人生」に対して、死後の世界は永遠に変わらぬもの。
人間はいつか必ず「死」に行き着いて、そこで初めて真実の姿になる……。
こうした死生観は、死にゆく人を見送る者たちの悲しみや、いつか我が身にもやってくる死への恐れをやわらげてもきたのです。

ではここで、もう一度「真」という字を感じてみてください。

古代中国の人々は、まことの存在になるその日まで、自らの意思で「生」を全うする道を模索してきました。
例えば、隠遁詩人とも呼ばれた孤高の文学者、陶淵明。
晴耕雨読を実践する日々の中で、彼は『帰去来の辞』にこう記しています。
「まずは万物の変化と一体になって、死に帰るとしよう。天命なるものを楽しみ、何も思い惑うことはない。」
また、『三国志』に登場する悪名高き英雄・曹操は、「楽府(がくふ)」と呼ばれる漢詩を、こう力強く結んでいます。
「命の長さや短さは、天が決めるだけではない。心身を磨けば、長寿も引き寄せることができるのだ。」
永遠の姿となるその日までの、限りある時間。
誰もが自分らしさを失うことなく、変化することを楽しみながら過ごしていけますように。

漢字は、三千年以上前の人々からのメッセージ。
その想いを受けとって、感じてみたら……、
ほら、今日一日が違って見えるはず。


*参考文献
『常用字解 第二版』(白川静/著 平凡社)
『生と死のことば 中国の名言を読む』(河合康三/著 岩波新書)

3月3日(土)の放送では「師」に込められた物語を紹介します。お楽しみに。


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聴取期限 2018年3月4日(日) AM 4:59 まで

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<番組概要>
番組名:感じて、漢字の世界
放送エリア:TOKYO FMをはじめとする、JFN全国38局ネット
放送日時 :TOKYO FMは毎週土曜7:20〜7:30(JFN各局の放送時間は番組Webサイトでご確認ください)
パーソナリティ:山根基世
番組Webサイト:http://www.tfm.co.jp/kanji/

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