藤井健太郎「自分が好きなことでしか、その人の本当の力は出ない」

藤井健太郎「自分が好きなことでしか、その人の本当の力は出ない」

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 テレビ番組を作る仕事をしていて、思うのは「視聴者は、こういうのが好きなんだろう?」っていうのが、一番良くない。視聴率が取れそうだからと、自分が好きでもないジャンルに手を出しても、絶対にいい番組にはならないと思います。

 もちろん、僕のようなテレビ番組を作るスタッフたちの目標は、視聴率が良くて内容も良い人気番組を作ることです。ただ、優先順位はあくまで、自分がおもしろいと思うもの。その中から、視聴率的にも悪くなさそうなものを選んでいきます。結局、自分が好きなことでしか、その人の最大のパワーって出ないんだと思います。

 そして、僕がおもしろいことを考えようとする時、なぜかそこには少し“悪意”が混ざってしまいます。例えば、“ギリギリ有名人が逃走中”という企画。“あの人はいま?”に出てくるような有名人の方を、遊園地内で見つけるというものだったんですが、ルバング島の小野田寛郎さんだけ、ずっと隠れていて見つからず、番組最後に「もう終わっていたのか」と出てきてもらいたかった。さすがにいろいろと問題がありそうで、踏みとどまりましたけど。

 ほかにも、有名人にオファーをする企画では、“ジェンキンスさんの大脱出”を考えました。もちろん、これも様々な方面からのクレームが予想されたので、実現していません。

 また、ちょうどさっき会議で話していたのは、“衝撃映像死んでいる死んでないクイズ”という企画。テレビでよく見る事故系の衝撃映像を流して、この人は生きているかどうかを当ててもらうというものですが、死んでいても笑える方法が思いつかないので、これも実現は難しいだろうなとは思っています……。

 決して、誰かを貶めたり、悪くいうことが目的ではなく、あくまでおもしろいことが目的。“あんな滅茶苦茶なことして、テレビってバカだな〜”と笑ってもらいたいんです。そのためにも、他の番組でやっていたようなことはやりたくない。もちろん次から次へと思いつくわけではないので、すべてが見たことがないようなものって訳にはいかないんですが、なるべくそういうものを出していきたいなと思っています。

 だから、プロデューサーの中には、現場から一歩引いた形で番組にかかわる人も多いんですが、僕はできる限り、自分が手を動かしたい。誰かにやらされているわけではないので、どこまでこだわるのかは自分の裁量次第です。楽をしようと思えば、いくらでも楽はできるし、やればやるほどこだわりは細部に及んで、およそ視聴率的なものとはかけ離れていってしまいます。

 それでも、ナレーションをよくあるものでOKにするか、気の利いた言い回しに変えるのかって考えると、後者にしたい。番組全体のおもしろさや視聴率に大きな影響がなくても、ギリギリまで詰めたいんです。結局は、見栄なんだと思います。僕は、自意識過剰で見栄っ張りな性格なので、自分の番組が、おもしろくないと思われるのが、一番イヤ。

 バラエティ番組はそこまで作家性の強いものではないですし、とくに僕は一、会社員なので、大きなリスクも背負っていません。フリーのスタッフのように、視聴率が取れずに番組が終了し、食いっぱぐれることもない。僕がフリーであれば、生活のために視聴率を手堅く取れる番組を作っていたかもしれませんが、何も背負ってない会社員のいわば、“エセクリエイター”だからこそ、逆に細部までこだわらなければいけないなと思うんです。

 その分だけ、睡眠時間はなくなっていくわけですが、もう限界だと思ったら、その時は異動でもさせてもらって、のんびりしたサラリーマン生活を送ることもできるはずです。今は、せっかく会社に自分の好きなことをやらせてもらっているのだから、フルスイングで番組を作っていかないとなと思っています。

撮影/弦巻 勝

藤井健太郎 ふじい・けんたろう
1980年、東京都生まれ。立教大学卒業後、2003年にTBSに入社。『はなまるマーケット』などの情報番組を経て、入社3年目にバラエティ番組『リンカーン』に参加。その後、『クイズ☆タレント名鑑』『芸人キャノンボール』など数々の人気番組を世に送り出し、一躍脚光を浴びる。現在は、『水曜日のダウンタウン』を担当する。10月からは、新番組『クイズ☆スター名鑑』が放送される。

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