「A LIFE―」で初共演 浅野忠信『(木村拓哉は)同じ男として嫉妬してしまうほどの魅力』

「A LIFE―」で初共演 浅野忠信『(木村拓哉は)同じ男として嫉妬してしまうほどの魅力』

ザテレビジョンドラマアカデミー賞にて、助演男優賞を受賞した浅野忠信

日曜劇場「A LIFE〜愛しき人〜」(TBS系)で、主人公・沖田(木村拓哉)の親友で、ライバルの壮大(まさお)を演じた浅野忠信が、第92回ザテレビジョンドラマアカデミー賞にて、助演男優賞を受賞した。

――まずは受賞しての率直な感想を教えてください。

壮大のおかげですね。とても魅力的な役でしたし、集中して取り組むことができました。僕も久しぶりに連続ドラマに出させてもらったという意味でも、すごく力が入っていたので、壮大という役がどんどん盛り上げいってくれた気がします。

――壮大という役のどこに感じていましたか?

器用じゃないところですね。壮大は優れた脳外科医であり、病院の副院長も務めていて、優秀な部分がたくさんあるんだけど、その反面、取り乱しまくっている人ですから(笑)。僕自身、そこに魅力を感じましたし、同じ40代を迎えた男としては共感できるポイントがたくさんありました。というのも、若い頃はやり過ごせたことが、年を取るとやり過ごせなかったり、いろんなことが理解できなくなっていくことがあるんですよね。そういった壮大の苛立ちや葛藤、そして、失敗を経て自分の汚い部分を見直していく姿には、すごく共感しました。

――ドラマの放送中から壮大の壊れっぷりは話題になっていましたね(笑)。

そのあたりは楽しんでいただけたようで(笑)。今だにいろんな人が「壮大がすごく面白かった」と言ってくださるので、とてもありがたいことだと思います。それに、僕自身も楽しんで演じさせてもらいましたし、回を重ねるごとに壮大がどんどん花開いていくのが、すごく面白いと思いました。

――確かに終盤に近づくにつれ、壮大の野心や嫉妬心が空回りして、ちょっとおかしなことになっていきました(笑)。

ちょっとどころか、かなりおかしい方向になっていってました(笑)。でも、そういうことを目指していたというか、どんどん引き込まれる役にしたかったんですよね。映画だと2時間で終わってしまうけど、来週の放送があるというのがドラマの面白いところだなと思っていたので。そういう意味では、本当に突っ走っていました。

――壮大はすごく嫉妬深いのに、自分は不倫していたり、矛盾したところがありますね。

もう無茶苦茶ですよね。自分がなぜ嫌わるのかも分かっていない、いわばジャイアンみたいな男だと思います(笑)。

――壮大を演じる上で気をつけたことはありますか?

壮大は憎まれ役ではあるけれど、一辺倒な悪役にはしたくないという思いがありました。例えば、壮大は娘をとても愛していますが、普段は不倫をして、壁をぶん殴っているような男が「娘をこんなに愛しているのか」となったときに、「こいつバカじゃないのか」と思ってテレビを見ていた人は驚きますよね。そういった壮大の背景にある何かが出せればいいなと思い、自分からもアイデアを出させてもらいました。

■ 木村拓哉は現場では“リアル沖田”

――主演の木村拓哉さんとは今回が初共演でした。

現場では“リアル沖田”という感じが伝わってきました。言葉で説明するのは難しいんですけど、木村さんのカリスマ性だったり、何とも言えない魅力があって、そばにいると自然と引き込まれてしまうんですよね。それは同じ男として嫉妬してしまうぐらいですが、その感情をうまく壮大にも生かせたと思います。絶対にかなわない相手だということがわかったら、壮大のような人間だったら、きっとああいう感情が生まれるだろうなと思いました。

――会うまでの木村さんの印象と、実際に会ってからの印象は変わりましたか?

もちろん印象は変わったと思います。やっぱり木村さんはわれわれの時代のトップの方ですから、その方と同じドラマに出るのは、いい意味でプレッシャーがありました。でも、実際にご一緒してみたら、木村さん自身が沖田という役に現場のふるまい方を生かしているというか、現場でふるまっている木村さんが沖田に反映されているというか。僕はそういったことを器用にできるタイプではないので、すごいなと思いました。スタッフもキャストも全員巻き込んで、みんな沖田サイドになってましたから。

――そんな中で壮大は孤立する役だと思うのですが、正直、寂しくはなかったですか?

みんなから本当に嫌われているんじゃないかなと、ずっと思っていました(笑)。

――切な過ぎますね(笑)。

切ないですけど、そういう役だから、と思って。逆に、嫌われた方がいいのかなとも思っていました。でも、それでもコミュニケーションを取ろうと自分では頑張ったつもりなんですけど、木村さんのようにはいかなかったですね(笑)。木村さんは本当にみなさんから愛されていて、僕自身も大好きなので、そこは木村さんにお任せした方がいいんだなって。僕には同じふるまいはできないし、木村さんには到底太刀打ちできませんからね(笑)。

■ 自身が一番驚いた連続ドラマの出演

――そもそも浅野さんは映画で活躍されている印象があったので、連続ドラマにご出演されるということだけで、事件だと思いました。

ありがとうございます。僕自身が一番びっくりしましたね(笑)。

――出演する作品を選ぶときの基準はどこにあるのでしょうか?

最近は選ぶという感覚では無くなってきてますね。ありがたいことにオファーをいただけるから、そのときになぜこの役が僕に合うと思ったんだろうと考えたりします。いい話ばかりじゃないけど、それでもこの話を僕に振ってくれたということは、「こいつがなんとかしてくれる」と考えてくれたんじゃないかって。まあ、図々しい話なんですけどね(笑)。

なので、一概につまらないから断るのではなく、「じゃあ、どうすればいいのかと考えてください」というオファーなのかもしれないと思い、自分でいろいろ考えたうえで、一度打ち合わせをさせてもらいます。でも、打ち合わせをした後に、向こうから断られるということが何度もありました(笑)。

――そんなことがあるんですか!?

そう、あるんですよ。僕がやるんだったら、こうやりたい、みたいなことを監督に伝えたら、向こうから断られて、「えーっ?」って(笑)。僕はこれって恋愛に近いんじゃないかと思っているんですよ。僕に好きな女性ができて、「あなたとお付き合いしたい」と告白したら「イヤです」と言われて。でも、そこでこっちが「大丈夫です」と言ったら、それで終わっちゃうじゃないですか。個人的には、告白するんなら、つきあえるまで何回でも告白しなくちゃいけないと思うんですけどね。なので、1回打ち合わせしただけで断られたら、俺が告白したんじゃないんだけどって、思っちゃいますね(笑)。

――そういった考え方は、年齢と共に変わってきていますか?

変わりましたね。若いころは何も考えていなくても勢いで行けたと思うんです。それこそ、「これはやりたくない」と言ったりもしたんですけど、今はひとつひとつを楽しみたいから、より欲深くなった気がします。若いころは「つまらないから、やりたくない」ぐらいじゃないですか。でも、年を重ねるごとに、つまらないこととか、自分が理解できないこと、自分の想像以上のものを持ってきてくださることが多いんだなと理解できるようになったで、なぜこの役が自分のところに来たのかを考えるようになりました。

――浅野さんの中で映画とテレビドラマに違いはありますか?

たぶん世間から見たら、僕は映画にこだわってきた人間だと思われていると思います。もちろん、映画の方がやりたいと言っていた時代もあって、僕ほど映画にこだわってきた人間はいないというぐらいに自分を信じてやってきたんですけど、あることをきっかけに、その先にドラマがあることに気づきました。

それは映画というものがどんどん変わってきていて、今は僕が20代、30代とやってきたころとも違ってきています。まず、フィルムがほとんど使われなくなって、テレビの現場も映画の現場も撮影の方法はほぼ変わらなくなってきました。それと同時に、携帯電話でも動画が観られるようになって、映像がどんどん身近なものになってきています。それは撮影の方法でも同じことが言えると思うんですよね。

そういった状況の中で、30代のころにモンゴルへ映画の撮影に行ったときに、砂漠みたいな町にあるインターネットカフェで、子供たちがパソコンの小さな画面にしがみついて映画を観ていたんです。そこからずっと自分の中の疑問があって、あるとき「これこそが映画なんだ」と気づきました。つまり、映画館に行かないと映画が観られないのではなく、そういったコミュニケーションが取れることが映画的なのではないかと。そう考えると、テレビドラマに出るのが一番映画的なアプローチなんじゃないかと思い、今回のドラマに出演することにしたのですが、実際に僕の住んでいるマンションの人たちも「副院長、観てますよ!」と言ってくれて(笑)。今の時代においては、そういったコミュニケーションが取れることが大切で、これこそが映画的じゃないなと思うんですよね。やっぱり映画の持つ力というのは、その瞬間に何かが花開いて、今日を変える力が芽生えないといけないと思うので。そういう意味では、このドラマに参加できて、本当に良かったなと思っています。

※その他の受賞結果・各部門の順位詳細などに関しては、5月10日発売の週刊ザテレビジョン20号にて掲載中。

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