今夏ドラマの“バズる”仕掛けは「ミュージカル」。松岡茉優が踊るワケとは?【木村隆志コラム】

今夏ドラマの“バズる”仕掛けは「ミュージカル」。松岡茉優が踊るワケとは?【木村隆志コラム】

「あいの結婚相談所」では、舞台ではなく、あらゆる場所で歌い踊る山崎育三郎の魅力がたっぷり!

7月28日、「あいの結婚相談所」(テレビ朝日系)の第1話が放送され、7月クール地上波ドラマの第1話が全て放送された。第1話の視聴率トップは16.3%(ビデオリサーチ調べ、関東地区)を記録し、2話目も15.6%と好調をキープしている「コード・ブルー〜ドクターヘリ緊急救命〜THE THIRD SEASON」(フジ系)だが、今クールのドラマには、視聴率では計れない制作陣や出演者の熱量で、ネットやSNSで注目を浴びている作品が揃った。コラムニストでテレビ解説者の木村隆志氏が、ネット、SNSでバズらせるテレビ局の新たな仕掛けを解説する。

「あいの結婚相談所」(テレビ朝日系)には驚かされた。ミュージカル界のプリンス・山崎育三郎を主演に据え、「歌ったり踊ったりするシーンがある」とは聞いていたのだが、予想をはるかに上回る多さ。1話だけで5回もミュージカル風のシーンがあった。ふと考える。「ウチの夫は仕事ができない」(日本テレビ系)にも、松岡茉優が毎週歌って踊るシーンがあったな……と。しかし、登場人物がいきなり歌って踊ったら、物語の流れが分断されかねない。なぜ今期の2作は、あえてミュージカル風のシーンを入れているのか? それこそがネット上でバズらせるための仕掛けだったのだ。

■ SNSへの書き込みと短尺動画のシェア

初見は明らかに違和感があったものの、少しずつクセになってくる。気づけば「次はいつ来るのかな……来た!」と待っている自分がいた。そして、誰かとこの感覚を共有したくなり、思わずSNSへ書き込んでしまう。もともとミュージカルは重く深いテーマの作品が多く、暗くなりがちなムードを「歌と踊りの力で吹き飛ばそう」という狙いがある。実際、今夏の2作も、「婚活の閉塞感」や「仕事ができない」という暗いムードを山崎や松岡の歌と踊りで、カラッと吹き飛ばしていた。さらに、「逃げるは恥だが役に立つ」(TBS系)の恋ダンスがそうだったように、ミュージカル風のシーンだけを切り取って短尺動画にすれば、ネット上でシェアされやすい。つまり、ミュージカル風のシーンは、賛否はあれど「バズらせる」という意味で、理にかなった仕掛けなのだ。

■ 渡辺直美そのものが仕掛けだった

「バズらせる」ために仕掛けで忘れてはいけないのは、「カンナさーん!」(TBS系)の渡辺直美。そもそも、「インスタグラムの女王」である渡辺を主演に起用したこと自体が仕掛けと言える。渡辺本人と番組公式のインスタグラムを連動させられるため、その波及効果は計り知れない。さらに、ふだんファッションブランドをプロデュースしている渡辺の衣装、ツイートされやすいパワフルかつポジティブなセリフの数々、工藤阿須加による自撮りの現場ムービーなど、バズらせるために複数の仕掛けが用意されている。同作が放送されているTBSの火曜夜10時枠は、「逃げ恥」「カルテット」「あなたのことはそれほど」と3作連続でネット上の話題をさらってきた。いわば「日本一、バズる可能性が高いドラマ枠」だけに今作も期待していいだろう。

一方、右肩上がりでの話題性アップが期待できそうなのは、「僕たちがやりました」(フジ系)。1話からバイオレンスとエロを真っ向から描いたことで反発の声が多く、視聴率も低迷しているが、それも原作マンガに忠実だからこそ。子供への配慮が求められる21時台の放送であることから、「反発の声は覚悟でバイオレンスとエロに踏み切った」、勇気ある挑戦なのは間違いない。中盤以降はそれらの描写が過激化するだけに、ツイート数やネットメディアの記事は増えるだろう。仮に視聴率が低下したとしても、視聴熱は上がるのではないか。

■ 真木よう子の土下座PRはアリか?

最後にふれておきたいのは、「セシルのもくろみ」(フジ系)。正直、番組サイドのPRには物足りなさを感じるが、主演の真木よう子が頑張っている。6月28日に開設したばかりのツイッターで、土下座して視聴をお願いしたり、フォロワーのコメントにリプライしまくったり、他の作品を挑発するような言葉をつづったり、低視聴率を受けて「むしろ更に燃えてきた」とガッツを見せたりなど、話題を振りまき続けているのだ。まさに「掟破りのセルフPR」であり、なりふり構わない姿勢には心を打たれる。見方によっては、“新たな仕掛け”とも言えるが、主演自らのPRは、リスクが高い割にバズる可能性は少ない。シェアされ、バズるためには、イソップ童話「北風と太陽」のように、誰かの強い働きかけではなく、自ら「そうしよう」と思わせなければいけないからだ。また、「土下座してまで視聴率を取らなければいけないのか」「だからドラマの主演はやりたくない」と、映画や舞台に専念する俳優が増えかねない危険性をはらんでいる。つまり、本人だけの問題ではないため、制作サイドには真木への十分なケアが求められるだろう。

ともあれ、ミュージカル風のシーン、渡辺直美を生かしたインスタグラム戦略、ストレートなバイオレンスとエロ、主演女優のセルフPRと、「新しいことをやってみよう」と挑戦する姿勢は歓迎したいし、バズることを祈るばかりだ。なかでも今後のカギを握りそうなのは、ミュージカル風の演出。たとえばこの先、歌舞伎風や無声映画風のシーンが導入されても面白いのではないか。そんな演出の自由と広がりを感じさせるスタートとなった。

profile=きむら・たかし●コラムニスト、芸能・テレビ・ドラマ解説者、タレントインタビュアー。雑誌やウェブに月20〜25本のコラムを提供するほか、「新・週刊フジテレビ批評」「TBSレビュー」などに出演。取材歴2000人超のタレント専門インタビュアーでもある。1日のテレビ視聴は20時間(同時視聴含む)を超え、ドラマは毎クール全作品を視聴。著書に『トップ・インタビュアーの「聴き技」84』『話しかけなくていい!会話術』など

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