演出賞は「CRISIS―」 “驚異の7分30秒”の裏側とは!?

演出賞は「CRISIS―」 “驚異の7分30秒”の裏側とは!?

アクションシーンがたびたび話題になった「CRISIS―」から演出の鈴木浩介と白木啓一郎が受賞

'17年春クールにかけて放送されたドラマを対象に開催した「週刊ザテレビジョン 第93回ドラマアカデミー賞」。最優秀演出賞は、「CRISIS 公安機動捜査隊特捜班」の鈴木浩介と白木啓一郎が受賞した。

「新幹線での格闘や長回しで、ドラマの枠を超えたアクションを見せた」と高い評価を受けた同作。両氏に、緻密な演出と過酷な撮影の裏側を聞いた。

■ 話題になったアクションシーンはどう作られた?

――視聴者や審査員からも、「やはりアクションがすごい!」という意見が多数でした。アクションシーンはどの様に撮影・研究されたのでしょうか

鈴木浩介:まず、金城(一紀)さんの脚本に合った場所をロケハンして探します。そこから、「こういうアクションを入れたい」という意見をアクションチームがテレビ映えするようにアレンジします。ここで、実際にアクションチームが自分たちで同じ動きやカット割りをした想定のビデオコンテを作るんです。そして監督やプロデューサーチェックが終わって初めて役者がそのアクションを見るという段取りになっています。なので、通常のドラマではありえない時間をかけて作られているんです。

白木啓一郎:実は、僕もこのドラマをきっかけにカリシラットという武術を習い始めて、なぜこの攻撃なのか、なぜこの立ち回りで組んでいるのか、というのが分かる様になりました。

――そんなアクションシーンの中で、これまでの作品との違いを感じたのはどんなところですか?

鈴木:実際に役者さんが動いているスピード感をどのように保つか、ということを工夫しました。なので、動きが一連になって見えるようなところは実際に連続して撮っています。普通はアングルを変えるようなところも、あえて変えないで撮影しました。「切り替えてもう一回撮るから」ではなく、ワンカットに命を懸ける集中力が、皆さんすごかったですね。

白木:この作品はアクションが売りであるけれど“サスペンスアクション”であって、単なるアクションドラマではありませんでした。サスペンスストーリーが全体を飽和していて、その一部のエッセンスとしてアクションがあるという考えになっています。これまでは、どうしてもアクションだけが突出してしまう形が多かったですが、今回のようにあくまでストーリーの一部としてアクションをコントロールするというのは新鮮でした。

■ アクションだけじゃない! 演出のこだわりとは?

――全体を通して、金城さんから演出に対するリクエストはありましたか?

鈴木:クランクインの時から脚本もそろっていたので、撮影前から技術もアクションチームもある程度は予想することができていました。しかも、金城さんのト書きにはすごく細部まで書かれていて、3Pくらいト書きだけだったこともありました。キャストもスタッフもその本をちゃんと読み込んできていたので、間違いなく現場では誰もぶれていませんでしたね。なので、僕ら現場班としては「どういうイメージを持っているんだろう」と金城さんの頭の中に入っていくという作業を一番に考えていました。

白木:「『CRISIS―』はこの世界観でいきましょう」と脚本段階で決まっていました。だからわれわれもその世界観をなるべく具現化しようと努めてきました。1話の冒頭の新幹線のシーンなんて、乗車して何分何秒で稲見が飛び降りた相模川まで着くかとかも、実際に金城さんが自分で乗車して動画に撮ってチェックしていましたからね。こんなに計算されている本は見たことがありませんでした。なので、こちちも「ちゃんとやらなくては!」と気が引き締まりました。

――アクションシーン以外の部分でこだわったところは、どんなところでしたか?

鈴木:せりふが少ない分、表情で見せるところが多かったので、これは音楽のインパクトも必要だと考えました。そこで、澤野(弘之)さんにお願いできたのは大きかったと思います。表情で見せて、そこに音楽をぶつけて感情をあてていくことができました。彼の音楽でなかったらまた違っていたと思います。

白木:僕が演出した回はバックショットを多くいれています。表情が見えないことで、視聴者の方にいろいろな想像をしてほしかったんです。この人はどう考えているんだろう、この人は恐らくこういう人だな、という具合に。そうすることによって特捜班メンバーや登場人物の心情がより深く印象的になると考えました。

■ 7分30秒のノンストップアクションは制作期間も長かった!

――お二人にとって印象的だったシーンを教えてください

鈴木:やはり最後の9話、10話ですかね。金子(ノブアキ)くんがきてくれたおかげで締まりましたね。小栗くんも対金子くんとの表情はすごく良かった。あのこぼれる涙を見て、感情の作り方も尋常じゃないな、と思いました。それが、最後の最後に視聴者のみなさんにお伝えできて良かったです。あと、4話の小市慢太郎さんの演技もすばらしかったですね。最後の泣き笑いの演技なんて、そうそうできるものではないですよね。金城さんの本は、普通は助かろうだろうというところが全部逆になっているんです(笑)。なので、こちらも役者もさらっとやることはできなかったです。

白木:第8話の「神の光教団」に乗り込むところですね。今までドラマを撮ってきた中でも間違いなく一番大変なシーンでした。実は、7分30秒のノンストップアクションのシーンを作るのに、1カ月以上かかっているんです。ロケハンだけでも6回は行っていますし、その後のアクション稽古も特捜班メンバーだけで延べ2週間くらい、リハーサルにも2日間もかかっています。ただその分、現場では「きょうはとんでもないことが起きる」というキャスト、スタッフの一体感と緊張感が生まれていました。

――主演の小栗さんの印象やエピソードをお聞かせください。

鈴木:しっかり準備をして臨んでくれました。第1話の新幹線のシーンのアクションもリアルなスピードなんです。スピードの可変とかしていなくてあの速さだったので、現場では「これ、分かるかな?」と一度議論になったんです(笑)。でも、結果的に金城さん、笠置(弘置)プロデューサーも交えたミーティングで、「リアルなんだし、これでいこう!」となりました。

白木:特捜班のメンバーで、小栗さんよりも年下なのが新木優子ちゃんだけだったので「座長としてこんなに楽な現場はない」とおっしゃってましたけど、率先して現場の雰囲気作りをしてくださっていました。アクションに対する熱量もすごかったです。ただ、早朝に遊園地を走った第3話のシーンの時には「朝から走るのはきついよ〜」と唯一こぼしていました(笑)。そのくせ、カメラと並走しなくてはいけないところでなぜかカメラを追い越したりするので6回くらい走ってもらいました。後で聞いたら「何か競争したくなったんです」って(笑)。

――最後に、この作品に携わって感じたことを改めてお聞かせください

鈴木:まず、この企画に呼んでもらえたことに感謝しています。信頼のおけるチームの中で「みんなと一緒に面白いものが作れるぞ」という気持ちが強かったです。毎日撮影に行くのにワクワクしました。この作品を通して、風通しの悪かったドラマ業界に少し風穴を開けられたかなと思っています。ドラマ作りの人たちに「WEBではなく、テレビもまだ面白いんだ」と勇気を与えられたんじゃないかな。

白木:殺伐としたドラマを作っている割にはすごく現場の雰囲気はよかったです。何より、「とんでもないものを作っている」「ドラマ業界に風穴を開けるんだ」とスタッフもキャストも共通して思っていたのが大きいと思います。この作品は、セリフが少ない中での演出や、全てが解決しないラストとか、昨今のドラマとは全く違うものでした。これまで連続ドラマをやってきて、どこかやり慣れてきた中での方法論のようなものがあったのですが、それが今回全部フラットになったと思います。それだけ新鮮な現場でした。今後続きがあるのかは分かりませんが、あの後特捜班がどうなっているのか、見届けたいですね。

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