【テレビの開拓者たち / 古沢良太】日本だけじゃなく、世界中の人たちが見るようなものを作りたい

【テレビの開拓者たち / 古沢良太】日本だけじゃなく、世界中の人たちが見るようなものを作りたい

こさわ・りょうた=1973年8月6日生まれ、神奈川県出身

2002年、「第2回テレビ朝日21世紀新人シナリオ大賞」を受賞し脚本家デビュー。「鈴木先生」(2011年テレビ東京系)、「リーガルハイ」(2012、2013年フジ系)、「デート〜恋とはどんなものかしら〜」(2015年フジ系)など、放送終了後も熱く支持され続けるテレビドラマを次々と生み出し、また「ALWAYS 三丁目の夕日」シリーズ(2005、2007、2011年)、「キサラギ」(2007年)、「エイプリルフールズ」(2015年)など話題の映画も多数手掛ける、今最も多忙な脚本家・古沢良太氏。10月21日(土)には、卓球の男女混合ダブルスを題材にした映画「ミックス。」が公開となる古沢氏を直撃。その人気の秘密に迫るべく、脚本家としての心構えや今後の展望を聞いた。

■ “こういうものが作りたい”という最初の衝動を大事にしています

――映画「ミックス。」は、古沢さんの“ラブコメ書きたい熱”から生まれた作品だそうですが、古沢さんの中では、常に「こういうものが書きたい」という構想があるんでしょうか?

「そうですね。いつも書きたいテーマはいっぱいあって、アイデアだけはたくさんあるんです。体が足りなくて、あと2つ3つあったらいいなと思うんですけど(笑)。まぁ、ひとつひとつ順番に出していって、コツコツ書いていこうかなと。ラブコメもそのうちまた書くと思います」

――今書きたいジャンルは?

「特に興味のあるジャンルというのはないんですが、こういうものを作ったら面白いんじゃないかなというのはたくさんありますよ。この仕事を始める前は、そんなにアイデアなんて出てこないと思ってたし、やりたいことをいくつか出したら、何もなくなっちゃうんだろうな、どうしようかな、なんて思ってたんですけど(笑)、今はやればやるほど、やり残したことが自分の中に積み重なっていって、そこから次にやりたいものがまた出てくるんですよ。それを人が喜ぶかどうかは分からないですけど(笑)」

――ジャンルやテーマは違っても、「ここだけは貫きたい」というような、脚本を書く上でのこだわりはありますか?

「最初に『こういうものをやったら絶対面白い』と思ったときに、自分の頭の中にあふれ出るイメージみたいなものがあるんですね。でも、実際に脚本を作る作業が始まると、時間も掛かるし、細かい修正だったり、現実的な要求にも応えていかなければならない。そうするうちに、その最初の気持ちを忘れてしまうことが往々にしてあるんです。ふと気がつくと、『あれ、俺、何をやりたかったんだっけ?』と見失ってしまう。だから、一番最初に“こういうものが作りたい”と思ったときの衝動や、そのときに浮かんだイメージを忘れずにいる、ということを大事にしています」

――その「イメージ」は、古沢さんの頭の中で映像として浮かんでいるんでしょうか?

「ええ、映像になってますね。ダイジェスト版や予告編みたいな感じで浮かんでくる。それで一人で感動して泣いたりして(笑)。で、お客さんにもこの気持ちを共有してもらえたらいいなと思いながら書き始めるわけですけど、その最初のイメージが豊潤であればあるほど、楽しく作っていけるんです」

■ たとえ変人でも、“体温が感じられる人物”を描きたい

――古沢さんは脚本を執筆する際、全てのキャラクターを演じながら書かれるそうですが…。

「ああ、そうですね。演じながら、というか、なりきって、というか(笑)」

――そうするうちに、俗に言う“キャラクターが勝手に動き始める”という状態に?

「どうなんでしょうね…。僕の場合は、そういうことじゃなくて、ただ自分がやってみたいだけなんだと思います(笑)。こんなセリフを日常でも使ってみたいなとか、そういうシンプルな感覚なんじゃないかな」

――では、古沢作品の個性豊かなキャラクターたちは、どのように生まれてくるのでしょうか?

「そこまで風変わりな人物を作っている意識はないんですけど…いや、あるか(笑)。ただ、たとえ変人だとしても、体温が感じられない人というか、実体感のない人にならないように、自分との共通点や誰もが共感できる部分を頼りに書くようにはしていますね」

――古沢さんにとって、脚本家としてターニングポイントとなった作品は?

「『ゴンゾウ〜伝説の刑事〜』(2008年テレビ朝日系)ですかね。オリジナル脚本だったんですが、自分がゼロから発案したことを、いろんな人たちが熱を持って形にしていく、という工程を目の当たりにして。やはり学ぶところは多かったですね。また、向田邦子賞をいただいて、やっと『脚本家です』と胸を張って言えるようになった作品でもあります。残念ながら視聴率的にはたいしたことはなかったんですが、他にもいろんな賞をいただいたりして、関わったみんなにとっても、いい思い出になってるのかなと、なってたらいいなと思うんですけど」

――「リーガルハイ」のヒットも、大きかったのでは?

「『リーガルハイ』は、実は視聴率が特別高かったわけでもないし、正直、『もっとああすればよかった』という悔しい思いもたくさん経験した作品なんですね。でもその一方で、たくさんの方々から『面白かった』と言っていただけたのは確かですし、いまだに“リーガルハイの人”と呼ばれることもある。そういう意味では、後から強制的にターニングポイントにされてしまった作品、と言った方がいいかもしれません(笑)。もちろん、大事な作品のひとつではあるんですけど」

■ 「逃げ恥」に先を越されて、ちょっと悔しかったですね(笑)

――杏さん、長谷川博己さん主演のラブコメディー「デート〜恋とはどんなものかしら〜」も、熱烈なファンが多く、今なお続編を待ち望む声も多いようですが。

「『デート』は、“恋愛ドラマはもうウケない”と言われる昨今の風潮に対して、そうじゃないことを証明したくて挑んだ作品で。ところが、実際にそれを証明したのは『逃げ恥(逃げるは恥だが役に立つ)』(2016年TBS系)だったという…そこはちょっと悔しかったですね(笑)。僕は下地を作っただけか、みたいな感じで。でも、杏ちゃんも長谷川さんもみんな素敵でしたし、とても思い入れのある作品です」

――古沢さんは、コメディーの作家としても高く評価されています。映画「ミックス。」も爆笑シーンが満載ですが、そんな古沢さんの笑いのセンスを培ったものは?

「子供のころにドリフ(ザ・ドリフターズ)が好きだったり、学生時代に落語が好きでよく聞いたりしていたくらいで、決してコメディーが得意だという自覚はなかったんですよ。でも、いざコメディータッチのものを書いてみたら、意外にもみんな喜んでくれた、という感じで。ただ、今振り返ってみると、倉本聰さんのテレビドラマから受けた影響は大きいかもしれません。倉本さんの書くコメディーって、別にふざけたセリフとかギャグっぽいことをやるわけじゃなくて。作品世界の中で生きている人たちのペーソスというか、登場人物の一生懸命に生きている姿が、客観的に見てみると滑稽に見える、という人情喜劇なんですよね。先日まで放送されていた『やすらぎの郷』(2017年4〜9月テレビ朝日系)が久しぶりにそういうテイストで、夢中で見てたんですけど」

――ファンとしては、ゆくゆくは「やすらぎの郷」のような帯ドラマや、NHKの朝ドラや大河ドラマといった大作を古沢さんに手掛けていただきたいなと勝手に夢想してしまうのですが…。

「(笑)。もちろんやってみたいですけど、その前に、自分のやりたいことや計画があるので、それをひとつひとつ出していくことの方が大事かなと」

――その「計画」は、具体的にはまだ教えられない?

「そうですね(笑)。ひとつ言えるのは、日本だけじゃなく、世界中の人たちが見るようなものを作りたいな、という気持ちはあります」

――世界を意識すると、作り方も変わってくるのでしょうか?

「逆に、日本について、より深く考えるようになりますよね。全人類が分かることをベースにしながらも、あえて日本的なことをやるというのも面白いんじゃないか、とか。でも、一番違うのは“ワクワク”の大きさじゃないですかね。だって、日本の中で視聴率がどうこう言ってるより、世界中の人たちに向けて作る方が、よほど夢のある話だと思いません?(笑)」

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