「NHK1.5チャンネル」編集部員に聞く!第1弾“バズる”動画の法則ってあるの?

「NHK1.5チャンネル」編集部員に聞く!第1弾“バズる”動画の法則ってあるの?

「NHK1.5チャンネル」編集部の長谷英里子(左)と、編集長の小国士朗(右)

NHKが提供する無料の動画コンテンツ「NHK1.5チャンネル」では、NHKで過去に放送した番組の中から役立つ情報などの“オイシイところ”を、“オイシイかたちで”見られるような動画を、独自のWEBサイトとFacebookなどで配信している。

3月に登場したこの動画サービスに携わっているのはNHK職員を中心に、5人からなる「NHK1.5ch編集部」。

謎だらけの5人の中から、編集長・小国士朗氏と「ガッテン!」(毎週水曜夜7:30-8:15、NHK総合)などの科学・環境番組を担当する長谷英里子氏にインタビューを行い、「こんな動画を作って何か言われなかったの?」や、「どんな動画が“バズった”んですか?」という疑問をぶつけてみた。

■ 動画は5人で全てチェック

――まず、どのようなチームで動画は制作されているのでしょうか?

小国:5人の編集部員と外部の制作会社さんに入ってもらって作っています。僕が編集長で、他にプロデューサー1人がいて、あとプロジェクトマネージャーが2人います。長谷は、「NHK1.5チャンネル」で取り扱うことの多い、科学系の番組を取り仕切っています。

週2回の企画会議を毎週行っていて、そこで番組班や編集部員、制作会社さんが持ち寄った企画をみんなで見て話し合うんです。実際作ってもらった動画を編集部員たちで試写して、修正しながら完成させていくという形ですね。

――番組からの提案を基に動画を作成しているんですか?

小国:いや、基本的には番組班からはネタだけもらう形ですね。例えば「ガッテン!」だったら、過去に番組で紹介した「タオルをふわふわにする方法」や、「さんまをジューシーに焼く方法」だとか、そういうネタリストをもらって、その中のどれがSNS向きかを話し合ってテーマを選んで、どうやって紹介するかを決めています。

番組側からは、どういう形で(アニメか、実写かなど)紹介するかについて意見をもらうことはあまりないんです。ただ、出来上がった動画の事実関係の確認だけはしてもらっています。動画を短く編集し直すので、事実関係に誤解が生じてしまったり、変にあおり過ぎていたら良くないので。

――お笑いコンビ・Aマッソがアテレコする「ダーウィンが来た! 生き物新伝説」」(毎週日曜夜7:30-8:00)などの動画も話題になっていましたが、そのキャスティングはどのように決めているんですか?

小国:僕たちがキャスティングを決めるってことはあまりないですね。話し合う段階で、じゃあこの動画はアテレコにしようと考えるのはこちらなんですけど、「じゃあ誰にお願いしよう」というところは制作会社さんに任せています。

長谷:もちろん、出演に関する正式な依頼は私たちがしていますけどね(笑)。そもそも「ダーウィンが来た!」で言うと、番組が持っているたくさんの動物映像の中から、ネットで展開していいものを番組班に出してもらって、その中から私たちが選ぶんですね。

「面白そうだから何かやりませんか?」とこちらから声を掛けるものや、番組から「何かあるんだけど」と持ってきてくれるものもあるので、ケースバイケースなんですけど。最近は、私たちがしていることが局内でも広がってきたのか、番組から「こんなことできませんか?」と相談してくれることも増えてきましたね。

――番組側が「やりたい!」と言ってきたものは、具体的にはどの動画ですか?

小国:「LIFE!」(不定期放送、NHK総合)の動画はもう完全にそれですね。番組班が、今までテレビではできなかったことにチャレンジしてみたいということで相談してくれたんです。

番組本編ではなかなかできないかもしれないけど、ムロツヨシさん推しの動画の撮り下ろしコントをWEB用の新しいプロモーションとして作成してくれて、この動画に関しては、「LIFE!」番組班が本当にがやりたいことをやっているので、僕たちは出来上がってきたものを見ただけでした。

あとは「ねほりんぱほりん」(毎週水曜夜11:00-11:30、NHK Eテレ)の八代亜紀さんが歌う「大人の絵描き歌」の動画や、土曜時代ドラマ「悦っちゃん」(2017年、NHK総合)の石田ニコルさんの昭和ラブ&ポップをテーマにした「モガ・ニコル」動画もそうでした。

――逆に、番組にお願いをして作ったのはどの動画ですか?

小国:サービスを始めた当初に公開されている動画はほとんどそうですね。その時はまだ何も形が出来ていなくて、みんなが「一体1.5チャンネルで何をやるんだろう?」ということが分からない状態だったんです。

そんな中で、「ドキュメント72時間」(毎週金曜夜10:50-11:15、NHK総合)は、“ネット民”からは非常に人気が高い番組なので、「何か作りたい」と、番組と話し合っていたんです。

ロケに出てきた一般の方をネット動画で流すのはなかなか難しいので、「コラムにしたらいいんじゃないか」とこちらから提案したんです。そこで、「朝まで!ドキュメント72時間」(不定期放送、NHK総合)にも出演されていたコラムニストの吉田潮さんにお願いして、作りました。

■ タイミングを狙って投稿する

――特に“SNS受け”する動画の特徴などはあるんでしょうか?

小国:いまだに僕らも全然分かんないんですけどね。半年やってみたじっかんとして分かってきたことは、「感動や共感ができる」、そして「役に立つ」動画で、投稿のタイミングが重要だということですね。

ネットの動画配信サービスをやられている方からしたら、どれも当たり前のことなのかもしれませんが、その3つの要素が全て合わさっていて、すごく再生数が伸びたのは「ガッテン!」の『「足裏拭き」で蚊に刺されにくくなる!?』という動画でしたね。

足の裏を拭くだけで、蚊に刺されにくくなるという“ハウツー”の要素と、妹のために高校生のお兄ちゃんが考えた方法という“ハートウオーミング”な部分があり、ちょうど蚊が増えてくる7月頭にFacebookに投稿したんです。そしたら、またたくまに拡散していって、世界中で1800万再生されました。

長谷:ちょうど棋士の藤井聡太四段など、10代の活躍に注目が集まっていた時期なのも良かったみたいです。あとは7月の海の日近くの連休に投稿した「あさイチ」(毎週月〜金朝8:15-9:55)の「スゴ技の泉」の3つの動画も結構再生回数が伸びました。

――その動画も、タイミングを狙ったんですか?

小国:そうですね。狙って投稿しました。でも、投稿のタイミングをはじめとした、さまざまな“狙い”を持てるようになったのはごく最近のことです。始まってしばらくは狙うとかっていうよりも、ただがむしゃらに「頑張る!」って感じで作っていたんですけど、「NHKスペシャル」(NHK総合)の番組班にオーダーされて作った「ばっちゃん」という動画が大きな転機になりました。

非行に走る少年少女に対して、自宅を開放して食事を提供している元保護士のおばあちゃんを取り上げた「Nスペ」の動画を作成したんです。この番組を作るために、ディレクターは8年間取材していたそうで、それを「1.5チャンネル」では約1分半の動画に収めるわけで…その重みはすごかったですね(笑)。

結局動画を作るのに1カ月くらいかけて、投稿したらほぼ100万再生されて。その動画が僕らにとって初めてのヒット作になったんです。

ヒットはしたんですけど、こういうすごく“NHKっぽい”動画が受けることが不思議で、「なぜ受けたのか」ということを研究したんですけど、Facebookなどでは、実は心温まるような動画をみんながシェアや“いいね!”したいと思っていることが分かって。

「僕らNHKのコンテンツって意外と自信を持っていいんだな」ということを発見したんです。結構それまではこねくり回したネタも多かったんですよね(笑)。

長谷:「受けよう!」と思って、わざと“NHKっぽくなさ”を強調した動画も多かったです。そういうものは事ごとく駄目でしたね。

小国:それよりは、いいものはちゃんと出すべきということがだんだん分かってきました。キャッチコピーの「オイシイところをオイシイかたちで」に忠実に、番組のエッセンスを凝縮して、SNSに向いた形で出すということが大切なんだなと思いました。

長谷:Facebookについて言うと、“いいね!”を押した瞬間に、自分が押したということ実名で広まるから、やっぱり押しやすいネタがあるんです。

小国:それが分かってから少し変わりましたね。“役に立つ”動画もシェアしやすいので「すくすく子育て」(毎週土曜夜9:00-9:30、NHK Eテレ)の「いないいないじいじ」もヒットしましたね。

長谷:この動画は、久しぶりにおじいちゃんたちに会う子どもたちが、びっくりして泣いてしまわないように写真で見慣れさせておこうという内容の動画なんですけど、これはもともと公開されている動画だったんです。

でも大型連休や夏休みの帰省シーズンに新しい動画として投稿することで、再生回数が増えていきました。

これは、番組でオンエアしたまんまなんですけど、届いていないところまで、私たちが見やすい形で紹介できたのかなと思いましたね。

――Twitterも運営されていますが、そこでの反響もあるんですか?

小国:Twitterは苦戦中です(笑)。「Twitterでは中の人のキャラクターで押した方がいい」というアドバイスをもらったので、それで頑張ってみたら逆にキャラが立ち過ぎて、そいつが「今日大きい犬見つけた」っていうつぶやきにたくさん“いいね!”がついて、1.5チャンネルのコンテンツの紹介にはあまり“いいね!”がつかない…。

編集長としては正直どうしようかなと思っています(笑)。それもあって、今はFacebookを主戦場にしていますが、今後はTwitterやYouTubeでの展開もいろいろ考えています。

――動画を公開した後には、番組班の方から感謝されることが多いですか?

長谷:そうですね。番組班の人たちも、ネットでの展開に興味はあるんですけど、時間が足りません。あと、番組取材をしている本人が、作ったものを短尺に縮めようとすると、「ここは落としたくない!」という部分が多過ぎて本当に“オイシイところ”が切られていない動画になってしまいがちです。

だから番組班としては、ネタと要点だけを提供して、全く別の方に編集してもらうことで、「あ、ここが残るんだ」という新しい気付きも得られるようです。最近は、ネタの提供や新しく参入したい番組からの相談もすごく多くなってきました。いい意味で、すごく反応が多いです。

小国:公開後ネットがざわついた「ガッテン!アニメ」でも、番組のカットが少ししか入っていなくて、あとはクリエーティブユニットの“AC部”が作成したアニメーションなんですけど、「ガッテン!」の番組班は動画を見てすごく喜んでくれました。

やっぱりテレビで届く世代と、インターネットから届く世代は違うんですよね。自分たちが作った番組が、20代を中心とした若い世代の人々に届けられる場があるなら、参加したいと思ってくれる番組も多いんです。

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