異色の対談が実現! 又吉直樹と西野亮廣が「芸人」を語る

異色の対談が実現! 又吉直樹と西野亮廣が「芸人」を語る

又吉直樹と西野亮廣の対談が実現

同期で同い年にもかかわらず、公私共に直接の絡みがほとんどなかった又吉直樹と西野亮廣。

その活動や価値観に共通点は多いのに、すれ違い続けてきた二人の対談が先ほど発売された「別冊カドカワ 総力特集 又吉直樹」誌上で実現した。おりしも、芸人を志し夢破れた若者たちを描いた、又吉の原作映画『火花』が上映されているいま、それぞれにとっての『芸人』を語り合った。

■ スターになれなかった僕は何をするべきか

又吉 これまで西野くんと飲んだんは一回だけちゃうかな? むっちゃ昔。他の先輩もいて。

西野 覚えてる、俺、全然覚えてる! そこで又吉くんに何を言われたかも覚えてるもん。

又吉 僕が、線香花火の時やから十六年くらい前かな。

西野 あの時、一日に二回ライブしてて、みんなは一回目と二回目の間に遊びに行ってたんだけど、僕だけずっと二回目のモノボケのネタを考えてた。僕、モノボケとか苦手だから。それを又吉くんが見てたんだよね。

又吉 モノボケとか一発ギャグって、舞台上で急に振られて急にやる、かっこよさみたいなのってあるじゃないですか。そういうのに憧れるんだけど、スベる場合もある、準備してなかったら。スベるのが一番イヤやけど、でも、同業者に対してあるんやな、準備するの恥ずい、みたいなのが。

西野 あるある。

又吉 ほんまは見たい、どんな道具があるのか(笑)。でも、あんま見てても、「あいつ真面目やな」って思われるのがイヤやから。でも、みんなはそんなん気にせんと遊びに行って結局スベる(笑)。まだ若いし、そらスベるよなあって。その時、西野くんだけ遊びに行かんと、道具持って準備してた。

西野 全然あかんやん、こんな奴(笑)。

又吉 めっちゃ見てるやん、こいつ。

西野 全然おもしろくないやん、こんな奴。真面目、真面目。

又吉 それがよかった。そうすべきやなあ、って思った。助走台みたいなのを外すのは後でいいと思った。西野くんを見習いました(笑)。そっから僕も準備するようになった。

西野 又吉くんは一年目からこの感じやったね。変わってない。

又吉 西野くんは、吉本の同期で同い年。キングコングは、早かったですよね、売れるのが。普通、同期が活躍すると何か思うところがあるもんですけど、雲の上すぎて、嫉妬する距離じゃなかった。もう神やと思ってたから。

西野 でも、二十五歳で『はねるのトびら』がゴールデンに昇格して、視聴率が二十%を突破した時に、「もうこれ、ダメだな」ってボロボロ泣いたの、僕は。

又吉 どういうことですか?

西野 あの番組って、フジテレビが「八年に一回スターを産む」っていう流れやった。深夜番組からゴールデンに上がったから、そのまま僕もスターになれるって信じていて。で、とにかく一生懸命やって収入も上がったし、ちやほやされて人気タレントみたいなことにはなったけれど、全然突き抜けてないやん、って。前にはタモリさんとか、たけしさんとか、さんまさんとか、ダウンタウンさんとか、先輩方がやっぱりいるし。下駄はかせてもらって、みこし担いでもらって、追い風も吹いて、それでも抜いてないってことは、「これは抜けないな」って。

又吉 それ、二十五歳?

西野 二十五。言い訳できないくらい条件がそろってた。不利な条件がいくつかあったら、それこそ「もうちょっと打席に立たせてもらったら」とか言えたんだけど…。あれだけそろった上で突き抜けてないってことは、これはもう普通に芸人やっててもダメだなって、思った。

又吉 僕は小学校からお笑い好きやったんだけど、見てて、大人やのに変なことしてるし。

西野 あった!

又吉 歌も歌いはるし、映画も出るし、一番自由な職業やなって、憧れて。僕、サッカーやって、お笑いもやってたけど、お笑いやる前に、劇の『さるかに合戦』を大阪弁に直してみたりとか、人に見せられへんような暗い感情をノートに書き綴ってみたりとか、そういうのをずっと一人でやってて。それは芸人でもなんでもないけど、人を笑かすのは好きやから。こういうのを全部できる職業ってなんやっていったら、たぶん詩人じゃないし、劇作家でもないし、芸人やな、みたいなのがあって。

もちろん漫才大好きで、コント大好きで、やりたいっていうのが、まずでかくあったから、吉本に入った。やりたくって実現したいことが、他の人とちょっとずれると、いろいろ言われて、でも僕の中では「何をやっていようが芸人は芸人や」みたいなのがずっとあるけど、そういうことを言うと周りからいろいろ言われんのかなとか思って黙ってるのを…西野くんが全部言うてくれてる(笑)。

西野 ずるい! ずるい!

又吉 なんで、それ自分で言わへんねんって言われると、ほんま返す言葉ないんですけど。

■ 職業・芸人でなく生き様・芸人を目指す

西野 去年まで僕、ナイナイの岡村さんとバチバチだったんですよ。岡村さんは「芸人だったらひな壇に出ろ」って言って、僕は「芸人だから出たくない」って。つまりお互い「芸人」っていう言葉を使ってるんだけれど、着地点が違う。それぞれ芸人の定義が違ったんですね。岡村さんは、芸人はやっぱり、ひな壇に出て漫才をしてコントしてって、「これとこれとこれをする人」、つまり職業名、肩書きとして「芸人」という言葉を使われていたけれど、僕はそうではない。あと二年で定年やのに、退職金もらう前に蕎麦屋始めてしまうオヤジとか、いいとこの大学出て一流企業入れるのに、急に世界一周旅行してしまうとか、そういう奴がその瞬間とってる姿勢の名前を、「芸人」と言うと思ってて。そんなことしていいの? って、その存在自体が「問い」みたいになっている、そういう奴のことを「芸人」って言ってるの。

又吉 芸人っていう枠があって、そこにはまりにいくんじゃなくて、もうちょい動いてるもんやってこと。もっとどんどん言って(笑)。

西野 あなたも言いなさいよ!

又吉 僕が小説書いた時も、たぶんそういうこと言われるやろなって思った。表現に関してずっと子供のころから考えてきたことも、本に全部書いてはいるけどね。神谷っていう先輩が、「漫才師とはこうあるべきやと語る者は永遠に漫才師にはなられへん」(単行本『火花』十六頁八行目〜)って言ってたりだとか。だから、読んでもらったらたぶん、「芸人ですか? 作家ですか?」っていう質問自体がずれてるとわかると思うんやけどね。だけど、そういうことを僕は言わない(笑)。

西野 言えよ! 言いなさい。僕が言っちゃうことになるんだから!

又吉 そこが僕の弱いとこ。「西野くん、すごいなぁ」と思うのは、ちゃんと全部言うやん。

西野 言う、言う。

又吉 言うと、そこで、軋轢とか摩擦とかが起こるじゃないですか。それを引き受けた上で、さらに前に進んで行こうとするし、その上で実現しようとするじゃないですか。でも僕、この途中は省きたいんですよ(笑)。もっといい方法で、ジャンプして実現したい。実現するための障害みたいなものを、できるだけ排除したい。

西野 言っちゃうんだよね、こっちは。口が軽いからペラペラペラペラ。

又吉 でも間違ったことは言ってないんちゃうかなと思うんです、いっつも。岡村さんは岡村さんが信じている芸人というものを突き進んでて、西野くんは西野くんが信じてる芸人で、それは僕が考えていることとすごく似てるけど、そこは別にお互い間違ってはいない。それを押し付け合わない世界になればいいなって。

西野 いや、ほんと。

又吉 僕は逃げてるわけじゃなくて、一番やりたいこととか、一番実現したいことが大事なんですよ。サッカーで言ったら、途中の美しさは一回置いといて「とりあえずシュートを決めたい」っていうとこがちょっとある。でも、ええなぁと思うけどね、西野くんが戦ってる姿を見ると。僕も考えてることはあるし、言葉もあるから、それを出さないようにするのって難しい。だから言っちゃう時はありますけど。(ザテレビジョン)

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