又吉直樹と西野亮廣 対談「『好きを追求すること』と『その代償』」(連載最終回)

又吉直樹と西野亮廣 対談「『好きを追求すること』と『その代償』」(連載最終回)

又吉直樹と西野亮廣

同期で同い年、共に芸人の活動範囲を押し広げ活躍しながら、なぜかすれ違ってきた又吉直樹と西野亮廣。「別冊カドカワ 総力特集 又吉直樹」誌上で実現した二人の対談の模様を、お伝えする本企画の、最終回です。

■ 好きを追求することとそこから生じる代償

西野 僕、絵本を書くって言った時に、結構バッシングがあったんですよ。なんで芸人なのに絵本書くんだって。ひな壇に出ないって決めた時にもバッシングがあった。その時に、学校だとか会社とかで、意思表明をしたら軽い村八分に遭ってる人たちがバッて集まってきたんです。それで、「この人たちを徹底的に応援しよう」って思った。絵本だろうと自分の活動だろうとこういった場のコメントだろうとビジネス書だろうと。ああいう「意思表明した結果、村八分に遭った人たち」を、徹底して応援するって決めた。だから、その人たちのことは常に考えているよ。

又吉 絵本にも、それは反映されてる。

西野 そうそうそうそう。「ゴミ人間」ね。

又吉 僕、最初は何も考えてなかったけど、『火花』を出した後の反響とか、「なるほどそう思うんや」って、読者が完全にパキッと見えてしまったんです。ほんなら、そういう人たちを楽しませたいな、とは思っちゃいますね。

西野 僕、ライブの集客が一番落ちたのって、『はねるのトびら』がゴールデンに上がった時なんですよ。そっから徹底して、その人たちを応援するっていうふうにしたら、わかりやすく集客は増えたんです。だからまあ、届いてるのかな。

又吉 西野くんの言ってるやつで言うと、自分が作ってるものと届けたいもの、今、ずれてんなとか思う時もやっぱりありますね。でも楽しいことが、自分の前にないと無理なんですよ。生きていく理由がない感じで。

たまに、それ考えると怖くなるんです。あの人とご飯行けるから、それを楽しみに頑張ろうとか思うんですけど、たまにもう一人の自分が「お前、あの人と飯食うの、ほんまそんなに楽しみか」とか聞こえてきて。それで深く考えんとこ、って。それか、すごい楽しいんだって言い聞かせて。次ライブできるから、すごい好きなことできるぞって、毎回励ましながらやってる。そういうのがなくなったら、取り上げられたら、ほんまやることがない。

西野 確かに楽しいもんね。

又吉 たぶん西野くんもそうやと思うんですけど、他の人が努力としてることを、僕らは努力と思わずにやってると思うんですよ。作業時間がめっちゃ長いとか、絵を描いてると五時間とか六時間とかやらなあかんやろし、僕も文章書いてたら、ほんま寝ずにやるみたいなことも楽しさの中に含まれてるから。それがあると、なんとか生きていける。

西野 僕もおんなじ。収入には興味がないけど、楽しいことを取り上げられると全然ダメ。それがあるから生きていける。もう楽しいことしかしたくない。楽しいことしかせずに、楽しいことだけで生きていけると思って、そもそもこの世界に入ったわけだから。

子供の時に『加トちゃんケンちゃん』とか見て、我慢なんかしなくていいんだって思ったんですよ。遊びながら、朝から晩までずっと遊びながら、おいしいご飯も食べれて、いい生活もできて、めっちゃいいじゃんと思って、浅はかな考えで入っちゃったから。それは最後までやるっていう。

又吉 サッカーでいいプレーしようと思うたら、やっぱ走りこまな体動かへんし、練習せなあかんしみたいなのはあるとは思うんだけど。西野くん、そういうのあんの?

西野 途中の苦労っていうのは、僕あんまりないんだけど、好きなことをしちゃうと背負わなきゃいけない代償みたいなものはありますね。つまり、周りの人が好きなことをやむを得ず、折り合いをつけて辞めていくことってあるじゃない? 周りはみんな折り合いつけて辞めて、でも僕は続けて、周りが辞めた恩恵も受けたりして、なんかうまくいっちゃうとか。

そうなると、この人たちからすると具合が悪いじゃないですか。お前も折り合いつけろよって。そういうエネルギーは痛いほど来ますね。でも、好きなことをやろうと思ったらそれは背負わなきゃいけないんだなっていう。

又吉 それはもう、めっちゃあると思う。特に西野くんは。僕はまだ、今のところは大丈夫かもしれないですけど。西野くんとか見てたら、僕もちょっとだけ思いますもん、「それできんねや」みたいな。できんねやったらやりたかったけど、みたいなのは、みんな思うと思うから。それ見せられると、以前やりたかった人がみんな、ちょっと傷つくんですよ。

「大人になったらわかる」っていう言い訳が通用しなくなる瞬間っていうか、「大人になってもわからん」とやった結果、突き抜けれる奴がいたんやっていうのを目の当たりにするのはしんどいから。西野くんはその人たちから、何かしら食らうと思う(笑)。

西野 逆にヘンだなと思ったのは、同業者から「ひな壇出ろよ」みたいなのがあった当時、なんか「あれっ?」って思って。ひょっとしてみんなは、ひな壇を我慢してやってんの? と思ったわけ。「お前も一緒にストレス感じろよ」っていうふうに、なんか聞こえた。

又吉 確かにヘンやな。

西野 そもそも、そこがすごく憧れのステージで、好きでやってるんだったら言わないじゃない? 本当にその人にとってひな壇が憧れのステージだったら。たとえば草野球をやってる人にメジャーリーガーが「メジャーリーグに出ろよ」なんて言わないじゃない? つまり、本質的にひな壇をディスってるのは「ひな壇出ろよ」って言ってる人なんですよ。

又吉 ほんまにそれ、そうやわ。でも、僕らは西野くんと違ってテレビに出れなかった時期が長いんで。ひな壇出れたら喜びはあったけどね。ただ、得意ではなかった。一回VTR見てる時に、ほんま生理的現象で、たぶん苦痛で寝てしまった(笑)。で、V終わりに「又吉、今寝てたやろ」って言われて。全力で「寝るわけないじゃないですか」って。普段は全然人につっこまないのに、そん時だけは全力でつっこんだ。でも寝てました。寝てしまうのは、やっぱり苦手なんやろなと思って。

■ 好きなことをすればいい芸人って楽しい!

又吉 今はまだ僕らみたいなんは少数派じゃないですか。でも「絵本書いて、小説書いて、何が芸人やねん」って言ってる芸人は、もうあんまりいないと思いますけど、いたとしても、その人より西野くんのほうがライブやってる可能性があるから。そういうことって多々あるんですよ。僕もそう。

西野 確かに。

又吉 でも、そういうこと僕は言わないです(笑)。

西野 言いなさいよ(笑)。僕は又吉くんのファンなんです。マネージャーにも言ってるけど、むっちゃうらやましいし、しかもだいぶ好きなことやれているので。こういう芸人さんが増えるといいなと思う。又吉くんみたいな芸人が増えたら、芸人になりたい奴が増えるだろうなぁって。小説書いてもいいし、どんな活動してもいいっていうのを示してくれたら後輩たちはラクだから。

又吉 僕も言っていかなあかんな。

西野 でも作品で言ってるから、又吉くんは。「芸人とは、これをして、これをして、これをしちゃダメなんだ」ってやっちゃうと、やっぱりちょっと窮屈ですよね。

又吉 僕も西野くんの活動は昔から好きなんで、ええなあと思いながら見てました。共通する部分はあるなって思ってましたね。このままどんどん意思を表明してもらって。

西野 芸人って好きなことは何でもできるから。吉本はいいっすね、やっぱ(笑)。

(完)(ザテレビジョン)

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