細谷佳正「彼の“悪いところ”に魅力を感じます」―海外ドラマ「インコーポレイテッド」インタビュー

細谷佳正「彼の“悪いところ”に魅力を感じます」―海外ドラマ「インコーポレイテッド」インタビュー

海外ドラマ「インコーポレイテッド」で主人公の吹き替えを担当した細谷佳正へインタビュー

ベン・アフレック&マット・デイモンの2人が製作総指揮を務める海外ドラマ「インコーポレイテッド」のDVDが3月7日にリリースされた。この作品から、主人公ベン・ラーソンの日本語吹き替えを担当した声優・細谷佳正のインタビューをお届けする。

本作は、政府に代わって多国籍企業が支配する世界を舞台に、究極の“富”と“貧”に分断された世界を描く“二極化SFサスペンス”。ベンは愛する女性・エレーナを取り戻すために、貧困エリア“レッドゾーン”出身ということを隠しながら、裕福な“グリーンゾーン”の大企業をのし上がっていく。

今回、演じるベンに合わせフォーマルな服装に身を包んだ細谷が、作品の見どころや楽しみ方、現場での裏話などを語ってくれた。

――海外ドラマで主役の吹き替えを務めたのは初めてとのことですが、本作への参加が決まった際の気持ちはいかがでしたか?

海外ドラマの主人公を任せていただくのは初めてだったので、とても光栄なことでしたしうれしかったです。このお話を頂いた際は、“ベン・アフレックとマット・デイモンが製作している海外ドラマ”ということだけを最初に伺いました。その時は台本とリハーサルビデオを頂く前だったのですが、きっと面白い作品だと思いましたし、「どんな内容なんだろう?」ととても気になったのを覚えています。

実際とても面白い作品になっていましたし、途中まで見ると最後まで止められずに一気見しました(笑)。

――演じられたベンについて、細谷さんが受けた印象や彼の魅力をお聞かせください。

一言で言うと、“くず野郎”なんですよ(笑)。エレーナの弟のテオが、劇中で「あんたくずだ!」とベンに言い、ベンも「知ってる」と返すやり取りがあるんです。ベンはグリーンゾーンの中で“良い夫”や“良い義理の息子”“良い社員”として非の打ちどころのない人物でありながらも、自分の目的のためには同僚や上司をおとしめてしまう非情さを持っています。さらに、それに対して悪びれることがないんです。それはエレーナを取り戻すという強い目的意識を持っているからこそですし、“目的のためには悪びれている場合ではない”という文化を持つレッドゾーンで育ったからだと思います。彼はそういった二面性を持つダークヒーローの様な人物なので、演じていてすごく楽しかったです。

一般的に“魅力”といえば“良いところ”という風に感じられる方も多いと思いますが、僕は彼の“悪いところ”に魅力を感じます。人をだましたりおとしめたりするなど、目的のために非情になれるところが、とても魅力的な登場人物だと思います。

――ベンは私利私欲ではなく「エレーナのために」という思いで動いているので、悪い一面や行動も視聴者は不快に感じないですよね。

そうですね。でも、演じていく中で面白く感じたのは、ベンの行動はたぶんエレーナのためだけではないと思えてくるところなんです。グリーンゾーンでの暮らしを失いたくないという保身の感情も彼にはあると思いますね。

エレーナを見つけるという目的は、小さいころ2人が金網越しに再会を約束したところから始まっているのですが、普通に考えれば子供時代の約束なんて守られるわけがないと思うんです。でも、彼は頭が良く運も味方に付け、グリーンゾーンに裏口から入ることができました。それがうまくいってしまったからこそ、「よし、エレーナを探そう」となったのであって、ずっとエレーナのことだけを思っていたのではないんじゃないかとも僕は思いましたね。

そんな風に考えながら作品を見ると、ベンの人間としての陰と表の部分の対比がより鮮明になって、視聴者の皆さまにもすごく魅力的な人物に感じられると思います。

――吹き替えで意識した点や、難しかった点はありましたか?

現場では音響監督の方から特にこうしてほしいという指示もなく、本当に楽しくやらせていただきました。ただ、自分で難しく考えてしまったことというのはありますね。

というのも、声優の仕事を始めて最初にやらせていただいたのは吹き替えの仕事だったんですが、その後アニメの仕事も多く頂けるようになり、吹き替えの現場に行く頻度が初めの頃よりは減っていました。洋画や海外ドラマの吹き替え作品は個人的にはすごく好きなのですが、吹き替えに対してなんとなく“ハードルが高いもの”と自分の中で勝手に思ってしまっているところがあるんです。映像が生身の俳優さんなので、細かいニュアンスや息遣いをなるべく拾い、視聴者の方の違和感をなくすのが僕らの仕事だと思うのですが、対象が生身の人間の分、難しさがあります。

――アニメと比べ、どうしても映像の情報量が多くなりがちですもんね。

1カットの中で行われる動きがアニメーションより多いので、吹き替えるベンのことをよく観察しなければと思いました。

吹き替えの現場は、声優として育ってきた方々だけではなく舞台俳優の方もいらっしゃるし、アニメの現場よりもベテランの方が多くいらっしゃる印象があります。そういった先輩方に、「日頃アニメしかやらないもんな」と思われたくない恐怖みたいなものを、自分の中で勝手に感じていました(笑)。ですので、役を演じる上での難しさというよりも、自分が現場で仕事をしやすくする為に、人間関係を頑張っていたような気がします。やはり主役が頼りないと良い作品ができないと思いましたし、自分はあらが見えやすい人間なので(笑)、より頑張ろうとしていました。

■ 細谷が好きなのはこんなテレビ番組

――作品での好きなシーンを教えてください。

好きなシーンは二つあって、一つ目はベンが同僚のロジャーを恐喝する場面です。1話でベンは同僚のロジャーや上司とレッドゾーンに遊びに行き、上司をわなに掛けるんです。後日、ベンはロジャーと2人きりになった時に「お前も出世したいだろ?」と当日のことをうやむやにするよう脅すのですが、それまで“良い夫”“良い社員”だったベンの黒い部分が全開で、演じていてすごく楽しいシーンでした。

二つ目は物語の後半なのですが、ベンがとある人物を尋問するシーンです。他人の脳の中をのぞける装置を使って尋問するのですが、その中で相手のトラウマとなっている記憶にたどり着いてしまうんです。その相手が涙を流して尋問を止めるようベンに頼むにもかかわらず、自分の目的のために淡々と尋問を続けるベンの姿が冷酷で。完璧な人間としてグリーンゾーンで生きるベンとの落差が印象的で、後から作品を見返した時にはとても痛快でしたね。このシーンを痛快に思った自分はどうなんだろう?(笑)

――ありがとうございます。では、我々が「ザテレビジョン」ということで色々な方にお伺いしているのですが、細谷さんが普段良く見る好きなテレビ番組は何ですか?

「やりすぎ都市伝説」(テレビ東京系)や「世界まる見え!テレビ特捜部」(毎週月曜夜8:00、日本テレビ系)、「奇跡体験!アンビリバボー」(毎週木曜夜7:57、フジテレビ系)などが好きですね。

――“世界の驚きのエピソード”を紹介する番組がお好みで?

一般的な日本のニュース番組では報道しないような出来事を知ることができるので、良く見ます。

他には、「プロフェッショナル 仕事の流儀」(毎週月曜夜10:25、NHK総合)や、「ザ・ノンフィクション」(毎週日曜昼2:00、フジテレビ)も好きです。どちらも人物やその方の考え方などを追う番組なのですが、先日は「ザ・ノンフィクション」で“卒婚”をテーマに取り上げていて。結婚して一緒に暮らしているのにお互いのプライベートや思想に関与しない、という老夫婦が登場していて、そういった考えもあるのかと興味深く見ていました。

――最後に、作品をご覧になる皆さまへメッセージをお願いします。

まず、ベンに感情移入して見ていただくと、スパイものとしてスリリングな展開が楽しめるエンターテイメント作品になっています。また、ベン・アフレックとマット・デイモンの2人が思い描いた世界観も、SFと称されていますが本当にSFなのかと思わせてくれるような感覚があります。完璧な管理社会であるグリーンゾーンに対し、アンチテーゼとしレッドゾーン出身のベンが描かれていて、「未来はこうなるのではないか」「でも社会から完璧に管理されたくない」というようなメッセージも2人から受け取った気がします。いろいろと考えさせられる作品でもあり、見方によっていろいろな面白さが発見できると思うので、ぜひご覧いただければと思います。(ザテレビジョン)

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