中村倫也とは何者か? 【てれびのスキマ】

俳優・中村倫也が「カメレオン俳優」と称される魅力 異名のひとつは「ひねくれ素直」

記事まとめ

  • 中村倫也演じる朝井正人が、朝ドラ「半分、青い。」に再登場しファンを歓喜させた
  • 中村は、写真集「童詩」発売に際して「ノンストップ!」にVTR出演した
  • 中村は20歳のときに出会った蜷川幸雄氏に舞台で演技指導を受け、徹底的に鍛えられた

中村倫也とは何者か? 【てれびのスキマ】

中村倫也とは何者か? 【てれびのスキマ】

朝ドラ「半分、青い。」を盛り上げたキャラクターの1人、正人こと「マアくん」を好演した中村倫也

■ 見るものを翻弄する、まさに生まれながらのカメレオン俳優

朝ドラ「半分、青い。」(NHK総合ほか)で中村倫也演じる“マアくん”こと朝井正人が、途中で退場すると視聴者に大きな喪失感を与え、再び登場するとファンを歓喜させた。ゆるふわで脚本の北川悦吏子いわく「ホイップクリームみたいな男子」は、視聴者を虜にしたのだ。「半分、青い。」と同時期の2018年に放送、公開された作品では、ドラマ「崖っぷちホテル!」(日本テレビ系)で競艇狂いのツンデレシェフ、「ミス・シャーロック/Miss Sherlock」(Hulu)ではちょっと抜けてる刑事、映画「孤狼の血」ではぶっ飛んだヤクザと、まったく雰囲気の違う役柄をこなしていた。以前から「カメレオン俳優」と称される由縁である。

そんな中村倫也は、写真集「童詩」発売に際して、8月9日、バナナマン・設楽統が司会を務める「ノンストップ!」(フジテレビ系)にVTR出演。わずか10分弱のVTRだったが、そこには彼の魅力が凝縮されていた。写真集のタイトルについて中村は「童詩というタイトルを自分で考えたんですけど、自分がわりとめんどくさい人間だからめんどくさいタイトルがいいなと思った」と語った上で、共演者や仕事をする周りの人たちによくあだ名や異名を付けられると明かした。そのひとつが「ひねくれ素直」。まさに中村倫也を一言で表した絶妙な異名である。

デビューしてすぐのころ、「誠実なヤツ」を演じてくれと言われた。けれど「誠実」の意味がいまいち分からなかった彼は、「誠実」を辞書で調べたりもした。が、結局分からなくてデタラメに演じたら、それがウケたという。それから演じるのが楽しくなっていった。

20歳のときに出会った蜷川幸雄には舞台で「千本ノックのような」演技指導を受け徹底的に鍛えられた。最初は何もできず「公衆便所」と呼ばれ、翌年再び蜷川の舞台に出演すると今度は「天才役者」と逆の方向からイジられた。

ターニングポイントとなったのは25歳のころだった。ナイーブな思春期の延長みたいな心境で、くすぶっていて、世の中を斜めに見ている時期だった。そこで「俺には才能がない」と気が付いたという(「オリコンニュース」2018年8月1日)。それまで、自分が評価されないのを周りのせいにしていた。けれど、全部「俺次第」だと分かった。その日から1週間、家に籠もり、徹底的に自分と向き合った。ちょうどそのころ、河原雅彦演出の舞台「ロッキー・ホラー・ショー」に出演。それは衝撃的な体験だった。「真面目に作らなくても人は感動する」ということに気付いたのだ。これをこう見てほしいなどと変に“真面目に”作り込んでしまうと、先細りになってしまうのだと知った。泣かそうと思ってなくても人は泣くのだ。

「お客さんは自分の想像力とか、自分の人生経験を持ち込んで、そこでかけ算をして見るんだなと。だからその想像力を限定してしまうような芝居はしたくないな、と」(「ライブドアニュース」2017年10月19日)

それまで中村は理詰めで役作りをしていたが、人間はそんなに理由づけて行動していないし、説明できない感情ばかりだと気付き、断定をせず、余地を残すことを意識するようになった。その翌年、3度目となる蜷川幸雄の舞台に参加すると遂に「おまえはうまいから大丈夫」と言ってもらえた。

前述の「ノンストップ!」では、続いて「疲れるのが嫌い。走るのが嫌」とインドアな私生活を披露し、ハムスター2匹と古代魚のポリプテルスを飼っていると話し、その場でポリプテルスの“顔マネ”もした。その姿はあまりにチャーミングで母性本能をくすぐるものだった。だが、理想の女性のタイプについて聞かれるとその愛らしい表情は一変。きっぱりと「恋愛観、喋りたくないです」と拒否。会見会場の空気が一瞬凍りつくと、すぐにニッコリ笑い「服をちゃんと着る人」と答えてみせた。一度拒否しておいてのふわっと答える相手を翻弄するツンデレ。まさに「ひねくれ素直」の為せる業だ。

最後に中村は「俺、今日やりたいことあって」と切り出すと、おもむろに服のボタンを外し始めた。すると、バナナマンのライブTシャツがあらわになった。彼はバナナマンのファンで自ら物販に並んで購入したという。そうしてスタジオにいる設楽に向かって笑顔を振りまくのだ。

中村倫也は相手の心を掴む術を知り過ぎている。

(文・てれびのスキマ)

◆てれびのスキマ=本名:戸部田誠(とべた・まこと) 1978年生まれ。テレビっ子。ライター。著書に『1989年のテレビっ子』『タモリ学』『笑福亭鶴瓶論』など多数。雑誌「週刊文春」「週刊SPA!」、WEBメディア「日刊サイゾー」「cakes」などでテレビに関する連載も多数。2017年より「月刊ザテレビジョン」にて、人気・話題の芸能人について考察する新連載「芸能百花」がスタート(ザテレビジョン)

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