大河ドラマ初の外部演出家・大根仁「よく毎回こんなことやってるなって驚く…」<いだてん>

大河ドラマ初の外部演出家・大根仁「よく毎回こんなことやってるなって驚く…」<いだてん>

大河ドラマで初めての外部演出家として起用された大根仁

中村勘九郎と阿部サダヲが主演を務める大河ドラマ「いだてん〜東京オリムピック噺(ばなし)〜」(毎週日曜夜8:00-8:45ほか、NHK総合ほか)。

本作は、1912年に日本で初めてオリンピックに参加した男・金栗四三(勘九郎)と、1964年の東京オリンピックの実現に奔走した男・田畑政治(阿部)という二人の主人公をリレー形式で描く、日本とスポーツの歴史物語。

第9回(3月3日[日]放送)では、四三と三島弥彦(生田斗真)がオリンピックに出場するため、ウラジオストクやハルビンを経由し、ストックホルムを目指すシベリア鉄道17日間の旅をする。

同放送回の演出を担当するのは大根仁氏。今回が初めての大河ドラマ演出となる大根氏に、本作の魅力などを語ってもらった。

■ 「え、誰?」っていう金栗四三と田畑政治を中心に描いていくことにまず魅力を感じた

――過去の大河ドラマで影響を受けた作品や、印象的だったものはありますか?

僕が小学校のころは、一家にテレビ一台で、父親がチャンネル権を持ってるということが当たり前だったんですね。それで僕も、父親につられるように大河ドラマをずっと見てたので、印象に残っているのは市川森一先生の「黄金の日日」(1978年)と、山田太一先生の「獅子の時代」(1980年)ですかね。

どちらも有名な武将とか、歴史に名を残した人ではないという切り口がすごく良くて、作りも斬新だったことが印象的でした。

だから今回、僕が「大河ドラマやらないか」って相談された時に、主人公が有名な武将だったり、歴史に名を残した偉人だったらちょっと腰が引けてたように思うんですよね。

もちろん脚本が宮藤(官九郎)さんということも大きかったんですけど、何よりも「え、誰?」っていう金栗四三と田畑政治を中心に描いていくことにまず魅力を感じたんです。

あ、でも平成の大河で言うと「龍馬伝」(2011年)は革新的ですごいなって思って見てました。それと、ちょっとどうかと思うくらいクオリティーを追求した「平清盛」(2012年)! もう「どこまでいくんだろう、ついていくぞ!」という気持ちで、最後まで見てました。

■ ポップな要素みたいなものを加えられれば

――大河ドラマに外部の演出家が参加するのは初めての試みとのことですが、他との違いは感じましたか?

僕は根無し草というか、ジャンクな性格なので、深夜ドラマや民放のゴールデンドラマ、映画、舞台、書き物をしたりいろいろやるんですけども、「NHKのドラマだからどうこう」っていうものは思ったよりなかったですね。脚本があって役者が演じて、それを撮るっていう形においてはどこも変わんないですし。

ここ数年のテレビドラマの中でも、NHKのドラマは、本当に“いちテレビ好き”として、「すごい作品が生まれているな」って思っていたので、それがどういうシステムで、どういう仕組みで、作られているのかを見てみたいっていう気持ちもあったので、今は逆に勉強している感じもあります。

あとはシンプルに「美術がすげぇな」って思いますね。普通の映画やドラマだと、スタッフクレジットって“撮影”が一番最初にくることが多いんですけど、NHKのドラマってまず美術なんですよね。

「なんでだろう」って思ってたんですけど、それがすごく象徴しているなと思います。もちろん撮影部、照明部、録音部とどのセクションも素晴らしい仕事をしていますけども、美術はNHKの歴史がぎゅうぎゅうに詰まっているセクションだなって思いますね。

――外部から参加していることについてはどのように思いますか?

外部から参加しているのは僕だけじゃないですよ。VFXだったら、映画界では特撮の時代からずっとやってるプロフェッショナルで、「シン・ゴジラ」(2016年)とかもやっている尾上(克郎)さんが入っていますし。タイトルバック映像でも、「劇団☆新感線」とかの舞台の映像をやってきた上田(大樹)くんがディレクションしていたり。

これまで大河のシステムとは違って、各セクションに外部からスタッフが参加してて、そういう形で新しい大河ドラマを作ろうというふうにしているんだなと思ってます。

それはチーフ演出の井上(剛)さんの意図だと思うんですけど、その中で自分は外部からの演出家として何ができるかということは、考えたりしています。

――大根さんならではのこだわりとかはありますか?

チーフではなく、サブで演出をやるのも久々だったので、演出に集中してできるっていうことがうれしくて、楽しみでした。今はやってますけど、楽しいです。

いわゆる映画監督とかチーフ演出って、全体のクオリティーを管理するために、いろんな責任を負わなきゃいけない立場なんです。でも今回は全体をやらなくてもいいですし。

で、何を求められてるのかなって考えた時に、僕がこれまで深夜ドラマとかテレビ、映画で、やってきたことはエンターテインメントだし、ポップなものなんですよね。抽象的な言い方になっちゃいますけど、ポップな要素みたいなものが、これまでの大河には見られなかった部分で、(僕が)加えられればなって思いました。

――「いだてん」の魅力ってどんなところだと思いますか?

僕はなるべく日曜夜8時にリアルタイムで見るようにしていますが、撮影に参加しているので、どうしても視聴者の目線で見るのは難しいですね。

でも、まぁ現場も見てますし、内容も知ってるんだけども、「ようこんなことやってるな」って、呆れるやら、驚くやら…どのカットを見ても情報量が詰まっているんです。

ここ最近、宮藤さんが手がけた何本かのドラマは、ものすごく緻密な構成になっていて。普通の民放で全10話〜12話くらいの、1クールのドラマだったら、伏線回収とかも「なるほどな」って感じですけど、これを一年間で全47話かけてやってんのかっていう、宮藤さんの脚本の仕掛けにも驚いてます。

あとは、僕もそんなに詳しくはないんですけど、NHKって時代劇だとある程度「この時代のこの家はこの骨組みのセット」っていうのが決まっているらしいんですよ。それがいわゆる、大河ドラマを作るメソッドになっているという。

だけど今回は近代劇ということで、これまでのメソッドがまったく通用しないものなので、一から新しいもの作ってる。っていうのが、テレビ好きな自分の視点から見ても、ビンビンに伝わってきて、毎回すごいことやってるなって思います。

■ 丁寧に説明されたすごく正解な描写だったと思いました

――これまでの「いだてん」の放送の中で、好きなシーンや回はどれでしたか?

えー僕はどの話も好きなので難しいんですけど、「これまでの大河のメソッドがまったく通用しない」っていう部分で言えば、第1回の後半と、第5回がメインで取り上げた羽田のオリンピック予選会のマラソンシーンですかね。

(脚本を読んだときは)映像としてどうやって構築していくんだろうって思ってたんです。

見てみたら、脚本・演出はもちろんですけど、今回の「いだてん」の力が全て集中して、ものすごく熱量が高まった現場でありお芝居であり編集であり、MAという音の枠をつける作業も、VFXのチームもいろんな仕事してると感じました。

――第1回の伏線も帰結しているシーンですし、中継のような画面で、マラソンの実況のようにナレーションが入るなどの演出も趣向が凝らされていましたよね。

今の視聴者は、ドラマだからとか、バラエティー、スポーツ中継だからこう見るみたいに、あんまり自分の頭の中で視聴の仕方をカテゴライズしていないような気がするんですよね。

だから、第5回みたいに、マラソンシーンがスポーツ中継みたいな場面作りになっていても、僕は違和感を感じなかったです。むしろ見やすかった。

当時のマラソンがどんなものかって、想像つかないじゃないですか。時代劇の合戦とか戦いだったら、「あー何家と何家が戦ってるのね」って状況は分かるけれども。

「日本人が参加したこともなくて、見たこともない“オリンピック”の予選でマラソン大会をやるんだ」って想像がつかないことだと思うので、まずは丁寧に、ちゃんと地図でコースを見せて、状況を説明しなきゃ伝わらないものだったと思うんです。

だから、すごく正解な描写だったと思いました。

――このドラマに関わったことで、スポーツやオリンピックに対する見方は変わりましたか?

僕はスポーツ中継とか、スポーツを見るのが好きなんです。特にサッカーは大好きで、国内、海外含め見に行ったことがありますし、自分でもやってました。

お祭り好きなんで、ロックフェスとかも大好きなんですけども、人が集まってわーってなってる環境に、文句なしにテンションが上がってしまうんです。だから、「いだてん」をやったからではなく、来年のオリンピックも楽しみにしております。

ただ、日本におけるオリンピックの歴史を初めて勉強させてもらったので、「これだけの人たちがやってくれたおかげ…!」っていう見方になると思います。

実際、今年の“箱根駅伝”とか見ながら、金栗さんのことを思って、目がうるうるしてましたからね(笑)。(ザテレビジョン)

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