<試写室>「いだてん」宮藤官九郎流?孤独や敗北との戦い方

<試写室>「いだてん」宮藤官九郎流?孤独や敗北との戦い方

四三(中村勘九郎)が見守る中、弥彦(生田斗真)が走る!

海外に住んでいたことがある。18歳のときだった。

単身のため、とにかく孤独だった。たくさん勉強して言葉が大体分かるようになっても友達を作ることは難しかった。

でも、同じように日本から来ている人でも、ちゃんとした外国語を話せなくても、みんなと心を通じ会える人っているんだよなぁ。

そんな人を見て、さらに孤独になる。「私は勉強しているのに」という劣等感に打ちひしがれる。

そのときの気持ちがまさに映像化されていたのが、3月10日に放送された大河ドラマ「いだてん〜東京オリムピック噺(ばなし)〜」(毎週日曜夜8:00-8:45ほか、NHK総合ほか)の第10回だ。

「運動会の覇王」と呼ばれた痛快男子・三島弥彦(生田斗真)が、外国で初めて挫折を味わう姿に、涙が止まらなかった。そんな彼が、3月17日(日)放送の第11回でついにオリンピックの舞台で走る。

宮藤官九郎の脚本で、日本とオリンピックの歴史を描く本作。中村勘九郎演じる1912年に日本で初めてオリンピックに参加した金栗四三と、阿部サダヲ演じる1964年の東京オリンピックを成功に導いた田畑政治がリレー形式で主人公となる。

今回、ザテレビジョン流「試写室」では、マスコミ向け試写会にて一足先に3月17日(日)放送の第11回を見た記者が、独自の視点から本作の魅力を紹介する。

■ 第11回「百年の孤独」のあらすじは?

1960年、東京オリンピック開催を控えた田畑政治(阿部サダヲ)は、開会式を研究すべく、ストックホルムオリンピックの記録映像に見入る。

ときは1912年7月のストックホルムオリンピック開会式。四三と弥彦が日本初のオリンピック選手として入場。そして、いよいよ競技が始まる。

大森兵蔵(竹野内豊)に緊張を解された弥彦は、100m短距離走で好タイムを記録するも順位は惨敗。プレッシャーと戦い続けた弥彦だったが、晴れやかな笑顔で400mの走りへと向かう。

■ 身一つで打ち勝つ四三と弥彦の姿に涙

まずは第10回の話をさせてほしい。

とにかく走り続けてきた四三と弥彦の物語が、第10回では少し足止めを食らっていた。

監督の兵蔵は体調を崩し、安仁子(シャーロット・ケイト・フォックス)はつきっきりで看病するため部屋から出てこないし、嘉納治五郎(役所広司)は不手際で到着が遅れている。

日本では多くの人々の「敵は幾万」の歌に見送られた四三と弥彦の周囲には人がいなくなり、応援の声もなく、心が折れた弥彦は窓から身を投げようとするまで追い詰められる。

初回から見てきて、一番感情移入できるキャラクターが痛快男子の三島弥彦になるとは思いもよらなかった。「てんてんぐー!」という掛け声とダンスを披露しては女子たちにキャーキャー言われてきた弥彦が、ストックホルムでは弱気な表情ばかり見せている。

そして第11回、四三に先立って弥彦が短距離走に出場する。

私の知っているプレッシャーなんて、四三と弥彦に比べればちっぽけなものだろう。でも、日本にいる人々からの期待に押しつぶされる気持ち、すごく分かる。それに応えられない自分への腹立たしさも。

あらすじにもあるが、弥彦はレースで惨敗する。しかし、レースを駆け抜けた弥彦が見せる清々しい表情には、勝利と同じくらいの喜びが表現されており、それはそれは素晴らしいシーンになっていた。痛いくらいに眩しい笑顔が胸に突き刺さる。

きっと、この敗者の表情を描くのが“宮藤官九郎の脚本らしさ”なのではないだろうか。

個人的な感情ばかり書いてしまった。しかし、こんなもんじゃない。もはや、このドラマについては書きたいことがあり過ぎて、試写室に不向きだとすら思う。

とりあえず、見どころをつらつらと並べてみよう。今まで「いだてん」を見てきた人には、弥彦の母・和歌子(白石加代子)の言葉に涙するでしょう。最初だけ見て視聴をやめていた人は、ストックホルムのスタジアムの綺麗さに度肝を抜かれるでしょう。初めて見る人も兵蔵から弥彦へのアドバイスに元気づけられるでしょう。

“生田斗真ファン”は、肉体美にうっとりすることでしょう。そして、“中村勘九郎ファン”は、とあるシーンであまりのキュートさに倒れることでしょう。

完全無欠の弥彦が負ける姿は、かっこ悪いけどかっこいい。海外で孤独だということに劣等感を覚えつつ、それがちょっとかっこいいと思ってた18歳の私よ。

人って意外と孤独にはなれないし、変な外国語って意外と通じるよ。

■ 金栗さんと同じ気持ちになれました

試写会後には、第10回と11回の演出を手がけた西村武五郎と、主演の勘九郎が取材に応じた。

実際に、現地スウェーデンのストックホルムで3週間ほど撮影が行われた“ストックホルム青春編”。この撮影を、勘九郎は「100年前から残っているスタジアムを目撃したとき、『ここで撮れるんだ』といううれしさと、プレッシャーでスタッフやキャスト全員の毛穴が開きました」と振り返る。

第10回の弥彦が追い詰められるシーンは、実はこのロケの後に撮影されたそうで、勘九郎は「ストックホルムであまりにも濃密な時間を過ごしていたので、三島さんと恋人のように映ってしまったそうで、『それはちょっと違う』と指摘されたことを覚えています(笑)。最初っからベタベタしてたんで、冷静に『このときはもっと距離がある』と言われました」と裏話を明かす。

そして、第11回で弥彦が走ったシーンを見たときの感想を「自然と涙が出るという体験をしました。あれ、本当に400m走ってからの芝居を全部一連で撮ったんですよ。生田斗真のその姿を見ていて本当に感動しましたし、この後走るときは『ちゃんとやらなきゃいけないな』と思いました。だから、金栗さんと同じ気持ちになれました」と語る。

同回には、特に四三がかわいらしく映る場面があるのだが、勘九郎いわく「照明部が凝ってくれました。“女子感多め”な照明を命がけで作ってくれて(笑)」とかなり力の入ったシーンだとか。

西村も「リハーサルで、だいぶ女形な芝居をしてきてですね、『ちょっと行き過ぎかもしれません、勘九郎さん!』と言いました(笑)」と語るほどに、気合の入った芝居になったようだ。

それがどのシーンなのか、放送を見たら一発で分かると思うので、楽しみにしてほしい。(ザテレビジョン・記者=さこ)

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