<試写室>「前略 めぐみちゃん―」横田さん夫婦の過酷な戦いに涙が止まらない

<試写室>「前略 めぐみちゃん―」横田さん夫婦の過酷な戦いに涙が止まらない

「独占取材 北朝鮮拉致 前略 めぐみちゃんへ 〜横田夫妻、最後の戦い〜」が3月30日(土)に放送

弾道ミサイルや核の開発など、深刻な問題で報道される機会が多い北朝鮮。その中でも、2月の米朝首脳会談で、トランプ大統領が再び拉致問題を提起したのは記憶に新しい。

“拉致”と聞いて、一番に思い出す被害者が横田めぐみさんという方も多いのではないだろうか。被害者の家族というつらい立場でありながら、毅然(きぜん)と「娘に会いたい」という思いを伝える横田滋さん・早紀江さん夫妻の印象があまりにも強い。

しかし数年前、テレビで取り上げられていた拉致問題のニュースを見て、ふと「滋さん、口数減ったな」と思ったのを覚えている。そんな滋さんは2018年4月から入院生活が続いているそうだ。滋さんを始め、拉致被害者の家族たちにも高齢化の波が訪れている。

再び拉致問題が提起された今、この番組を見てもう一度拉致問題に目を向けてほしい。

各局で放送されているドラマやバラエティー、アニメなどを事前に完成DVDを見て、独断と偏見とジョークに満ちたレビューで番組の魅力を紹介する、WEBサイト・ザテレビジョン流「試写室」。

今回は3月30日(土)に放送される「独占取材 北朝鮮拉致 前略 めぐみちゃんへ 〜横田夫妻、最後の戦い〜」(昼3:30-5:30、フジテレビ)を紹介する。

同番組は、拉致被害者・横田めぐみさんに会いたいと駆け抜けた横田さん夫妻を独占取材。そして、フジテレビに残される2000本以上のVTRや新たな取材を基に、ドキュメンタリードラマと共に夫妻のこれまでの戦いを描く。

ドラマでは菊池桃子が早紀江さんを、勝村政信が滋さんを演じる。菊池は「実は強いわけではない“普通のお母さん”である早紀江さんをしっかり伝えたい」と意気込みを語っている。

■ 独断と偏見のレビュー

ドキュメンタリーとドラマを織り交ぜながら進行していくこの番組を通じ、ドキュメンタリーだけでもない、ドラマだけでもないからこそ、娘の帰りを待つ横田さん夫婦の気持ちが痛いほど伝わってくる。

今でこそ「拉致問題」という事件は世に知られているが、当初は失踪や自殺、家出などとも考えられていた。めぐみさんが失踪してから北朝鮮に拉致されていたと分かるまで、何と19年2カ月。こんなにも長い間、横田さん一家はあてもなく探し続けていたと知り、呆然とした。

番組では、平凡な日々を送る横田さん一家に前触れもなく襲った“拉致”という悲劇が、菊池と勝村の熱演で鮮明に表現されている。

私はこのドラマを見るまで、早紀江さんに対して“強い”という印象を持っていた。しかし、実際は弱い部分もあり、ただひたすらに娘の無事を祈る母親なのだ。「会いたい」ですらない、「生きていてほしい」という言葉に、その思いの重みを感じる。

そして、滋さんの強さも目を引いた。娘が北朝鮮に拉致されたという事実を突きつけられてもなお、娘に会いたい一心で世間を動かし、家族会を引っ張ってきた彼は、間違いなく拉致問題の進展に欠かせない存在だ。

特に滋さんの強さを感じたのは、拉致被害者5人が帰国するシーンだ。横田さん夫婦はめぐみさんの帰国がかなわず、とてもつらい気持ちだったはずだ。しかし、滋さんはそんな表情は見せず、再会を果たした家族たちを得意のカメラで撮影し続けていた。

そんな夫婦の強さと弱さが最も鮮明に浮かび上がったのは、めぐみさんが拉致被害者だと判明した直後、それを実名で報道するかを巡って意見が分かれるシーンだ。報道しないでほしいという早紀江さんの意見と、報道することで戦っていきたいという滋さんの意見は対照的だが、めぐみさんを思う二人の気持ちは同じだった。

菊池と勝村が演じる横田さん夫婦の40年を超える戦いは、先の見えないつらいものだ。生半可な気持ちでは演じられないストーリーだと思うが、二人の体当たりの演技によって、夫婦がこれまで感じてきた気持ちや真実が伝わる番組になっている。

現存している拉致被害者の親は、横田さん夫妻と有本恵子さんの両親の4人しかいないそうだ。「これが本当に最後のチャンス」と言い切る彼らの、悲痛な思いが伝わってくる。

一人でも多くの人がこのドキュメンタリーを通じて、「生きているうちに会いたい」という彼らの気持ちを感じてほしい。拉致問題解決への機運が高まる今、それが私たちにできる第一歩なのではないだろうか。(ザテレビジョン・文=R)

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