歌舞伎俳優・中村隼人がドラマ初主演!「歌舞伎界の温かさを改めて感じることができました」

歌舞伎俳優・中村隼人がドラマ初主演!「歌舞伎界の温かさを改めて感じることができました」

「大富豪同心」でドラマ初主演を務める中村隼人

中村隼人が、5月10日(金)にスタートするBS時代劇「大富豪同心」(毎週金曜夜8:00-8:45、NHK BSプレミアム)でドラマ初主演を務める。

幡大介による小説「大富豪同心」シリーズのドラマ化で、江戸一番の豪商・三国屋の孫である隼人演じる卯之吉がひょんなことから同心となり江戸の難事件に挑む同作。

剣が振るえない、走れない、暗闇は怖いなど同心に全く向いておらず、他力本願ではんなりと事件を解決するお坊ちゃまが主人公という新しいタイプの時代劇に挑む隼人に、撮影中のエピソードや作品の見どころなどを聞いた。

■ 求めていただいたからには精いっぱい応えていきたい

――連続ドラマ初主演と聞いた時の心境を教えてください。

うそでしょ? と思いました。

自分自身たくさん映像に出させていただいている訳ではないので、お話を頂いたことに素直にびっくりしましたね。

その後、原作を読ませていただいたり内容を伺ったりしていく中で、卯之吉を演じる上で大事なことの一つに所作があるのだなと思いました。また、三味線を弾いたり小唄を歌ったり、踊りを踊るシーンもあり、そういったことが求められているから僕なんだなと感じました。

求めていただいたからには精いっぱい応えていきたいと思いましたね。

――ドラマ出演が決まっての周囲の反応はいかがでしたか?

(市川)猿之助さんや(中村)獅童さんら、皆さん喜んでくださいました。

とてもうれしかったですね。

「すごいね! 大変だけど頑張って」と声を掛けていただいたり、「(自分も)出たい!」と言ってくださった方もいて…。

歌舞伎界の温かさを改めて感じることができました。

――具体的に頂いたアドバイスなどはありますか?

猿之助さんからは、「カメラマンさんと仲良くなるといいよ」と。

「カメラマンさんはずっとお芝居を見ているから、仲良くなったらお芝居での目線や角度を教えてくれるよ」と言っていただきました。

大河ドラマ「風林火山」(2007年、NHK総合ほか)の時に教えていただいたそうです。

■ 自分の武器が使えないのであれば新しい武器を作るしかない

――普段は歌舞伎の舞台でご活躍されていますが、ファンの方からの反響はありましたか?

ドラマへの出演が発表されてから舞台に出演していなかったので、肌で感じることはありませんでした。

ただ、僕の舞台を最近見ている方からすると、“はんなり”とした卯之吉とは真逆の役をやってきているんですよね。

隈取という化粧をして荒々しく演技をする“荒事”や、大立廻りをする役を演じていたので…。

“主演だから”ということより、僕の意外な一面や時代劇の魅力を感じていただければなと思います。

――時代劇と聞くと激しい立廻り(殺陣)などを想像しますが、そういった雰囲気とは異なるこの作品の印象はいかがですか?

歌舞伎役者の自分にとって、立廻りはある種の強みだと思っています。

ただ、今回はそれがない。でも、それはそれでチャンスだと感じましたね。

自分の武器が使えないのであれば新しい武器を作るしかないし、お客さまの目線も何かに特化した人だとその特化した部分に目が行きがちだと思うんです。

それがないことによって、卯之吉の“はんなりさ”に注目していただけるのではないかなと思いました。

――演じている卯之吉や作品の魅力を教えてください。

一番は卯之吉、そしてこの作品の代名詞である“はんなり”を追い求めていきたいと思っています。

“はんなり”ってなんとなく日本人の中にはイメージとしてあるけれど、言葉で表現するとなると難しいですよね。

僕の中では、品がありおしとやか、艶やかさやたおやかさと思ってやっています。

それで周囲と卯之吉の時間の流れ方の違いや育ちの違いを出すことができれば、周囲の個性豊かなキャラクターの中で卯之吉のキャラクターを確立することができるかなと。

あとは卯之吉の人間味でしょうか。

幼い頃に大切なものを失っていて、心にぽっかりと穴が空いている。だからこその人間味や、すかしていそうに見えて実はとても親身だったりするところが卯之吉の魅力だと思います。

そんな卯之吉だからこそ、周囲の人たちが協力してくれるんでしょうね。

――卯之吉と隼人さんご自身の共通点はありますか?

全然違います! 

強いて言うなら興味を持ったらとことん突き詰めてしまうところでしょうか。

卯之吉は夜道もお化けも刀も怖いのに、事件にのめり込むと夜道の中を探しに行ってしまったり…。

のめり込むと周りが見えなくなってすごい集中力を発揮するというところは同じだと思います。

あとはお化けが怖いところかな…。

■ キャストの皆さんに恵まれた

――共演者の方とお芝居についてお話しすることもありますか?

結構あります。村田役の池内博之さんとは食事をご一緒して、演技論を聞かせていただいたり、「自分はこう思ってやっているんですが、どう映ってるんですかね」とかお話ししたりしました。

共演の俳優さんとの意見交換などは撮影が始まって1カ月くらいかけてできましたね。打ち解けるのが早くて、キャストの皆さんに恵まれたと思っています。

皆さんは僕に対して偏見なく、かわいい後輩として接してくださるので、僕も映像について分からないことが聞きやすかったです。

「コメディーだけど、どういう間の使い方が効果的なんですか?」とかいろいろとお話しできました。

各話のゲストの方々が皆さん「良い現場だからもっと撮影したかった」と言ってくださって、とてもうれしかったです。

――卯之吉の相棒である銀八役の石井正則さんとの場面も多いですね。

僕と石井さんは撮影でも一緒の時間が長く、また、共通の知り合いがいるということもあってご飯を食べに行って、そこで意気投合させていただいきました。

銀八は卯之吉が同心になるずいぶん前から遊び仲間だったと思うんです。

だから、この作品で描かれている卯之吉と銀八は、2人の長い関係の中での一部に過ぎないんですよね。

そういった空気感は映像にも出てしまうので、最初からお互いに「極力一緒にいよう」とは思っていたと思います。

でも、お話していくうちに考え方が似ていたりとか、自分の知っている情報を共有できたり、また知らない情報を教えていただいたりと一緒にいるのが楽しくて、お酒もご一緒するようになりました。

周りの方にも「仲がいい」と言っていただくので、撮影していないところでも若旦那と太鼓持ちのような関係でいれていると感じますね。

話数を重ねていくごとにその雰囲気を濃く感じていただけると思います。

■ なんだか不思議な感覚でした

――第1話(5月10日[金]放送)にゲスト出演している豆福役・嘉島典俊さんとのシーンも印象的でしたが、撮影中のエピソードはありますか?

嘉島さんは大好きな方です! 10年ほど前に初めて歌舞伎以外の舞台に出演した時にご一緒したのですが、その時はほとんどお話ししなかったんです。

2015年の「スーパー歌舞伎II(セカンド) ワンピース」で再び共演させていただいて、そこで「その時はこうでしたよね」といったお話をするようになりました。

さらに僕が主演を務めさせていただいた新作歌舞伎「NARUTO-ナルト-」(2018年)にも出演していただき、今回もゲスト出演ということでご縁を感じます。

歌舞伎役者である僕が、歌舞伎役者ではない嘉島さんの演じる歌舞伎役者と話しているというのはなんだか不思議な感覚でしたね。

ストーリーの要でもあるラストシーンは、実は撮影が始まってから3日目くらいに撮りましたが、嘉島さんとの関係が元々あり、お互いの芝居の受け方や出方を知っていたからこそ、スムーズに進んだのではないかと思います。

卯之吉はある意味、おじいちゃんによって小さい水槽の中に閉じ込められて育っているんですよね。

同心になったことで自分よりも不幸だったり、苦労している人がいることを知り、共感することで卯之吉自身が変わっていく姿が描かれています。

1話以降も卯之吉の心を揺さぶるゲストがいっぱい出てくるので、注目していただければと思います。

――竹島宏さんの「夢の振り子」に合わせてキャストの皆さんが楽しそうにしていらっしゃるエンディングも印象的でした。

あれはぶっつけで言われたんですよ! 「はい、皆さんお集まりください」みたいな感じで…。

僕は舞台をやっている人間なので、正直「こんなゆるい感じで大丈夫? 役半分、プライベート半分で…」って思いました(笑)。

しかし、完成した映像を見てみるとほんわかとしていてよかったですね。

話数を重ねるごとに内容が重くなっていったり、不完全燃焼で終わるお話も増えるので、最後にあの映像が流れることによって、肩の力を抜いて見ていただけると思いました。

■ 今までの時代劇とは異なる新しい作品

――2話(5月17日[金]放送)以降は、新川優愛さん演じる美鈴との関係も描かれていきます。

卯之吉は付かず離れずの距離で人付き合いをしていて、長年一緒にいる銀八ですら越えてこなかった一線をポーンと越えてくるのが美鈴さんなんですよね。

容姿がかわいいとかではなく、真っすぐで屈託のない純粋さや人間性。そして自分に対してこんなに深く向き合ってくれる初めての人だったと思うんです。

将来的にそういった感情が好きということにシフトしていくんだと思いますが、卯之吉としては予想していないことをしてくる人物なので当初は警戒しているという感じです。

美鈴さんをきっかけに自分の過去を見つめ直すシーンもありますので、注目していただければと思います。

――最後に改めて作品の見どころを教えてください。

「大富豪同心」は元号が変わってから初めての作品ということもあり、今までの時代劇とは異なる新しい作品になっていると思います。

痛快娯楽時代劇ということで、ふざけすぎているのでは? と思われがちですが、歌舞伎役者の僕から見ても皆さんの所作などが素晴らしいですし、いいタイミングで時代の説明やうんちくが林家正蔵さんの語りで入ります。

勉強にもなりますし、面白いし、さらにホロっと泣ける部分もある作品なので、時代劇にあまり興味のない方にも見ていただけたらと思います。

この作品が高く評価された場合、もしかしたら今後新しく生み出される時代劇の基準になる可能性もあると思うので、そう考えると僕もとても楽しみです。(ザテレビジョン)

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