インパルス板倉が語る「今の時代のヒーロー像」と「腐り芸人の胸のうち」

インパルス板倉が語る「今の時代のヒーロー像」と「腐り芸人の胸のうち」

いたくら・としゆき=1978年1月30日生まれ、埼玉県出身。NSC同期生(東京校4期)の堤下敦と、1998年に「インパルス」を結成

ある事件を機にプロボクサーの道を断たれた男と、ヒーローに憧れる気弱な青年の二人が出会い、社会にはびこる悪を“暴力”によって成敗していく――。

小説「トリガー」「蟻地獄」のコミカライズ版でも知られる“原作=板倉俊之&作画=武村勇治”のタッグにより、「月刊ヒーローズ」(小学館クリエイティブ)で連載中のコミック「マグナレイブン」が今、世の漫画好きたちから注目を集めている。2019年3月に発売された単行本第1巻も好調だ。

ザテレビジョンでは、原作者の板倉俊之に単独インタビュー。禁断のノワールアクションコミック「マグナレイブン」の創作秘話を聞いた。

さらに、お笑い芸人“インパルス・板倉俊之”にも肉薄。相方・堤下敦の活動自粛中に期せずして獲得した“やさぐれ芸人”“腐り芸人”という新たなキャラについて、そして、堤下が復帰を果たしておよそ半年、インパルスとしての今後をどう見据えているのか、その胸の内も語ってもらった。

■ 世の中、“暴力”で解決できる問題って実は多いのかなって

――「マグナレイブン」の単行本第1巻が好評を博しています。極めてシリアスなテーマで、かなり踏み込んだ内容になっていますが、こうした重厚なストーリーは、どのようなところから着想を得たのでしょうか。

「いろんなところからなんですけど、例えば僕がボクシングをかじってることとか、YouTubeで暴力的な動画を見るのが好きだってこととか(笑)、あと、悲しいニュースを見たときに『これ、どうにかできなかったのかなぁ』と思ったりとか。いろんな出来事とか個人的な考えが重なって、何となく物語が湧いてきた、という感じですかね。ボクシングのことに関して言うと、いつもジムでプロのボクサーの方がトレーニングしているのを見ると、こんなにしんどくて、こんなに報われない仕事があるのかって思うんですよね。日々脳にダメージを受けながら、それでようやく世界チャンピオンになっても、全く世間に知られない人だっている。試合中に『バテてんじゃねぇぞ』とか心ない野次を飛ばす観客がいると、『ふざけんなよ!』って腹が立ってくるんですよ」

――報われないまま夢を諦めざるを得なくなってしまった元プロボクサーが、ボクシングの技術を暴力に変換して、世の中の理不尽な問題を解決していく…まさに、今の板倉さんの話が全てつながりますね。

「要は、現代社会で、限界ギリギリまでリアルにヒーローをやったら果たしてどうなるのかっていう話なんです。いじめの問題にしても、もしかすると、傷つけられる側がその瞬間だけでも強くなっちゃえば、案外すぐ解決しちゃうんじゃないの?…って考えると、『暴力反対』って一概には言えない気がするんですよね。子どもへの虐待の問題だって、身もふたもない言い方になっちゃいますけど、子どもには腕力がないから何も打つ手がないんだっていう見方もできるわけで、世の中、暴力で解決できる問題って実は結構多いのかなって。そういう僕のモヤモヤした妄想というか仮説を、漫画という虚構の世界で試してみたっていう感じですね」

■ 小説とかを書いてるときが一番、後悔のない時間を送れてる感じがするんです

――これまでの板倉さん原作のコミックは、まず小説という形で発表して、それが後にコミカライズされるという流れでしたが、今回の「マグナレイブン」は、最初から漫画の形で構想していたんですか?

「はい、端から漫画の原作として書いたのはこれが初めてですね。ただ、クオリティーは落としてないつもりです。これまでの小説に引けを取らないものにはなっているかなと」

――最初から漫画を想定して書かれた理由は?

「まず、この話を小説にしたら何ページあっても足りねえぞっていうのがあって(笑)。あと、小説でバイオレンスアクションを描いたら読む方も疲れちゃうんじゃないかとか、文章より絵の方が迫力が出るんじゃないかとか。僕が考えたことをストレートに漫画化できるなら、それに越したことはないなっていうのは最初から思ってました」

――作画は、「トリガー」「蟻地獄」に続いて、武村勇治さんが担当されています。武村さんはどんな漫画家さんですか?

「驚いたのは、武村さんって、作品ごとに画風を変えてくるんですよ。最初の『トリガー』のときは、ゴリゴリの絵だったんです。実際、武村さんが以前に描かれた『義風堂々!!』は、『花の慶次』のスピンオフ作品だから、(作画担当の)原哲夫さんの流れにある絵なんですね、『北斗の拳』のケンシロウみたいな。だから、そういう画風の漫画家さんなのかと思ってたんですけど、『蟻地獄』ではちょっとタッチが変わった印象があって。で、今回の『マグナレイブン』になると、これが同じ人が描いてるのかっていうくらい全然違う絵になってるんです。ご本人にお聞きしたら、掲載誌によって画風を変えてるらしくて。あの描き分けは本当にすごいです」

――板倉さんにとって、小説や漫画原作などの創作活動は、本業である芸人の活動とは全く別物なんでしょうか。

「うん、全然別物ですね。芸人の仕事は、笑いを起こすかどうかが全てなので、自分の言いたいことを言ってウケないんだったら、思ってもいないことを言ってウケた方がいい。だから、自分が言いたいことというか、発信したいメッセージみたいなものは、小説や漫画の方が、よりストレートに出ちゃうっていうのはあるかもしれないですね」

――物語の結末は決まっているんでしょうか?

「決まってます。僕の場合、何をするにもゴールが決まっていないと始められないんですよね」

――ずばり、ハッピーエンドですか?

「すみません、そこは言えないです(笑)。まぁ、ハッピーエンドと取るか、バッドエンドと取るかは、人によって違いますからね。『トリガー』も、ハッピーエンドだと思って書いたエピソードがバッドエンドだって言われましたし。何がその人にとって幸せかは分かりませんよね(笑)」

――板倉さんは今後も芸人と並行して、小説や漫画原作は続けていく予定なんでしょうか。

「そうですね。小説とかを書いてるときが一番、後悔のない時間を送れてる感じがするんで。原稿を書く作業で1日つぶれても、『やっちゃった』とは思わないですけど、ゲームで遊んで1日つぶしたら、『うわ、やっちゃったー!』って思いますもん(笑)」

■ “腐り芸人”のスイッチ入れっぱなしで他の仕事に行って、スベるときがあります(笑)

――話は変わりますが、板倉さんは最近、「ゴッドタン」(テレビ東京系)での“腐り芸人”や「さんまのお笑い向上委員会」(フジテレビ系)での“やさぐれ芸人”というキャラが注目を集めています。ご自身はよく「こんなキャラ、何の得にもならない」とおっしゃっていますが、あれは本音ですか?

「そうですよ。実際、あのキャラでオファーしてくるのは、『向上委員会』と『ゴッドタン』くらいですから(笑)」

――お笑いファンの間では、新たなキャラを見つけた板倉さんを応援するムードが高まっているようにも思えるのですが。

「言いたいことが言える環境になったっていうだけでしょうね。『今の板倉が言うんだったら許してやろうよ』みたいな空気に。それはそれで、自分の球で勝負できてる感じがして楽しいですけど」

――確かに、あのキャラだと何を言っても許される感じはありますね(笑)。

「たまに、腐り芸人のスイッチ入れっぱなしで他の仕事に行って、そのキャラのままでしゃべっちゃって、スベるときがありますよ(笑)。普通に芸人として呼ばれただけなのにアイドルの子に毒づいて、変な空気になっちゃったり。ただ、相方(堤下敦)が復帰したことで、『いつまで腐ってるの?』っていう時期に来ているので、難しいところですけどね」

――2017年の秋に交通事故を起こし、活動を自粛していた堤下さんが、2018年10月に復帰されました。2019年に入って、さらに活動が本格化してきた感もありますが、板倉さんとしては、インパルスというコンビの今後の展開をどのように考えているのでしょうか。

「いや、僕がいくら考えたところで、オファーがゼロだったら何もできないですからね(笑)。あんまりこっちでコントロールできることでもないだろうなって思ってます」

■ インパルスの新ネタは…もうしばらく様子を見させてください!(笑)

――例えば、単独ライブの計画などは…?

「それも、二人のテンションが一致しないといけないですからね。それが、いつになるのか…本当に分からないです、今の時点では」

――コンビとしての本格的な活動を期待しているファンの方も多いと思います。

「肝心なのは、彼(堤下)のメンタルが今どうなのかっていうところですよね(笑)」

――2月に「さんまのお笑い向上委員会」にインパルスが出演された際も、堤下さんはモニター横で緊張しているように見えました。

「ブランクを感じさせましたよね(笑)。まぁ、別の現場に行くとまた違うのかもしれないですけど」

――確かに、「ゴッドタン」(3月24日放送)では、堤下さんの“野球の審判”という新キャラが生まれましたね(笑)。

「ああ、そうですね。『おまえ、俺がいないときの方がおもしれえじゃねーか』っていう(笑)。でも本当にね、『ゴッドタン』は芸人に優しい番組で。ありがたかったですね」

――堤下さんが復帰して間もなく「ネタパレ」(2018年11月23日放送、フジテレビ系)で1年ぶりのネタを披露されていましたが、その後、コンビとしての新ネタ作りは?

「いやいや…、あの『ネタパレ』でやったネタは、なかなかの変化球だったんですけどね」

――漫才をしようとする板倉さんの前に、『俺が堤下だ!』と名乗る人物が、堤下さん本人を含めて次々と登場する、というメタなコントでした。

「あそこでいきなり普通のコントをやっても、変な感じになるかなと思ったんで。やっぱり、今の僕らがネタらしいネタをやろうとすると、設定も絞られてくると思うんですよ。堤下はコントの役柄としてツッコんでるのに、お客さんから『おめえがツッコんでんじゃねーよ』って言われちゃう気がして」

――(笑)。といっても、“謹慎明け”みたいなところばかりいじるのも変でしょうし。

「そうなんですよ、そこだけの笑いで終わっちゃうから。まぁまぁ、だからですね、もうしばらく様子を見させてください!(笑)」(ザテレビジョン)

関連記事(外部サイト)