<試写室>「白い巨塔」岡田准一の“狂気”に満ちた笑みに戦慄

<試写室>「白い巨塔」岡田准一の“狂気”に満ちた笑みに戦慄

財前五郎を演じる岡田准一

山崎豊子の傑作小説を原作に、大阪の大病院で繰り広げられる壮絶な権力争いを描いた岡田准一主演の5夜連続ドラマスペシャル 山崎豊子「白い巨塔」(夜9:00-10:24ほか、テレビ朝日系)が、5月22日(水)よりスタートする。

原作の刊行から50年経った今、物語の設定を2019年に置き換え、岡田演じる浪速大学医学部第一外科・准教授の財前五郎が、自身の悲願である“教授の座”を目指してなりふり構わず邁進していく姿を映し出す。

今回WEBサイト「ザテレビジョン」では、第一夜(5月22日[水]放送)を事前に視聴。オリジナルレビューで番組の魅力を紹介する。

■ あらすじを紹介!

腹腔鏡手術のスペシャリストとして医学界に名をはせる、浪速大学医学部第一外科・准教授の財前五郎(岡田准一)。たくましい体と精悍(せいかん)な顔つきに加え気さくな人柄は、付属大学の学生や医局員たちに慕われ、浪速大学のスター准教授として君臨していた。

ある夜、浪速大学・滝村名誉教授(小林稔侍)の喜寿を祝うパーティーのさなか、“スペ患”である近畿新聞会長・山田音市(本田博太郎)の容態が急変。膵(すい)がんを患う山田は、執刀医に財前を指名する。本来、山田は第一外科・東貞蔵教授(寺尾聰)の“スペ患”。上司である東を差し置いて自分が執刀するわけには…とためらいを見せる財前だったが、心の中では期せずして舞い込んだチャンスにほくそ笑んでいた。

手術は無事成功し、財前には山田から高級ワインと数百万の現金が贈られる。財前によって自分の“スペ患”が救われたことに、表面上では平静を装いながらも、東はその事実を苦々しく受け止めているのだった。

そんな中、浪速大学医学部では東の退官に伴う教授選挙が近づいていた。「君を次期教授に推薦しようと思う」そう恩着せがましく財前にささやく東だったが、その実、腹の内では財前ではない人物を、と考え始めていた。

その矢先、同期である第一内科・准教授の里見脩二(松山ケンイチ)から胃がん再発患者のカルテを見せられる。財前の診断では、原発巣は胃ではなく膵臓(すいぞう)。再発は誤診断である、と指摘するが、その診断を下したのが、浪速大学医学部長の鵜飼裕次(松重豊)だと分かった途端、翻意する。

教授選に備え、上層部に盾突くようなことは避けようとする財前を、里見は非難する。やがて、東が財前以外の人物を教授選候補に擁立することが判明。財前は、義父である財前又一(小林薫)の財力と政治力を最大限に生かし、浪速大学医学部第一外科教授という悲願に向けてさまざまな工作を開始する。

■ 映像化の歴史をおさらい!

1965年に刊行され、シリーズ累計600万部を突破する山崎豊子による長編小説「白い巨塔」。同作は、1966年に田宮二郎主演で映画化、そして1967年(NET※現テレビ朝日)には佐藤慶が、1978年(フジテレビ系)には再び田宮が主演を務めドラマ化された。

さらに、1990年(テレビ朝日系)に村上弘明が、2003年(フジテレビ系)には唐沢寿明、海外に目を向けると、2007年には韓国でもドラマ化されている。

そんな幾度となく映像化されてきた「白い巨塔」、それが今回、新時代“令和”の幕開けに、そしてテレビ朝日開局60周年記念作品として装いを新たによみがえった。

メガホンをとったのは、映画「愛の流刑地」(2007年)や「後妻業の女」(2016年)、「のみとり侍」(2018年)などを送りだした鶴橋康夫。テレビ朝日では、 開局45周年記念ドラマスペシャル「砦なき者」(2004年)、50周年―「警官の血」(2009年)、55周年―「黒澤明ドラマスペシャル 野良犬」(2013年)と周年ドラマを手掛けている。

■ “道化”を演じる「財前劇場」の開幕

今回、岡田准一は初の医師役でありながら、さまざまな名優が演じてきた外科医・財前五郎という一癖も二癖もある難役に挑んだ。

岡田が登場するファーストカットは、スーツ姿の財前が画面に向かってこわばった顔でさっそうと歩いて来るシーン。

岡田が引き連れるのは、寺尾聰(東貞蔵役)と松重豊(鵜飼裕次)だ。重鎮の2人に負けず劣らず、岡田の表情は渋く、そしてあからさまに“影”が見られた。

それも当然、この財前という男は、患者を救うために命をも投げ出さんとするヒーローなどではなく、出世欲、名誉欲と承認欲求の塊のような男だからだ。

眉間にシワを寄せ、常に何かに追われているような焦燥感がみなぎる財前は、喜寿を祝うパーティーを急きょ取りやめとうようとする滝村名誉教授(小林稔侍)に迫っていく。

「医者は利権と金もうけの道具でしかない…」と嘆く、顔の半分にピエロのメークを施した滝村に、財前は言う。「医学の世界は昔から、金と利権の世界ではありませんか…」と。

「清濁併せのみ、今まで多くの患者の命を救ってきたはずです。浪速大学の名誉教授ともあろう方が何を今さら!」財前が滝村に問い掛けるこのシーン、岡田が作り出した“新たな財前像”がむき出しとなって、画面を埋め尽くしていた。

ピエロ(滝村はうつむいたまま、そして財前こそがまさしく“道化”なのであり、この場にいる誰しもがその不気味さを訝しがりながらも、認めざるを得ない“何か”が財前に、そして岡田の演技にはあった。

■ 玄関開けたら2秒でキス…

そして、放送前から話題に上がっていた愛人・ケイ子(沢尻エリカ)と財前の濃厚な絡み、もとい“イチャイチャシーン”も間違いなく本作の見どころの一つなのだが、まず沢尻演じるケイ子について。

彼女はバー「ラディゲ」のホステスで、財前とは愛人関係にある。財前は何か仕事に行き詰ると、妻・杏子(夏帆)ではなく、ケイ子に救いを求める。ケイ子の前では一喜一憂し、うまくいかない教授選に嘆き、そしてケイ子の体を求めるのだ。

そんなケイ子は、ホステスという立場を利用して、財前が教授選で勝ち残れるよう手助けをしていく…。

ケイ子といえば、2003年版では黒木瞳がクラブのママという設定で演じていたが、今作での沢尻版ケイ子も妖艶な魅力を存分に放つ存在として、物語に彩りを与えている。

岡田と沢尻の、玄関開けたら2秒でキスシーンもなかなかの衝撃だが、中でも、あまり詳しくは書けないがプールでの一幕。財前が誰もいないプールで泳ぐ中、ケイ子がある情報を届けに来る。その情報が有力と分かった財前は、喜びのあまりケイ子を抱き寄せ、そのままプールの中に引きずりおろす、というシーンだ。

ここでの沢尻が見せた表情や、岡田演じる財前の、“無垢(むく)な少年”のような表情が、来たる“ドロドロ”の人間模様をより際立たせるものとなっている。

■ 圧巻のオペシーンも見応え十分!

また、教授選への道筋や財前を取り巻く人々の関係性(細かい設定を除く)などはおおよそ原作通りなのだが、舞台が2019年ということで、こと“医療”に関しては最新の設定になっている。

人工知能による医学の発展によって、10年後には医師はいらなくなる…と告げる滝村の言葉とは相反して、財前は最新の医療技術や設備を武器に、アナログな攻防を繰り広げていく。

これまでも時代に伴った設定に変更されてきたが、今回の財前は腹腔鏡手術のスペシャリスト。序盤のオペシーンからその手技を存分に発揮している。このオペシーンでは、記者会見でも岡田自身が語っていたように、アドリブで緊迫感を持たせるようなせりふが次々と飛び出す。

岡田の手術着姿も貴重だが、“完璧”過ぎる財前は、手術中でさえも教授選を勝ち抜くための工作を重ね、そしてほくそ笑むのだ。この笑みがとにかく怖くて、“狂気”すら感じる。

冷徹な男・財前の行動は一貫して“汚い”し“優しくない”のだが、岡田はこの汚さを実にさまざまな表情で表現してみせた。

■ 里見という男

最後に、財前と対になる存在として、第一内科・准教授の里見脩二も忘れてはいけない。今作では松山ケンイチが、持ち前のナチュラルさを十二分に発揮して演じている。

ビシッとしたスーツや白衣の着こなしからも、患者の命を第一とした里見の信条がにじみ出ているが、松山の細かい芝居が本作でも散見される。

教授に怒られた帰り、横断歩道の“白い”部分だけを渡る仕草や、「腹減ったな〜」という一言だけで里見の人柄を表現するのが松山ケンイチの成せる技だろう。その透明感を持った里見が、第二夜以降どう動いていくのかにも注目だ。

そんな里見と財前が屋上でたそがれるシーンも印象的だ。屋上から見える景色には、白煙を吐き出す“鉄塔”がいくつも生えている。財前の母が暮らす岡山、最新の医療設備を誇る大阪の病院。名誉欲にとらわれた財前、患者の命を一番に考える里見。財前への愛をそれぞれの形で表現する本妻と愛人。さまざまな物の表裏が繰り返し反転しながら、人の命を糧にそびえ立つ白い巨塔の頂点を目指してひしめき合う姿は、変わる時代に変わらない何かを訴えている。

なぜ今、「白い巨塔」なのか。その理由はぜひ第五夜まで見届けて、自分なりの答えを見つけてほしい。(ザテレビジョン)

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