bonobosインタビュー「5人だからできる演奏を」

bonobosインタビュー「5人だからできる演奏を」

現体制では初となるアルバムをリリースしたbonobos・梅本浩亘、田中佑司、蔡忠浩、森本夏子、小池龍平(写真左から)

bonobosが2年ぶりとなるニューアルバム『23区』を、9月21日にリリースした。それを受けて、今回メンバー5人にインタビューを敢行。前編では、今回の新譜や新たにメンバーが加入した経緯などについて、率直に語ってもらった。

――今回2年ぶりのアルバムとなりますが、田中佑司さん、梅本浩亘さん、小池龍平さんが加入されてから初めてのアルバムでもあります。あらためて、アルバムとして形になっての手応えはいかがですか?

蔡忠浩(Vo,Gt):前作までは3人(蔡、森本夏子、昨年脱退した辻凡人)でやってて、いろんな管楽器や弦楽器のサポートの人と一緒に、割とバンドサウンドというよりかは、一つのプロジェクトとしてアルバムを作っていたんです。

今回新たに3人が加入したことによって、普段のライブもそうなんですが、そもそもの出ている音がとてもバンドらしいものになりました。曲作りもそうですが、全てにおいていい影響を与えてくれたと思います。

――田中さんや小池さんは、以前からbonobosのサポートとしてライブに参加されていましたが、これまでもアルバムの制作には関わっていらっしゃったんでしょうか?

蔡:佑司(田中)は『HYPER FOLK』('14年)の時に1〜2曲…。

田中(Key):う〜ん、3曲くらい…(笑)。

蔡:そうだね(笑)、3曲くらい弾いてもらったことはあるんですが、メンバーだからとか、ライブのサポートをしてくれているからというわけではなく、ただ何となく来てもらったんだよね。

田中:そうですね、ちょっとした思い出話なんですけど、『HYPER FOLK』のレコーディングの時は、僕がスタジオに到着してすぐに作業が始まったことがありました(笑)。

森本(Ba):もともとは蔡くんが弾こうと思ってたんですよ。

蔡:自分で弾けそうなやつを弾いていたんです。ループのフレーズだったんですけど、なかなかうまく弾けなくて。「あ、佑司着いた? 佑司早く来て!」って言って、その場で「これ分かる? ちょっと録って!」ってやってもらいました(笑)。早かったねあれは。

田中:その時は、到着して1分以内に録音がスタートしましたね(笑)。

蔡:今回のアルバムにも入っている「うつくしいひとたち」という曲は、昨年アナログの7インチ盤を作ったんですが、梅(梅本)が加入するタイミングで5人で、記念っていうわけではないんですけど先行して一曲録ったんです。なので、こうやってアルバム一枚ちゃんと録るのは初めてですね。

――田中さん、小池さん、梅本さんは、今回メンバーとしてレコーディングに臨むに当たって、何か意識されたことはありましたか?

小池(Gt):何ですかね…。メンバーになったからっていう心意気はなかったんですけど…。う〜ん、(田中、梅本に対して)何かない?(笑) そういう意味では自然に、一生懸命やるってことですかね?

田中:でも、すごくぜいたくなスタジオで録音をさせていただけるという機会だったので、なるべく自分たちのペースで出来たらうれしいなと。何か空気にのまれたりとか、雰囲気に酔っちゃうことって、きっとあると思うじゃないですか。

「自分たちのペースで自分たちなりのいいものを、精いっぱい正面から取り組む」っていうのは、僕個人としては何となく意識させてもらいました。

蔡:いいこと言った(笑)。

梅本(Dr):僕はこのバンドに最後に入ったんですが、結構このアルバムにいろんなジャンルの曲が入っていて。これまで僕は一つのジャンルをバーッとやり続けててきたので、大丈夫かなって言うのはありました。

一同:(笑)。

梅本:でも、やっぱり楽曲は最高に良いし、みんながすごいから、それで、自分ができることを最大限に、楽しくできたらいいなと思って取り組みました。楽しいことばかりではなかったですけど(笑)、でも(音源を)聞いてみて、結果的に良かったなって。「あ、俺bonobosやってるな」っていう。

――今回の『23区』というアルバムを制作するに当たって、コンセプトや方向性などは当初から決めてレコーディングに入られたんでしょうか?

蔡:そうですね、レコーディングに入る段階ではもう、アルバム全体のムードだったり、楽曲の手触りみたいなものはほとんど決まってはいたんですけど、曲作りの段階ではあんまり…。

そもそも前作の『HYPER FOLK』だったり、もう一つ前の『ULTRA』('11年)というアルバムが、割と管楽器と弦楽器を多用したアレンジのアルバムが続いていて。本来だと、それの三部作の最後、3枚目を作るつもりでいたんです。

それに向けて曲作りもずっとやっていたんですが、こうして5人になるという状況でアルバムを制作することになったので、曲やアルバム全体の方向性もかなりシフトを変えました。よりバンドらしいというか。今のこの5人だからこそできる演奏だったり、楽曲だったりっていうのを作ろうと思いましたね。

レコーディングが始まる前のプリプロダクションをやるころには、この5人でいろいろ相談しながらやっていきましたね。なので、それぞれのプレイスタイルだったり、楽器の音色にお互い反応しながら、どんどんリアルタイムで作っていくっていう。ある意味それがコンセプトですかね。

――今回のアルバムを聞かせていただく中で、個人的には“シティポップ”というワードが浮かんできました。昨今の東京インディーシーンを中心に、“シティポップ”と呼ばれるものがトレンドのようにもなっていますが、そうした動きを意識した部分はありましたか?

蔡:東京のインディーシーンに知り合いや友達もいるし、例えばceroなんかは、元々bonobosでパーカッションたたいていた松井泉がライブのサポートやっているし、佑司も作品で参加したりとつながりはあるんですが、bonobosがライブをやってきたシーンも年代も微妙に違うので、直接の関わりはあまりなくて。

どちらかというと、楽曲自体はそのシーンに向けてどうこうというより、元々bonobosが持ってた要素ではあるんですよ。その上で、アレンジの中に少しずつここ数年のアメリカのヒップホップとかジャズかいわいから受けた影響も多分にありますし。

基本的には今の気分で、今いる5人それぞれの特徴を生かすっていう。それでやっていったらこうなったという感じですね。その中で「最近の○○の新譜がイイ」とか「リズムが面白い」みたいな話は日常的にしているので、そういうものは入ってはいます。でもそんなに…。あくまで自然発生的な感じですね。

――今ヒップホップの影響もあったというお話がありましたが、「Crusin' Crusin'」での黒っぽいグルーヴなども、見事に「bonobosのサウンド」として昇華されているように感じました。それ以外にも今作は多彩なサウンドが展開されていますが、サウンド面での挑戦に行きついた決め手、要因はありましたか?

蔡:それも本当に流れで(そうなったというか)。前作、前々作のシンフォニックな音楽性からいったん離れて、今のメンバーでできることとかを考えていった結果ですね。

あとは、古い曲をリアレンジしたりする作業の中で、梅と森本のリズム隊の相性がすごくいいなと感じていて。あらためて、昔だったらできなかったことが、今回だったらできるなっていう。

しかもそれを高いクオリティーでできると判断をして、それも相当影響してこういうサウンドになったという感じですかね。「演奏者冥利(みょうり)に尽きる楽曲・アレンジ」っていう方向に、思い切ってかじを切りました。

なので、アルバムのセッション自体はみんなで演奏しながら楽しんでました。(演奏面で)より難しいアプローチはたくさんありましたけど、難しいことも楽しんでできるようなアルバムを作れたらなと思いながらやっていましたね。

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