トクマルシューゴの新作は「誰かの音を発想の源に」

トクマルシューゴの新作は「誰かの音を発想の源に」

10月19日に4年ぶりのアルバムをリリースしたトクマルシューゴ

トクマルシューゴが4年ぶりとなるアルバム『TOSS』を10月19日にリリース。その発売に合わせて、トクマル本人にインタビューを敢行。前編となる今回は、個性的な楽曲が並んだアルバム製作の裏側について語ってもらった。

――前作『In Focus?』以来4年ぶりのアルバムとなりましたが、今作の制作に動き出されたのはいつ頃でしょうか?

ちゃんと動き出したのは…覚えてないな(笑)。'14年くらいかな?(今作に収録されている楽曲を)録り始めたってことで言うと、その時期ですね。

――今回のアルバムを制作されるに当たって、当初から具体的なコンセプトは決められていたんでしょうか?

曲によりけりですね。一曲一曲について、全然違う印象がありますので。アルバムトータルのコンセプトという形ではなかったですね。

――今回のアルバムを制作される前に、舞台「麦ふみクーツェ」のサウンドトラックのリリースなど、ご自身のアルバム以外の活動も精力的にされていましたが、そうした活動とご自身の活動における一番の違いはどんなところでしょうか?

誰かが主導で形にしたものに対して僕が音楽を付けるということと、僕がゼロから発想して、それを基に曲を具現化していくということの、その違いが大きいですね。

気持ちの部分で変わることはそんなにないのですが、自分の作品では、自分がいいと思うもの、ビビッときたものを選択していくことになるので、その作業が一番の違いですかね。特に今回はそういった部分が多かったです。

――今作でも「Cheese Eye」はオーケストラサウンドで、非常に「劇伴」的な、物語性を感じさせるインストナンバーでした。こうした曲を盛り込まれたのはどういった狙いがあったんでしょうか?

この曲は昔からやりたかった曲ではあって。以前からいわゆる「カートゥーン音楽」というか、アニメーションが出来たばかりの時代に付けられていた音楽が大好きで。そうしたコロコロと展開が変わっていくような音楽が、今なら何か作れるんじゃないかなというのがあったんです。

実際に現代でそういう音楽を作っている方をあまり知らないというか、(自分自身)聴いたことがなかったので、一度それをやってみたいなということで作り始めました。

――この曲をレコーディングするに当たって、ミュージシャンの方々はどのような経緯で集められたんでしょうか?

この曲に関しては、カートゥーン音楽を研究している上水樽力くんの存在が大きかったですね。実際によく分かっているというか、「こういう時にはこういう音楽が鳴る」ということを一番理解している人で。

(恐らくそういうことを分かっている人は)その人の他にはいないと思ったので、ぜひ一緒にやってみたいとお願いしました。

――冒頭の「Lift」からホーンやストリングスをふんだんに使われていて、前半は音数の多い楽曲が並んでいますが、その反面「Route」や「Dody」のようにピアノやアコースティックギターのみで表現される曲も印象的でした。そうした相反する趣の楽曲を一つのアルバムにまとめた狙いは?

そもそもこのアルバム自体が、「アルバムにしたい」という強い思いがあって出来たものではなくて。(収録されている楽曲も)このアルバムのために作っていた曲ではないんです。

いろんな曲をいろんなコンセプトに基づいて作っていたら、たまたまこういう方向性の違うような曲が集まって。それを並べてみたらこんな形になった、という感じですね(笑)。

――その中で、先ほど伺った「Cheese Eye」のように、各曲で「こういうことがやりたい」という具体的なコンセプトがあったと思いますが、例えばそれはどのようなことだったのでしょうか?

もちろん全曲に対してあるんですが、今回全体的なイメージとして強かったのは、僕が紡ぎ出したフレーズなどから曲を発想するのではなく、誰かが出した音であったり、鳴らしたフレーズであったりを発想の源にするということですね。

(そうした音やフレーズを)集めて、並べて、曲にしてみて、それを実際に誰かに演奏してもらうという作業を繰り返しながら、だんだんと曲にしていったので、そのやり方の部分が強いと思います。

それから、「Lita-Ruta」や「Taxi」は、いくつかの曲が合体してできた曲でもあって。始めは何もない、曲がゼロの状態からセッションみたいな感じで録り始めて、その中からドラムはドラムで録ったり、リズムはリズムで録ったりして。本当に寄せ集めの楽曲という感じですね。

――「Hollow」という曲では、これまであまり見られなかった「音の間」を強く意識させるような楽曲でしたが、この楽曲も「新たな挑戦」といった意味合いがあったのでしょうか?

この曲は、発想の基が絵だったんです。まず絵をいくつかワーッと書いてみて、それをだんだん楽譜っぽく落とし込んでみて、何となく自分が想像した音の曲が、スキだらけだったというか。それを一旦楽譜に落とし込もうと思ったんですけど、でもそれを「音」にはしたくなかったんです。

「バッ」とか「グワ〜ッ」って感じの、雰囲気のようなものをとりあえず楽譜にしてみて、それを「さあやってみよう、ハイ」って鳴らしてみたら、結構「間」が空いたりして。それが面白かったので入れたいなと思いました。メロディーよりも、ムードや雰囲気を大事にしたということですね。

――アルバム最後の曲である「Bricolage Music」は、ウェブサイトを通じて世界中から音を集めて制作された「ユーザー参加型」の楽曲ですが、この曲も「他人の作った音を基にして楽曲を作る」というコンセプトの下で製作されたのでしょうか?

音をたくさん集めて音楽にしていく手法としては、いろんな発想ややり方が考えられると思うんです。この楽曲はその手法のひとつですね。捉え切れないくらいの音の数々を一気に入れてあげることができる手段ですね。

――そうした何曲かの楽曲の中から、それぞれのリズムやメロディーを抜粋していく決め手となった部分はどういったところだったんでしょうか?

それが結構、今回のアルバムにおける悩みどころでもあって。自分が選ぶっていうことに対して、「自分が一体何が好きなんだろう?」「何でこれを選んだんだろう?」っていう、自問自答の世界ではありましたね。

――ちなみに、全世界の皆さんから寄せられた「音の素材」は、およそどのくらい集まったのでしょうか?

これは…1000個以上だと思いますね。その中から音たちを選んでという感じです。

――中には映像から音だけを抽出したりといった作業もあったんでしょうか?

それはなかったです。完全に寄せられた音だけですね。人によっては一曲丸々送ってくるような人もいて。長さもまちまちだったので選ぶのが大変でしたね(笑)。

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