トクマルシューゴ「新作でやれることが広がった」

トクマルシューゴ「新作でやれることが広がった」

自身6枚目となるアルバム『TOSS』をリリースしたトクマルシューゴ

トクマルシューゴが4年ぶりとなるアルバム『TOSS』を10月19日にリリース。その発売を受けて、トクマル本人にインタビューを敢行。後編となる今回は、新作だけでなく、音楽監修を務める映画についてや、ツアーに向けた意気込みなども語ってもらった。

――「Migiri」という曲はカセットテープMTRにて録音されていますが、トクマルさんの作品は音質面でも非常に作り込まれた楽曲が多いだけに、こうした音質で発表されることに若干意外な印象を抱きました。今回この曲をカセットMTRで録られた意図はどのようなことなのでしょうか。

久しぶりに、カセットMTRで多重録音とミックスがやってみたかったんです。この曲では、デジタル、オープンリール、カセットMTRと3種類で試して録音したのですが、一番良かったのがカセットMTRでのテークでした。

――昨今、レコードやカセットといったアナログメディアがブームとなりつつありますが、そうしたアナログメディアに対するトクマルさんご自身の思いについてお聞かせください。

再現性という意味ではデジタルメディアの方が上かもしれませんし、今後きっともっといいものが出てくると思います。ただ、「その瞬間にしか聞けない音楽」を再生できるメディアという意味では、アナログメディアと音楽との相性はピッタリだったのかもしれないです。

――以前拝見したインタビューで、「締め切りがなければずっとレコーディングの作業を続けていきたい」という旨の発言をされていましたが、そういった意識は本作でも変わらずだったんでしょうか?

変わらないですね。特に今回は、ゴールがないまま作り始めた曲というか、ゼロからスタートで、ある音たちを組み合わせていくという作業が多かったので。本当に、「枠のないパズル」をずっと作り続けているような状態でしたね(笑)。

――今回多彩なアーティストの方々とのコラボを通じて、あらためて得たものはありましたか?

やっぱりみんな自分にはないものを持っていて、(彼らが演奏などを通して)自分の新しい一面を引き出してくれるというのは、他者と一緒にやらなければ体験できないことではあるので。

(今作で参加したメンバーは)その発想が飛び切り面白い人たちだったので、そういう人たちと一緒にやれることで、僕の中のやれることが広がったと思いますし、「ここまでやっていいんだ!」みたいな、そういう気持ちになりましたね。

例えば、ギターについて調べれば調べるほど「ギターってなんでもやっていいんだな」って思えるようになるし、ジャズの世界も研究すればするほど自由度が上がっていくその感じに近いというか。

でも、「その手に入れた世界の中で、いかに面白く遊ぶか」みたいな、そういう世界観の演奏を見るのが僕はすごく好きなんです。それはやっぱり、面白い人たちと一緒にやるからこそ得られる体験だなとは思いましたね。

――今回のアルバム以外にも、井の頭恩賜公園が'17年に100周年を迎えることを記念して、現在製作中の青春映画「PARKS パークス」の音楽監修を務めるとのことですが、そのあたりの進捗はいかがでしょうか?

(同映画の製作を手掛ける)boidから、「井の頭公園と60年代を舞台とした映画を作ることになったので音楽をお願いしたい」というようなことでお話をいただいて。

('14年に閉館した映画館)吉祥寺バウスシアターが出資元なんですが、映画館自体はなくなってしまって、僕自身やっぱり文化として何かを残しておきたいという思いもあったんです。そのきっかけとして、僕が何かできることはないかなっていうことで(引き受けました)。

(音楽監修としては)吉祥寺に関係するいろんなミュージシャンの方を探したり、集めたりしていて。いろんな人たちが参加している映画になっているというのもありつつ、僕も歴史などを勉強しながら、実際に曲を作っています。

例えば「60年代の若者たちが何を考えていたのか」とか、「どんな曲を作ったんだろうか」とか、そういうものをすごく想像しながら曲を作った感じですね。実際にどんな作品になるかは、ちょっと見てみないと分からないと思うんですが、来年の春には公開されると思います。

――11月からはアルバムリリースに伴うツアーも始まりますが、それに向けての準備などはいかがでしょうか?

今、アルバムの楽曲たちをもう一回ライブ用にアレンジし直しているんですけど、それがすごい面白くて。「実際に生で演奏してみると、こんなに面白いんだな」っていうのを再発見しています。それを皆さんに楽しんでもらえるかなっていうのがありますね。

――実際に演奏するとなると、かなり難しい部分もおありかと思いますが…。

かなり難しいですね。物理的にできないこともあるので、それをやるのかやらないのかっていうこともあったりして。いろいろアイデアは出てくるんですが、それが実現可能なのかどうかも探りながら、ツアーに向けて試しているところです。

――今回のツアーでは、何人編成でのライブとなりそうでしょうか? 以前やられていた「トクマルシューゴ&ザ・マジックバンド」のように、大所帯での演奏ということもあるのかなと思ったのですが。

基本的には今の編成です。今(一緒にライブをやっているメンバーが)6人いるんですけど、そのメンバーでやると思います。プラスでゲストを入れたりすることはあるかもしれません。

――それでは最後に、アルバムを聴かれる皆さんに向けてメッセージをお願いします。

そうですね…、何か、ちょっと複雑なんですけど、難しいことをやっているようでいて、難しくはないものを作ったつもりなんですけど、でも難しいですよね(笑)。

パッと聴いてもらいたい気持ちもあるので複雑なんですが…。まずは難しく考えずに聴いてもらって、一曲でも興味を持ってもらえたらうれしいです。

その曲について「どんな曲なんだろうな」って調べてもらえたら、より面白くなるような作りにはしてあるので。そういう感じのアルバムです。

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