49年前の本日、ベッツイ&クリス「白い色は恋人の色」が発売〜万博の年に花開いた美しき女性デュオ

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ハワイ州出身のベッツイとアイダホ州出身のクリスで1969年に結成された“ベッツイ&クリス”は、デビュー曲「白い色は恋人の色」をヒットさせて一世を風靡した女性フォークデュオ。続けて「花のように」「夏よおまえは」などのヒットを連ね、70年代初頭に活躍した。2人での活動は4年ほどで終了したが、その後ベッツイはいくつかの職業を経て再び歌手活動に戻り、クリスは音楽教師となって、いずれもハワイで暮らしているという。本日10月1日は今から49年前に「白い色は恋人の色」が発売された日。つまりはベッツイ&クリスのデビュー記念日にあたる。

当時から2人は姉妹デュオかと思われることが少なくなかったようだが、そうではない。ベッツイこと、エリザベス・ヴァージニア・ワーグナーは1952年9月4日生まれ。幼年期に映画『サウンド・オブ・ミュージック』のモデルとなったトラップ・ファミリー合唱団の三女・ヘートウィクから指導を受けたという。一方のクリスこと、クリスティーン・アン・ロルセスは1952年6月25日生まれ。ギター担当。2人は“サウンズ・オブ・ヤング・ハワイ”のメンバーとして69年に来日した際にスカウトされ、コロムビアのDENON(デノン)レーベルからデビューすることになった。同レーベルはコロムビアでレコードプレーヤーなどオーディオ機器のブランドとして機能していた“デンオン”に由来し、それまであった外国資本のCBSとの提携による“CBSコロムビア”が“CBS・ソニー”の設立によって別会社へ移行したことから、それに代わるポップスやフォーク専門として設置されたレーベル。Jガールズの「あなたが来ない日」や、新谷のり子「フランシーヌの場合」といったヒットが生まれていたなかで、ベッツイ&クリスのデビュー曲はそれらに勝る大きなヒットとなる。発売後しばらく70年が明けてからチャートを上昇し、オリコンのウィークリーチャート最高2位、70年の年間チャート11位に輝いた。


「白い色は恋人の色」の作詞と作曲を手がけたのはザ・フォーク・クルセダーズのメンバーだった北山修と加藤和彦。グループ解散からちょうど1年後のことだった。フォークソングがブームだった当時、2人に楽曲が依頼されたことは大成功で、ベッツイ&クリスの可憐で美しいハーモニーにピタリと填って稀代の名曲が誕生することとなったのである。詞のテーマとなっている“花”には、60年代後半のアメリカにおける反戦活動から生じたフラワームーヴメントが背景にあるのは明らかであろう。愛と平和の意味が込められた花のモチーフは、同じく北山×加藤コンビによる次作「花のように」へと展開される。ヒット作の要素を継承するという意味合いももちろんあっただろうが、北山の詞世界においてそれは重要なキーワードであったとおぼしく、代表作の「戦争を知らない子供たち」にも「あの素晴しい愛をもう一度」にも“花”は登場している。フォークル時代のアルバム『紀元貳阡年』にも「花のかおりに」という曲が収められていた。ベッツイ&クリスは自由の国アメリカ領土のハワイから日本へやってきた、フラワーチルドレンの象徴だったのである。


彼女たちは73年までに13枚のシングルと、ベスト盤やライヴ盤を含めると10枚近いアルバムを出しており、北山×加藤の作品では7枚目のシングルとしてリリースされた70年の「美しいものたちよ」もある。森山良子をカヴァーした12枚目のシングル、72年の「美しい星」(山上路夫作詞、村井邦彦作曲)のハーモニーも絶品。その翌年に解散してしまったのが惜しまれる。ちなみに北山と加藤が自ら歌った名曲中の名曲「あの素晴しい愛をもう一度」がリリースされるのは、「白い色は恋人の色」から半年後の71年4月のことだった。当初はシモンズのデビュー曲となるはずだったが、結局は作者である2人が“加藤和彦と北山修”名義でリリースしてヒットさせた。シモンズは同年8月に“五つの赤い風船”の西岡たかし作による「恋人もいないのに」でデビューしており、北山は3枚目のシングル「おくれて来た少女」の詞を提供。さらに加藤も5枚目の「思い出の指輪」を作曲している。ベッツイ&クリスで最高の表現を得ることが出来た女性デュオへの強い思い入れが感じられる。


ベッツイ&クリス「白い色は恋人の色」「花のように」加藤和彦と北山修「あの素晴しい愛をもう一度」ジャケット撮影協力:鈴木啓之

【著者】鈴木啓之 (すずき・ひろゆき):アーカイヴァー。テレビ番組制作会社を経て、ライター&プロデュース業。主に昭和の音楽、テレビ、映画などについて執筆活動を手がける。著書に『東京レコード散歩』『王様のレコード』『昭和歌謡レコード大全』など。FMおだわら『ラジオ歌謡選抜』(毎週日曜23時~)に出演中。

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