伝統の駅弁大会に垣間見える「新機軸」、そして「希望の光」とは?

コンテナ弁当が話題の淡路屋ブース。実演の新作「たこ壷カレー」も美味!

近年、鉄道に乗るとき、まず「きっぷ」を買わなくなりました。在来線は交通系ICカード、新幹線や特急もネット予約でチケットレスサービスがほとんどです。気が付けばこの10年、ほとんど、スマートフォン1つで移動するのが主流、現金を持ち歩くことも少なくなりました。伝統の駅弁大会も、コロナ禍で3密を避けるべくネット予約が拡充され、関係者によると、今年(2022年)は利用者も大幅に増加したと言います。

N700S新幹線電車「のぞみ」、山陽新幹線・西明石〜姫路間

京王百貨店新宿店「第57回元祖有名駅弁と全国うまいもの大会」見て歩き(後編/全2回)

この年末年始、全国の新幹線や特急列車の利用状況は、前の年に比べると2倍以上の大きな伸びとなりました。しかし、コロナ禍前最後の年末年始と比べると、概ね7〜8割の利用状況でした。私自身はコロナ禍前後でもほぼ変わらず、新幹線・特急、通勤列車を利用していますが、混み合う時間帯を外せば、比較的ゆったりと移動できるようになったと感じます。ピークの山を作るのではなく、程よく分散していく時代なのかなとも思います。

京王百貨店新宿店・堀江英喜統括マネージャー

1月20日まで開催している京王百貨店新宿店の「第57回元祖有名駅弁と全国うまいもの大会」。7階大催場の実演会場も通路が広めに取られ、ゆったりとした作りです。また、輸送駅弁は4階での販売となっている他、拡充されたネット予約を利用、指定の時間帯に希望した弁当をサッと受け取り、並ばずに駅弁を買い求めるお客様も増えたと言います。では、京王百貨店新宿店・堀江統括マネージャーのインタビュー、後編です。

近江牛にぎり寿司とステーキ焼肉弁当

●巣ごもり需要で「高額弁当」が人気!

―今回のもう1つの目玉企画は「ごちそう食材で旅気分!新作豪華駅弁合戦」です。駅弁は1000〜2000円が相場ですが、これはかなり豪華ですね?

堀江:普通、お求めになる駅弁は1000円程度が相場だと思います。しかし、駅弁大会をはじめとした催事のお客さまの動向を分析しますと、3500〜3980円の高額弁当の反響がいいことがわかりました。コロナ禍で、お客さまもあまり遠くへお出かけになれないせいか、近場でいつもよりちょっといいご飯を召し上がりたいニーズがあるのではと感じています。そこで、駅弁大会でも、各社様十八番の食材で豪華版の弁当を作っていただきました。

―注目の肉駅弁は?

堀江:肉駅弁では、各社様それぞれの土地のブランド牛のいい部位を使っています。しかも、飽きがこないよう、1ヵ所の部位だけでなく、いくつかの部位や調理法を変えることで、食べ比べができるような豪華弁当に仕上げていただいています。なかでも、滋賀県の草津駅弁・南洋軒の「近江牛にぎり寿司とステーキ焼肉弁当」は、ステーキににぎりずし、焼肉と手間がかかっています。それで2500円はお得だと思います。

海の輝き 海鮮輝ちらし

●海鮮駅弁をお値打ち価格で、いまがギリギリのタイミング!

―魚介類は、駅弁各社さんが口をそろえて、「価格の高騰で大変」と話されていますが、駅弁大会の現場でも感じますか?

堀江:確かに魚介類はいま高騰していますので、各社さん本当に苦労されています。とくにこの冬は、ズワイガニが不漁も相まっていままでの倍くらいの価格帯になっているそうです。でも、駅弁大会に使う食材は少し前に買い付けるなどしていますので、その当時の価格です。その意味でも、今回の駅弁大会では、豪華な海鮮駅弁を少しお値打ちな価格でお求めいただけるギリギリのタイミングではないかと。来年(2023年)がちょっと怖いですけれどね。

―注目の魚駅弁は?

堀江:各社さん本当にご努力されていますので、どれも召し上がっていただきたいですが、敢えて1つ挙げるとするならば、小樽駅の名物駅弁「海の輝き」の豪華版、「海の輝き 海鮮輝ちらし」(2160円)ですね。7種類の海鮮食材を使っていて、盛り付けもこだわった彩り華やかな弁当です。駅弁大会のチラシに使う写真撮影に立ち会いましたが、何度も撮り直すほどの気合の入れようでした。

コンテナ弁当が話題の淡路屋ブース。実演の新作「たこ壷カレー」も美味!

●コロナ禍で、駅弁大会も「ネット予約」の時代に!

―今回、ネット予約できる駅弁が増えましたね?

堀江:昨年(2021年)より増やしました。おかげさまでお客様の動向を把握するのに役立っています。ネットでは珍しい容器の駅弁に魅かれるお客さまが多く、神戸駅弁の「JR貨物コンテナ弁当」(1420円)は大変多くのご予約をいただき予約分は即完売。輸送駅弁コーナーでも、開店と間もなくで完売という状態が続いています。お客さまからのお問い合わせも多くいただいており、反響の大きさに私たちも大変驚いています。

―今回の駅弁大会を開催して感じることは?

堀江:コロナ禍で駅弁各社さんは、旅行自粛で駅で売れず、会合自粛で仕出しも売れません。その大変厳しい状況でも「京王の駅弁大会だけは外せない」と、実演や輸送駅弁でご協力いただきました。私たちも、「一緒に頑張りましょう!」という思いでやっています。前回は「新作は厳しい」「いまは東京に行けません」という駅弁屋さんも多かったのですが、今回は新作を作って下さったり、実演を復活させて下さった駅弁屋さんも増えてきました。コロナ禍のトンネルの向こうに希望の光が見えてきた……そう信じたいと思います。

733系電車・普通列車、函館本線・朝里〜銭函間

駅弁大会の実演販売では、駅弁屋さんのトップの方など、普段はなかなかお目にかかることができない方が、自ら腕を振るって、駅弁を作っている会社も多いものです。つまり、作り手と買い手がお互いに顔を合わせながら、駅弁を購入することができる希少な機会。各社さん、お客さまの「ナマの声」にはとてもよく耳を傾けています。その意味でも、駅弁を「双方向」のコミュニケーションで盛り上げられる可能性も秘めています。いまは、気候も景気も“真冬”ですが、もうすぐ春はやって来ます。こんどは、駅弁大会でいただいた美味しい駅弁のふるさとを目指して、旅の計画を立ててみてはいかがでしょうか。

連載情報

ライター望月の駅弁膝栗毛

「駅弁」食べ歩き15年の放送作家が「1日1駅弁」ひたすら紹介!

著者:望月崇史
昭和50(1975)年、静岡県生まれ。早稲田大学在学中から、放送作家に。ラジオ番組をきっかけに始めた全国の駅弁食べ歩きは15年以上、およそ5000個!放送の合間に、ひたすら鉄道に乗り、駅弁を食して温泉に入る生活を送る。ニッポン放送「ライター望月の駅弁膝栗毛」における1日1駅弁のウェブサイト連載をはじめ、「鉄道のある旅」をテーマとした記事の連載を行っている。日本旅のペンクラブ理事。
駅弁ブログ・ライター望月の駅弁いい気分 https://ameblo.jp/ekiben-e-kibun/

関連記事(外部サイト)