伝説の“運び屋”は、90歳の老人だった?

【しゃベルシネマ by 八雲ふみね 第580回】

さぁ、開演のベルが鳴りました。
支配人の八雲ふみねです。
シネマアナリストの八雲ふみねが、観ると誰かにしゃベリたくなるような映画たちをご紹介する「しゃベルシネマ」。

今回は、3月8日公開の『運び屋』を掘り起こします。


10年ぶりのクリント・イーストウッド主演・監督作は、前代未聞の実話サスペンス


「もう今後は、積極的に(演じたい)役を探さない」。

『グラン・トリノ』(2008年)をもって、今後は俳優業は引退し、監督業をメインに活動して行く…。実質的に俳優としては引退か? とも取れる発言をしていた、クリント・イーストウッド。あれから10年。“映画界の生けるレジェンド”と呼ばれる男が、主演・監督作を携えてスクリーンに帰って来ました。


映画『運び屋』のベースとなったのは、2014年「ニューヨーク・タイムズ・マガジン」に掲載された、ある1本の仰天記事でした。「シナロア・カルテルの90歳の運び屋」と題されたその記事は、第二次世界大戦の退役軍人で園芸家としても知られた、レオ・シャープという男に関するもの。

当時、メキシコからデトロイトへ大量のコカインが運び込まれているという事実を知った麻薬取締局は、必死の捜査の末、たったひとりで大量のコカインを運ぶ伝説の“運び屋”の存在を掴みました。さらなる追跡捜査を重ね、その“運び屋”を追い詰めた捜査員たち。そんな彼らの前に姿を現したのは、何と、しわくちゃの老人! 2011年に逮捕されたとき、レオ・シャープは87歳。逮捕歴もない、どこにでもいるごく普通の老人でした。

イーストウッドは、この記事の映画化権を獲得。『グラン・トリノ』でも組んだニック・シェンクが脚本化し、麻薬捜査をめぐるサスペンスフルかつ極上のドラマを完成させました。


クリント・イーストウッド演じるアール・ストーンの本職は、園芸家。デイリリーという高級ユリの生産者として仕事に打ち込み、その道では知らない人はいない存在だった。しかしその一方で、家庭をないがしろにし、娘の結婚式にも出席せず、妻と娘をいつも悲しませていた。

それから数十年後、時代の変化に伴い、順調だった仕事も売り上げがダウン。自宅も農園も差し押さえられ、90歳になろうというのに金もなく、孤独な日々を送っているアールは、ある日、メキシコ系の男から「車の運転をすれば金になる」という“仕事”の話を持ちかけられる。その“仕事”とは、メキシコの麻薬組織による麻薬ドラッグの運び屋だった…。


頑固でマイペースなお爺ちゃんの、ハラハラドキドキ、気ままなロードムービー。そこにはクリント・イーストウッドから現代を生きる私たちへのメッセージが随所に散りばめられています。家族の大切さ、そして愛する人と過ごす時間の愛おしさ。

「人生を楽しめ。俺みたいに」。生きて行くうえで大切なものは何か…。改めて考えさせられる映画です。


運び屋
2019年3月8日(金)から全国ロードショー
監督・出演:クリント・イーストウッド
脚本:ニック・シェンク
出演:ブラッドリー・クーパー、ローレンス・フィッシュバーン、マイケル・ペーニャ、ダイアン・ウィ?スト、アンディ・ガルシア、アリソン・イーストウッド、タイッサ・ファーミガ ほか
??2018 VILLAGE ROADSHOW FILMS (BVI) LIMITED, WARNER BROS. ENTERTAINMENT INC. AND RATPAC-DUNE ENTERTAINMENT LLC
公式サイト http://wwws.warnerbros.co.jp/hakobiyamovie/


八雲ふみね
映画コメンテーター・DJ・エッセイストとして、TV・ラジオ・雑誌など各種メディアで活躍中。
機転の利いた分かりやすいトークで、アーティスト、俳優、タレントまでジャンルを問わず相手の魅力を最大限に引き出す話術が好評で、絶大な信頼を得ている。
初日舞台挨拶・完成披露試写会・来日プレミア・トークショーなどの映画関連イベントの他にも、企業系イベントにて司会を務めることも多数。
トークと執筆の両方をこなせる映画コメンテーター・パーソナリティ。
八雲ふみね 公式サイト http://yakumox.com

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